狙撃手(そげきしゅ)または、狙撃兵(そげきへい)とは、長距離にわたって離れた位置から目標に気づかれることなく銃で狙撃することに専門化された要員(歩兵)、及び、その兵科である。英語からスナイパー (Sniper) とも呼ばれる。日本語では、選抜射手を狙撃手と呼ぶこともある。
目次
1 語源
2 概説
2.1 軍隊に於ける狙撃手(狙撃兵)
2.1.1 狙撃師団
2.2 警察に於ける狙撃手
2.3 犯罪・テロとしての狙撃
3 日本に於ける狙撃手
4 実行や解決に狙撃が用いられた事件
5 著名な狙撃兵
6 狙撃手をテーマにした作品
7 関連項目
//
英語で「狙撃」を意味するスナイピング(sniping)は、タシギ猟が語源と言われている。タシギ(チドリ目シギ科、学名:Gallinago gallinago、英:snipe)は、人などが近づくとその場にじっと身を伏せ、さらに近づくとジグザグに飛翔して逃げる習性があり、仕留めることが大変難しいとされる。そこから、この鳥を上手く仕留められるほど優れたハンターのことをスナイパーと呼ぶようになったとされる。
軍隊や警察による狙撃は、原則として専門の訓練を受けた狙撃手によって行われる。狙撃が行われる状況は様々だが、共通していることは適切な位置まで移動して待ち伏せを行い、相手に悟られずに狙いをつけ、少数の弾丸で目標の敵や犯罪者を確実に殺害あるいは無力化することにある。
狙撃手を狙撃に専念させる為に、周囲の状況把握や命令伝達、場合によっては接近する敵の排除などを受け持つ観測手(スポッター)とペアを組んで活動する。この観測手は狙撃手としての技術を持つ人員が担当する。これにより意思疎通がスムーズにでき、互いに役割を交代する事で負担を分散できるようになる。 変則的な例として、狙撃手に汎用機関銃手と小銃射手を加えた三人チームで行動していたセルビア紛争の事例がある。これを目撃した傭兵の高部正樹は、注意力の維持や負担の軽減のみならず、装弾数や連射力に乏しい狙撃銃の火力を補い、広範囲に対処できる極めて有効な戦術だったと述べている。
狙撃銃は軍用あるいは民生用ライフル銃の量産品から精度の良い個体を選び出し、スコープ照準器などの追加装備を施した物が使用されていたが、近年では当初から狙撃専用に開発された製品も存在する。精度の問題から、従来は一発必中を求めてボルトアクション方式ライフルが主に用いられたが、近年では、ミュンヘンオリンピック事件の影響などで、射撃精度を犠牲にしても、第二弾を素早く発射出来るセミオートマチック方式ライフルの製品も増えている。戦間期から第二次世界大戦にかけては自動小銃を狙撃に用いる構想も一部の国では存在した。継続的に至近弾を送ることによる制圧効果を期待してのものだったが、戦後一般の小銃手にも広く自動火器が配備されたことで廃れた。
主として軍事行動での狙撃手は必然的に身を隠すことになり、高度なカモフラージュの技術を求められる。例えば、目立ちにくい色の服や迷彩服を着用し、その上からさらにギリースーツと呼ばれる植物を模した覆いを被ったり、植物を身に巻くなどの工夫がある。これは、敵に何処からともなく撃たれるという精神的な効果も狙った処置である。警察組織における狙撃手は、このような装備品によるカモフラージュは行わない場合が多い。
軍事行動での狙撃手は、移動の痕跡が少なく敵に発見されにくいことから、斥候(偵察兵)としての任務を兼ねる場合がある。このため軍隊の狙撃手には、敵情を正確に判断、把握する能力や記憶力なども要求され、目標排除のために必要であれば航空支援、火砲による支援砲火の要請、巡航ミサイルなどの精密誘導兵器の標定、誘導なども任務に含められることがある。ベトナム戦争時、アメリカ軍の狙撃兵カルロス・ハスコックが敵司令官を追って長時間匍匐で移動し、発見されることなく暗殺に成功したが、この際、ハスコックは糞尿を全てズボンの中に垂れ流しにしていた。生物として回避できない排泄であっても、痕跡を抹消することを優先したこの行為は、狙撃手がいかに忍耐強いかを示す事例として引用される。
軍事行動の場合は二通りの狙撃がある。一つは代替の困難な高級将校や通信兵、衛生兵を狙って指揮系統や部隊運用能力を麻痺させる物である。これを避ける為、兵士と将校が同じスタイルの軍服を着用するようになり、将校に対する敬礼が省略されて、階級の上下を問わず先に敬礼された方が答礼を返す方式となった。また所持品や装備の面でも、双眼鏡や拳銃、地図など、一目で将校と分かる特徴を出さない様に工夫されるようになったが、第二次世界大戦期の日本軍将校は戦場で軍刀を所持していたなど、日本やドイツはこの対策に遅れていた。ベトナム戦争以降のアメリカ軍では、階級章に高級将校と兵士の違いを目立たせない工夫が図られるようになった。もう一つは、将校だけでなく一般の兵士も関係なく狙うもので、これは指揮系統を混乱させるだけでなく、無差別に目標を選ぶことで「次は自分が撃たれる」という恐怖を抱かせ、兵士個人や部隊単位での行動を抑制する目的で行われる。こうした狙撃は、たった一組の狙撃兵によって敵部隊を一つ足止めするといった大きな効果をあらわすことがある。このような狙撃の場合、負傷者を出して手当てに人手を割かせるため、あえて急所を狙わないといった、長期的な影響を狙った選択が行われる事がある。
このような狙撃を受けた場合、狙撃手はカモフラージュによって位置を隠蔽しているため、大まかな位置を割り出した後は火砲や迫撃砲による砲撃か、航空隊による空爆を用いて、目標一帯を面制圧するような大規模な手段しか対処法が無く、市街地など砲爆撃が行い難い場所に於いては、多数の兵士を投入して数で押し切るしかないと言われている。