根拠に基づいた医療
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根拠に基づいた医療(こんきょにもとづいたいりょう、EBM:evidence-based medicine)とは、「良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学知見を用いる」("conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence") 医療のあり方をさす。エビデンス(臨床結果)に基づく医療とも呼ぶ。

治療効果・副作用・予後の臨床結果に基づき医療を行うというもので、医学誌の過去の臨床結果などを広く検索し、時には新たに臨床研究を行うことにより、なるべく客観的な疫学的観察や統計学による治療結果の比較に根拠を求めながら、患者とともに方針を決めることを心がける。日本においては学術的な特徴が顕著はドイツ流の医学を改め英米系の臨床重視の医術に医療を移行するという運動でもある。学術的医学とも捉えかねられない「科学に基づいた医学」とは逆に生理学的裏付けはともかく臨床結果における裏付けを根拠にする医術というニュアンスがある。これは生理的成因の裏付けが特に乏しい精神医療では特に重要な観点である。
目次

1 背景

2 基礎概念

2.1 成果

2.2 勧告の強さの分類 / エビデンスレベルの分類


3 手法

3.1 Step 1 目の前の患者についての問題の定式化

3.2 Step 2 定式化した問題を解決する情報の検索

3.3 Step 3 検索して得られた情報の批判的吟味

3.4 Step 4 批判的吟味した情報の患者への適用

3.5 Step 5 上記1?4のstepの評価


4 EBMにまつわる誤解

5 臨床研究

5.1 観察研究

5.2 介入研究

5.3 二次研究

5.4 その他の研究


6 展望

7 関連項目

8 参考文献

9 外部リンク

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背景

根拠に基づいた医療の発祥の地のアメリカでは勤務医の臨床結果(治療結果や珍しい症状のケーススタディなど)が論文として医学誌に発表され業績として評価される制度が整っているため膨大な数の医療データが医療現場から生産・蓄積され治療現場に活用されている。このため治療法が日進月歩で進化するため医者は常に自らの専門の分野の最新の情報を関連の医学誌を購読することでで熟知していなければならない。またこれを怠って最新の治療を行わず患者の容態が満足な結果に終わらなかった場合は患者から訴訟で賠償を請求されるというだけでなく、このよな医学誌を参照とすることで適切な治療が行われてか裁判で客観的に判断されるという側面を持つ。また特定の数値基準に満たない外科医、誤診の多い内科医などは病院が訴えられる原因になるので重要な業務からは外される。また重度の糖尿病の患者の場合に黒人の方が白人よりも足を切断する治療が適用される確率が高いとの調査結果が出たため政治問題になるなど根拠に基づいた医療の影響は多岐にわたる。

これを最も端的にあらわすのが2004年より、ハーバード大学教授の Donald Berwick が病院での死亡率を減らすことを励行する「10万を救うキャンペーン」(100000 lives campaign)である。Donald Berwick教授のチームはこれまでの最新の医療情報に基づいて明らかに改善が可能な六分野(救急隊,予後の医療情報のアップデート、病院内での感染症、手術室での感染,人工呼吸器の使用による肺炎、臨床結果に基づく心筋梗塞の治療)を特定し、それぞれの分野で改善案を掲示。国内の主要病院機構の参加を呼びかけた。これには臨床結果に基づく最新・最善の医療法の選択だけでなく患者のカルテのIT化による統一、病院での薬剤師の役割の拡大による処方ミスの軽減など日本の工場や作業現場でつかわれるTQCを医療現場に適応するようなものであった。これには医療現場での治療法の実績だけでなく医療過失の内容までもが臨床結果として明確・適切に第三者の組織に報告される制度の存在が前提であることは言うまでもない。結果としてアメリカの3000以上の病院がこのキャンペーンに参加した結果、18ヶ月で統計上の推定で12万人以上の死亡者の軽減が認められた。[1]


基礎概念

人体の生理反応や治療の効果・副作用には再現性は不十分であり、同じ治療でも患者によって結果は異なる。しかしすべての医療行為は目の前の患者にとって最良の結果をもたらすために医学的判断に基づいて選択されなければならない。最良の治療法を選ぶ方法論として従来は生理学的原則・知識が重視され、不足の部分を医療者の経験や権威者の推奨が補ってきた。

生理学的判断の例:「心筋梗塞後に薬で不整脈を減らすことができれば、不整脈による死亡を減らすことができるはずだ」
権威の例:「この治療法は当大学で100例以上の良好な成績を収めており、関連病院にも勧めている」
個人的経験の例:「私の経験では、ホルモン補充療法はどうやら心疾患を減らすようだ。同僚もそう言っている」
根拠に基づいた医療: 「医学誌の救急医療ジャーナルの2005年9月刊行の論文によれば心筋梗塞後の治療法Aの250件と治療法Bの50件の比較調査では治療法Bの方が不整脈による死亡は8%ほど低いと言う結果であった。ただし同雑誌2008年の4月の論文における追跡調査では50歳以上の患者の場合は逆に治療法Aの方が2%ほど死亡率は低いとの結果である。この患者は高齢であるので生存率の観点からは治療法Aが最適な選択である。ただし治療法Aはホルモン補充療法でありこれには他の副作用が報告されている。よって治療法AとBの生存率およびもろもろの副作用の可能性を患者に掲示したのち最終的に治療法を選択するのは患者である。」(患者に選択権を与えるのはインフォームド・コンセントに基づく医療で根拠に基づいた医療とは直接の関係はない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Smilegreen