この項目は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
故意(こい)とは、一般的にはある行為が意図的なものであることを指す。
刑法においては、「罪を犯す意思」(刑法38条1項)をいう。その具体的意味や体系的位置づけについては争いがある。民法や保険法においても用いられるが、民法上は結果の発生を認識しながらそれを容認して行為するという心理状態などと言われるが、その意義を論じる意味はないとされる。保険法においては、未必の故意を含むかどうかについて争いがある。
目次
1 刑法における故意
1.1 構成要件的故意
1.2 責任故意
1.3 故意と違法性の意識
1.4 期待可能性
1.5 事実的故意
1.6 意思説と表象説
1.7 「未必の故意」と「認識ある過失」
2 民法における故意
3 関連項目
//
日本の刑法
刑事法
刑法
刑法学 ? 犯罪 ? 刑罰
罪刑法定主義
犯罪論
構成要件 ? 実行行為 ? 不作為犯
間接正犯 ? 未遂 ? 既遂 ? 中止犯
不能犯 ? 相当因果関係
違法性 ? 違法性阻却事由
正当行為 ? 正当防衛 ? 緊急避難
責任 ? 責任主義
責任能力 ? 心神喪失 ? 心神耗弱
故意 ? 故意犯 ? 錯誤
過失 ? 過失犯
期待可能性
誤想防衛 ? 過剰防衛
共犯 ? 正犯 ? 共同正犯
共謀共同正犯 ? 教唆犯 ? 幇助犯
罪数
観念的競合 ? 牽連犯 ? 併合罪
刑罰論
死刑 ? 懲役 ? 禁錮
罰金 ? 拘留 ? 科料 ? 没収
法定刑 ? 処断刑 ? 宣告刑
自首 ? 酌量減軽 ? 執行猶予
刑事訴訟法 ? 刑事政策
刑法における故意の意義については、認識的要素以外に意思的要素を含むかどうかについて、意思説と表象説の対立があり、さらに折衷的な動機説も唱えられている。通説とされるのは、認識・予見(両者をあわせて「表象」ともいう。以下、単に「認識」という。)に加えて少なくとも消極的認容という意思的要素を要求する認容説であり、下級審裁判例でもしばしば認容説が採られている。 また、認識的要素についても、どの範囲を事実を認識することを要するかについては争いがある。日本の判例・通説によれば、構成要件該当事実の認識及び違法性阻却事由該当事実の不認識」を要するものと解されているが、この中でも細かい対立がある。
行為者の認識と、現実に存在し発生したところとの間に、不一致が生じている場合は錯誤とされ、錯誤論が議論される。
通説では、構成要件要素である構成要件的故意と、非構成要件要素で責任要素である責任故意に分けて議論される。
構成要件的故意とは、客観的構成要件該当事実に対する認識を前提とするものであり、主観的構成要件要素である。
規範的構成要件要素について、どの程度の認識が要求されるかについては、争いがある。構成要件該当事実についての意味の認識(素人領域において反対動機の形成が可能な程度の事実認識)があることを要し、かつそれで足りる、とする説が有力である。
通説によれば、責任故意は、構成要件的故意に以外の故意の要素である。違法性に関する事実の認識(違法性阻却事由の不認識)があることを要するが、違法性の意識又はその可能性が故意の要素かについては争いがある。
違法性に関する事実の表象が責任故意の要件であることは、判例・通説である。
したがって、例えば恋人同士である甲男と乙女が暗がりで抱き合っていたとき、通りがかった丙が、甲男を痴漢(強制わいせつ罪)と誤解して甲男を突き飛ばして怪我をさせた場合(誤想防衛)、傷害罪について急迫不正の侵害はないから正当防衛は成立しないが、違法性に関する事実の表象が欠け、責任故意は成立しない。
ただし、丙にかかる誤解について注意義務違反があるといえるときは、責任過失が成立し、過失致傷罪となる(傷害罪の構成要件的故意は過失致傷罪の構成要件的過失を含むないし両立するなどと説明されることがある。