弾劾(だんがい)とは、法令により特別に身分を保障された公務員に職務違反や非行があった場合に、議会その他の国民代表機関の訴追を受けて、他の国家機関が審議して当該公務員を罷免または処罰する手続きである。
訴追の議決のみで罷免が可能となるする制度もあるが、弾劾制度を採用する多くの国では議会による訴追を契機として、罷免の理由となる義務違反や非行が認められるかの審査をする裁判手続き(弾劾裁判)が開始され、罷免の裁判によって公務員はその職を失う。
司法権を行う裁判官や行政権を行う大統領などの一定の職にある公務員の地位を保障しつつも、国民代表たる議会により他の二権を統制することを目的とする、民主主義的制度である。罷免につき弾劾の制度が設けられている公務員は、弾劾以外に職を失う事由がないか、それがきわめて制限されているのが通常である。
目次
1 日本の弾劾制度
1.1 裁判官弾劾裁判
1.2 人事官弾劾裁判
2 各国の弾劾制度
2.1 イギリス
2.2 アメリカ合衆国
2.3 韓国
3 脚注
4 外部リンク
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日本の弾劾制度は以下の2種類があり、いずれも弾劾裁判の形式を採っている。
日本国憲法第64条に基づき裁判官弾劾法に定める弾劾裁判 - 裁判官に対して裁判官弾劾裁判所が行う。
国家公務員法第9条に定める弾劾裁判 - 人事院を構成する人事官に対して最高裁判所が行う。
詳細は裁判官弾劾裁判所を参照
裁判官に対する弾劾裁判は、20名の国会議員(衆議院・参議院の各院から10名ずつ)が委員となって構成する裁判官訴追委員会の訴追を受けて、14名の国会議員(衆参各院から7名ずつ)が裁判員となって構成する裁判官弾劾裁判所が行う。
裁判官訴追委員会、裁判官弾劾裁判所とも、国会議員によって構成され、国会に属する国家機関であるが、いずれの機関も、国会および衆参両院から独立して職務を行うとされている。
詳細は人事官を参照
人事官に対する弾劾裁判は、国会の訴追を受けて、最高裁判所が行う。裁判の手続きは、国家公務員法9条の定めにより、最高裁判所の人事官弾劾裁判手続規則( ⇒[1])に従ってなされる。
人事官に弾劾裁判制度が設けられたのは、人事官3人をもって構成される人事院が、国家公務員の労働基本権を制限する代償的措置として設けられ、公務員の人事行政を公正に行うため、内閣の所轄の下にありながらも(国家公務員法第3条第1項)、これに対して強固な自律性を認められている点に由来している。人事院の特色から、人事官は、職務遂行に高度の公正さが要求され、高度の身分保障が必要とされることから、その罷免は内閣とは別の機関である国会および裁判所による弾劾手続きを採ることとされた。
弾劾裁判は、14世紀のイギリスに起源があるとされる。国王の下で、立法・行政・司法の権限を有していた「王会」が、国王の任命した高官の非行を弾劾し、刑罰を科したり罷免をしたりしたのである。やがて、王会から分かれて、両院制の議会が誕生し、下院が訴追し、上院が裁判を行うようになる。しかし、議院内閣制が成立すると、下院が不信任決議による大臣の罷免が可能となったため、弾劾裁判の存在意義はなくなった。現在も法制度としては存在するが、1806年に海軍大臣だったメルビル卿 (Lord Melville) を罷免して以来、行われていない。
また、裁判官に対する弾劾裁判は、1701年の王位継承法、1875年と1925年の最高法院法で制度が定められたが、実例はない。
アメリカ合衆国の弾劾裁判制度は、イギリスの制度を継承している。憲法第2条第4節によると、
大統領、副大統領及び合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪又はその他の重罪及び軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合は、その職を免ぜられる。
ここでいう「合衆国のすべての文官」には連邦裁判官も含まれると解釈されており、現在までに弾劾が成立したケースは全て裁判官に対するものである[1]。
下院が単純過半数の賛成に基づいて訴追し[2]、上院が裁判し、上院出席議員の2/3多数の賛成で弾劾を決定する[3]。しかしイギリスとは異なり、刑罰を科すことはなく、罷免するのみである[4]。また弾劾裁判の対象に、国家元首である大統領も含まれている点に特徴がある。
弾劾裁判の審理は、通常は上院議長を兼ねる副大統領または上院仮議長が弾劾裁判長としてこれを司るが、大統領が弾劾の対象となっている場合に限っては連邦最高裁長官が弾劾裁判長としてこれを司る[3]。