渓流(けいりゅう)とは、河川の上流域の流れの速い部分のことを指す。
目次
1 概説
2 範囲
3 特徴
4 地形的な立場
5 生物から見た場合
5.1 渓流環境の特徴
5.2 水中の生物
5.3 渓流における種分化
5.4 渓流群集
5.5 渓流周囲の生物
6 利用と文化的側面
7 参考文献
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一般的には河川は下流に行くほど水量が増え、流れは穏やかになる傾向がある。逆に上流に行くにつれて水量は少なくなるが、傾斜は急になって流れが速くなる。水面は上流へ行くほど波立ち、しぶきが上がるようになる。底質は下流では泥で、中流では砂利だが、上流では大きな砂利や岩となっていることが多い。このような上流域の河川のことを渓流と呼んでいる。渓谷や峡谷という語もあるが、これらはどちらかと言えば川そのものより流れを挟んだ斜面の地形に対して与えられる名である。しかし、渓谷や峡谷になっている場所は、山間部であり奥まったところなので、その部分の流れが渓流であることはありがちなことではある。
ただし、渓流という語は地学的な用語とは言い難い面があり、むしろ生物あるいは環境という視点からの言葉である傾向が強い。また、視点によって見方が大きく変わる場所でもある。純粋に地形を考える立場からは、崩れやすい危険な場所であり、土砂崩れや土石流などに警戒を要する地形である。生物学の立場からは最も清冽な水域であり、多くの生物のすみかである。釣り人から見れば、渓流釣りの場である。
なお、言葉としては沢が渓流を意味する場合もある。
範囲瀞川平(兵庫県香美町)の湧水「千年水」を集めて流れる小川
河川の始まりは、岩や斜面から染み出す湧水から始まる。これは次第に幅を広げながら斜面を下り、やがてはっきりとした水の流れる地形を作り出す。そして谷底を流れ下り、細い支流が融合しながら水量を増す。より流れ下れば河川による堆積物も蓄積して流れはゆるやかになる。この、ゆるやかになるまでをおおよそ渓流と考えてよいだろうが、はっきりとした区別はない。
一般には上流域で傾斜が強ければ水による浸食作用が強いので、両岸は深く削られ、V字谷のような地形となりやすい。このような地形を峡谷と言う。岩質が崩壊しやすい場合には、両岸が切り立ったものになりやすく、これを渓谷と言う。このような場所の川は渓流であることが多いが、谷の規模が大きい場合には中流的な河川となる場合もある。
底質は特に流れの速いところでは岩、あるいは大きな岩石からなり、やや流れのゆるいところでは粗い砂利などからなる。よどみでは細かい砂となっている場所もある。特に急な場所では凹凸のある岩の上を水が流れ下る状態で、所々は滝となる。
もう少しゆるやかなところでは、瀬と淵が区別できる。瀬とは流れの早いところで、浅くて水面は波打っている。淵とは流れの遅いところで、深くなっていて、水面は穏やかになっている。川では瀬と淵が交互に出現し、往々にして蛇行の曲がり角に淵がある。
さらにゆるやかになると、瀬と淵の区別は次第にあいまいになり、瀬においても水面が泡立つことはなくなる。その辺りになれば、次第に中流域に入る。
地形的な立場
地形の面からのみ見た場合、渓流というのは崩れやすい急傾斜からなる河川の部分である。流れが速いだけに浸食作用が強く、常に周囲の地盤を崩しながら成長するものと見なされる。谷底には周囲の斜面から崩壊によって落下した岩や砂利が流下する。渓流が平野部に流れ出す際には、こうした生産土砂が出口で堆積し扇状地を形成する。
大雨が降った場合、これが一気に流れ下って土石流となる可能性がある。特に土石流の危険が懸念される谷は土石流危険渓流と呼ばれる。それを予防するため、砂防ダムが作られる。
このような視点から見た場合、勾配の急な渓流は生物にとって極めて厳しい環境である。渓床の構成物質は絶えず更新を繰り返すため安定しないことが多く、降水の加減によって流れる水量の増減の差が大きいため、生息する生物種は少ないとする(日本陸水学会,2006)。
しかしながら、生物の世界の視点から見ると、かなり異なった見方となる。確かに、気候的な条件等で植生が発達しない場所ではその通りであろう。あるいは特に崩壊しやすい岩質の場では植生が発達できず、そういった地となる例もある。
しかし、日本の大部分の地域のように、森林限界以下で温暖で雨量のある地域においては、本来的には山は森林に覆われる。その場合、植物の表面層や苔、森林土壌 などの発達によって降水は一気に谷へ下る事なく保持され、少しづつ供給されるため、谷の水はある程度の量で存続し続ける。また、周囲の斜面からの土や岩も、植物の根によって確保され、みだりに落ちてくるものではない。したがって、上記に述べたような危険は大きく減少するし、生物の生活しづらくなる条件は存在しない。
ただし、大面積にわたる皆伐などの森林伐採を行い、森林土壌が流出する場合はこの限りではない。
森林が成立している場合、むしろ、渓流は生物が豊富な場所と考えられる。水生生物の生活の場として見た場合、渓流は以下のような特徴がある。
流速が速い。停滞した水域はごく狭い。
酸素溶存量が高い。
水温は低くて安定している。
沈殿有機物が少なく、底質は岩がちである。
光の入射量が少ない。
水質は貧栄養で清冽である。
流速が速いことから、遊泳性の動物にとっては、強い遊泳力をもつことを必要とする。さもなければ、岩の表面に張り付くかその下に潜り込む必要がある。酸素溶存量が多いのは、急流で水面が撹拌されるので、大気よりの酸素の供給が大きいためである。水温が低いことは一般的には生物の活動には不適であるが、冬季の水温低下はむしろ少なく、その点では有利である。