同位体(どういたい、Isotope、アイソトープ)とは、同じ原子番号を持つ元素の原子において、原子核の中性子数(つまりその原子の質量数)が異なる核種の関係、あるいは核種である。
同位元素とも言う。
目次
1 概要
2 同位体比
3 同位体の製造
4 同位体標識化合物
5 利用方法
6 同位体の入手方法
7 関連項目
8 脚注
9 外部リンク
10 参考文献
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同位体には放射能を持つ放射性同位体 (Radioisotope) と持たない安定同位体 (Stable Isotope) の2種類が存在する。同位体、すなわち放射性物質、と短絡的なイメージが持たれる場合もあるが、これは誤りである。放射性同位体は時間とともに電子・陽子・中性子を放出して原子番号が変わってゆく(放射性崩壊)が、安定同位体は自然界で一定の割合をもって安定に存在している。(詳しくは放射性同位体参照)
同位体の表記は、核種の表記と同様に、元素名に続けて質量数を示すか、元素記号の左肩に質量を付記し、例えば炭素14あるいは 14C のように表す。ただし水素の同位体に限り、固有の記号で表される核種もある。重水素 (2H Deuterium) は D または d、三重水素 (3H Tritium) は Tである。例として重水の化学式は D2O と表す。
ある元素の同位体(例えば、12Cと13C)の電子状態はほぼ同じであり、化学的性質は似ている。質量数の違いは、結合、あるいは解離反応の速度の違いにあらわれる(詳しくは速度論的同位体効果を参照)。特に、軽水素と重水素、そして三重水素では、質量が2倍差、3倍差となるために、軽水と重水のような顕著な物性差として現れることもある。
化学的性質がほとんど同じである同位体であっても、原子核の性質は異なる。例えば、原子核の核スピンの値や、中性子吸収断面積は同位体により大きく異なる。
安定同位体種が最も多い元素はスズで、10種類ある。最重安定同位体は鉛208である。21世紀初頭まではビスマス209が最重安定同位体と考えられていた。ビスマスを参照してください。
同位体の存在比を同位体比という。(質量比では無い。)
この同位体比は、放射性物質の影響および同位体効果を除くと、太陽系内の安定同位体の存在比(同位体比)は極めて一様である。これは太陽系誕生時に、物質が高温で熱せられ拡散したことにより、それ以前に各物質が保有していた固有の同位体比が平均化されたためと考えられている。
しかし、太陽系内の天然物であってもパーミルのオーダー(0.1%=1‰)では同位体比は異なる。その同位体比の差異には、その試料の起源や、同位体効果による変遷が反映されている。
そのため、精密な同位体比の測定は、その試料の起源、変遷を探る上で重要な役割を果たし、地球惑星科学などで広く活用されている。
また、単に天然物を測定するだけでなく、人工的に同位体比に大きな差異を持たせた水などの化合物を、生体や環境、あるいは工学部材に指標として投入し、同位体比の経時変化等を測定することにより、物質の動態を調べる研究に応用されている。
同位体比の測定は質量分析法で行われることが主である。他にはNMRや赤外分光法で測定されることもある。星雲などの宇宙空間の物質の同位体比を測定には、電波観測や赤外線観測が利用される。
同位体の製造は、核合成により直接合成する方法と、同位体を天然中の物質から分離する方法(同位体分離)で行われる。特にkg単位以上で同位体を製造する場合は、同位体分離で行われる事がほとんどである。
同位体分離は、同位体の蒸気圧などの微小な物性差や質量差を利用して行われる。同位体分離には、蒸留分離、拡散分離、遠心分離、レーザー分離といった方法がある。水素は最も大きく速度論的同位体効果が現れる為に重水素を濃縮する場合は、水の電気分解の速度差が利用されている。
日本国内ではホウ素10、ホウ素11、炭素13、窒素15、酸素18が民間企業(東京ガス、大陽日酸など)において製造されている。
炭素13の製造
日本国内では東京ガスが製造している。原料はLNGであり、最終製品は13Cメタンである。
酸素18の製造
日本国内では大陽日酸が酸素18を製造している。酸素の主要同位体核種は16Oであるが、深冷での蒸留技術を応用することにより、同位体同士の微小な蒸気圧差を利用し、工業用酸素ガスから18Oを分離している。そこで分離された18O2ガスを水素ガスと反応させることにより、水-18Oを最終製品として製造している。その水-18Oは下記のPET診断用として主に利用されている。[1]
製造された各同位体は、用途に合わせて目的化合物に取り入れて利用する。このことを、同位体標識といい、同位体標識された化合物を同位体標識化合物(正式には同位元素標識化合物)という。一般的には、単に「マークする」とか、化合物を称してマーカーと呼ぶことも多い。
同位体標識化合物の名称は、化学名の後に、標識部位、標識核種名が続く。例えば、化学式13CH3COOHの酢酸は酢酸-2-13Cとなり、化学式CH13COOHの酢酸は酢酸-1-13Cと、化学式13CH313COOHで部位の特定が必要ない場合は、酢酸-13C2と表される。また、同位体標識化合物ごとのCAS登録番号も存在する。
同位体標識化合物の合成は、特にその分子の一部分の原子だけを標識する場合、その化学合成による標識は非常に困難である。
利用方法
ポジトロン断層法(PET診断)
ガン診断に用いられるポジトロン断層法の試薬には、放射性同位体フッ素18(半減期約108分)で標識した18F-FDGが用いられている。