拡散(かくさん、英語:diffusion)とは、粒子、熱、運動量などが自発的に散らばり広がる物理現象である。この現象は着色した水を無色の水に滴下したとき、煙が空気中に広がるときなど、日常よくみられる。これらは、化学反応や外力ではなく、流体の乱雑な運動の結果として起るものである。
細胞生物学では、特定の物質が選択的に細胞膜を透過する現象(促進拡散)をも含む。
目次
1 理論的背景
2 いろいろな拡散
2.1 生物学における拡散
2.1.1 促進拡散
2.1.2 呼吸器での拡散
2.2 物質の拡散
2.3 原子の拡散
2.4 ブラウン運動
2.5 電子の拡散
2.6 運動量の拡散
2.7 浸透
2.8 光子の拡散
2.9 逆拡散
2.10 熱伝導(Heat Conduction)
2.11 強制拡散
3 関連項目
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拡散は輸送現象の一種であり、拡散方程式で表現される。たとえば巨視的な分子の拡散はフィックの法則(第1法則)に、また巨視的な熱エネルギー(Heat)の拡散はフーリエの熱伝導の法則に従う。電場中での電子の拡散は基本的にはオームの法則に従う。いずれの場合も流束密度(それぞれ分子、エネルギー、電子の流れ)は、勾配(濃度勾配、温度勾配、電位勾配(電場))に、物理的性質を示す係数(拡散係数、熱伝導率、導電率)をかけた値に等しい。
以上は平衡状態の場合であるが、一般的な過渡的状態にあてはまる拡散方程式は時間に依存する。
いずれの場合にも、勾配があるときにのみ明らかな拡散が見られる。たとえば熱拡散では、温度が一定のときには熱は1方向とその逆方向に同じ速度で移動するから、全体としては変化は見られない。
細胞膜を通しての拡散は単純拡散と促進拡散に分けられる。単純拡散は特異的なチャンネルタンパク質を必要としない一般的な拡散である。一般に単純拡散において、膜の脂質部分を拡散する速度は、極性分子よりも非極性分子の方が高い。
促進拡散は、特定の物質が、それに特異的なチャンネルタンパク質を通して濃度の高い方から低い方へ移動する現象である。極性分子やイオンの拡散は主として促進拡散によって行われる。単純拡散と促進拡散を合わせて受動輸送と呼ぶ。それに対して、濃度勾配に逆行して移動する現象(エネルギーの供給を要する)を能動輸送という。
イオンの拡散は濃度勾配と膜電位に(あるいは電気化学ポテンシャル勾配に)依存する。イオンの正味の流束はイオンチャネルが開閉することで変化する。
動物の肺では肺胞において気体の単純拡散が起こる。肺胞膜の両側での分圧差により、酸素は内側の血液中に拡散し、二酸化炭素は外側に拡散することによってガス交換が行われる。
物質の拡散とは、各分子(または原子)の熱運動に基づく物質の運動であり、固体、液体、気体、また超臨界流体中でも起きる。以下のような例がある:
ヘリウムを詰めた風船は数日置くとわずかにしぼむ。これはヘリウム原子が風船の壁を通して拡散するからである。
スパゲッティをゆでると水分子が内部へ拡散し、スパゲッティは膨張し柔らかくなる。
におい物質は気体として拡散し部屋に充満する。
水中に入れた砂糖はかき混ぜなくてもゆっくり溶解し砂糖の分子が拡散して水全体に広がる。
これは、固体中の原子が熱によってランダムに跳躍し、結果として正味の原子の移動が起きる過程である。たとえば風船の中のヘリウム原子は風船の壁を通して拡散し逃げることが可能であり、そして風船は少しずつしぼむ。他の空気中の分子(たとえば酸素、窒素)は移動度がもっと低いので、風船壁を通しての拡散速度は低い。風船内にはヘリウムが詰められ、外気にはヘリウムはわずかしかないので、壁には濃度勾配ができている。移動速度は拡散係数と濃度勾配に支配される。カーケンドール効果も参照。
ブラウン運動は不連続的な粒子が液体中で拡散するときに起きる。熱エネルギーによるものであるから、運動が観測できる()ためには、対象粒子の質量は非常に小さいものでなければならない。運動の方向はランダムで常に変化している。ブラウン運動は原理的には気体中でも起きるが、気体中の微粒子の運動はふつう拡散のほか乱流に支配されているため観測しにくい。