専業非常勤講師(せんぎょうひじょうきんこうし)とは、大学の非常勤講師のみで生計を立てている人物のことである。
目次
1 解説
2 背景
3 問題点
4 議論
5 関連項目
6 外部リンク
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大学の教員には、正規かつ継続して大学に雇用されている専任教員の他に、一定の期間を定めて雇用される任期制教員(助手や研究員が多い)や特任教授、客員教授など、多様な雇用形態が存在している。そのうち、正規に大学に雇用されずに授業を担当し、また客員教授などとも呼称されない教員を「非常勤講師」と呼ぶ。「非常勤講師」の中には、他大学を本務校とする者、官公庁や民間企業の職員など別のどこかで正規雇用されている者や、それ以外の職業に就いている人物なども多い。しかし、中には「非常勤講師」の収入だけで生計を立てている人物も存在する。これが「専業非常勤講師」である。
本来、非常勤講師とは大学外の人材の講義を実現する為のある種の非常手段と位置づけられており、「非常勤講師」のみで生計を立てるという事態は想定されていない制度であった。非常勤講師が想定するのは、大学院在籍者や大学院終了直後の若い研究者に教育経験を積ませるとか、研究者ではない人物の経験談を「講義」として学生に聞かせる、あるいは他大学の優秀な研究者の講義を自校の学生にも経験させるなどの状況である。従来の日本では若い研究者の側にも、非常勤講師を数コマ経験すればどこかの正規雇用ポストが回ってくるという期待があった。
また、大学の側も以前は、大学院、特に博士課程がさほど多く設置されず、設置されていても学生に博士号を授与せず、単位取得退学もしくは満期退学する慣行があった。そのため、優秀な研究者の中には博士課程を経ず、古くは学部卒で助手に採用されたり、その後も修士号さえ取得すれば「博士号取得と同等の業績」を認められる時期が続いてきた。ただし、かつては一部の大学や専門分野において教員不足などの理由により、大した業績が無くとも専任教員となれた時期もあったため、研究業績の点で若い専業非常勤講師に見劣りする専任教員が存在することもある。
一方で、大学にとっては学部の規模拡大に伴い、教養科目、特に外国語科目を非常勤講師に依存するという状況も存在している。専門科目やその入門に位置づけられる教養科目では、純粋な講義が主であるため、大教室において専任教員や他大学の教員が担当することで対応することができた。しかし、外国語科目や一部の実習では少人数が理想とされ、また学生に第二外国語の習得を義務付ける大学が多かった。こうした背景から、ほとんどの大学では小規模な外国語科目の授業を多数開講するために、相当数の非常勤講師を必要としたのである。これが「専業非常勤講師」が発生した需要サイドの原因である。なお、大学教員には資格がないため、外国文学や外国語を専攻しない者でも外国語科目を担当することは可能である。
従来から、分野を問わず、大学専任教員の採用は多いわけではなかった。また研究者は特定の専門分野を持ち、採用サイドも研究分野を特定して募集している。これらの理由から、他の職業と比べて労働市場における需給のミスマッチが発生しやすい状況が存在していた。それでも若い研究者の一部は、研究職や大学教員として雇用される可能性に拘り続け、非常勤講師をいくつも掛け持ちしてそれだけで生計を立てようと試みた。こうして出現したのが「専業非常勤講師」である。特に近年は文部科学省の方針により大学院教育の拡充が行われ、それに伴い博士課程においても無軌道な大学院生の激増が発生した。しかし、研究者の進路は従来同様、研究職以外の雇用機会が稀であり、当局としても博士課程出身者を吸収する制度を十分には設けてこなかった。その結果、いつまで経っても正規雇用ポストにありつけない研究者は、以前にも増して多くなったのである。
問題は、現在の状況ではどんな優秀な研究者であっても、余程のコネか強運が無い限り、大学院を修了して即専任ポストに就くことは困難であるという点である。正規雇用されるまでの間、若い研究者が収入を得るには、主に出身大学で助手や任期制研究員として採用されたり、学術振興会や(理系を中心に)科学技術振興機構に研究計画を採択されてその特別研究員となることや、政府機関の臨時職(在外公館の専門調査員など)に就くなどの方法がある。さらに高校や中学の教員免許を予め取得し、その臨時教員や非常勤講師になる者もいる。しかし、大学における助手ポストを含め、任期制であることが多く、安定した環境で若手研究者が研究に専念できる場は近年狭くなっている。これらの機会すら限られたものであり、殆どの研究者は非常勤講師を含むアルバイトで数年間を過ごすことになる。
大学経営も人件費が格段に安い非常勤講師の存在を前提にして成り立っている側面がある。一部の大学は、人件費のさらなる削減や学生負担の軽減といった目的で、第二外国語を必修から外す動きもある。しかし、現状では単に非常勤講師の削減という結果につながってしまう。このように「専業非常勤講師」を取り巻く状況は、ますまず厳しくなっている。
専業非常勤講師の中には労働組合を結成し、専任講師に準じた待遇を要求する動きもある。しかしその一方で、非常勤講師収入のみに頼ろうとするような生き方そのものが不適切なのではないかという指摘もあり、論争は続いている。また、優秀な研究者が巡り合わせによって40歳を過ぎてもまだ専業非常勤講師であり続けるような事態に対し、「博士号まで取った人材がその能力と知識・経験を生かせないでいるのは社会にとって非常な損失であるので、積極的に彼らを登用できる社会基盤あるいは制度を作ることが、文化および科学・技術の発展育成に欠かせない」という意見も見られる。しかし、感情的な責任論の議論とともに平行線を辿りがちのようである。
関連項目
講師 (教育) - 講師
日本学術振興会特別研究員
ポストドクター
外部リンク
⇒博士も就職が大変
⇒平成8年衆議院文教委員会
⇒平成9年衆議院文教委員会
⇒平成11年衆議院文教委員会
官報資料版記事より
⇒1998年1月28日
⇒2001年8月8日
⇒2003年9月10日
⇒2005年9月21日