大気循環(たいきじゅんかん)とは、地球の大気の大規模な循環のことである。太陽から地球への熱の供給が原因となって発生する現象。大気大循環、大気の大循環とも呼ばれる。
大気循環は、海洋における風成循環および熱塩循環と並ぶ、地球上の大循環の1つである。
一見、大気の流れは絶えず移り変わっているように見えるが、非常に大きな規模(地球規模)で見ると大気の流れは基本的には一貫しており、大規模な循環の構造を成している。しかし、大量の熱(太陽エネルギー)を受けるために熱帯における循環は不安定であり、十数日単位で流れが変化し、その予測が難しい。熱帯低気圧の発生の予測が難しいのもこのためである。
目次
1 異なる緯度間の循環
1.1 ハドレー循環
1.2 フェレル循環
1.3 極循環
2 異なる経度間の循環
2.1 ウォーカー循環
2.1.1 南方振動(ENSO)
3 出典
4 関連項目
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異なる緯度間の循環異なる緯度間での大気循環より立体的な図(大西洋におけるモデル例)
緯度によって太陽からの熱エネルギーの供給量が異なるため、赤道(0°)付近、中緯度(30°)付近、高緯度(60°)、極(90°)の4つの緯度付近には、それぞれ気圧の異なる地域ができる。この気圧差によって、高圧帯から低圧帯に向かう風の流れが作られる。この循環には、ハドレー循環、フェレル循環、極循環の3つがある。
地球の自転と地軸(赤道傾斜角)の傾きのために、その循環は複雑な構造を成している。
ハドレー循環詳細はハドレー循環を参照。
18世紀にイギリスの気象学者ジョージ・ハドレーがその理論を提唱したことからこの名が付いた。赤道付近には地球上で最も多くの太陽熱が供給されるため、暖められた空気が上昇して境界圏まで達し低緯度地域の上空へ流れ込んだところで冷やされて下降し、高気圧(亜熱帯高圧帯または低緯度高圧帯)となる。その高圧帯から赤道付近へは貿易風が吹き込む。地球の自転の影響によって、貿易風は北半球では北東貿易風、南半球では南東貿易風となる。ただし、季節によって太陽が天頂へ来る地域は変わるため、正しくは「赤道」ではなく「熱赤道」となることに注意しなければならない。ハドレー循環は、他の循環に比べて成因が簡単であり、説明も容易だとされる。
ハドレー循環によって、熱赤道周辺では大気が上昇して年間を通して気圧が下がる。この地域を熱帯収束帯または赤道低圧帯と呼ぶ。
フェレル循環詳細はフェレル循環を参照。
19世紀にアメリカの気象学者ウィリアム・フェレルによって理論付けられたため、この名が付いた。フェレル循環は、熱力学的に見るとハドレー循環と極循環の2つの大循環によって引き起こされる2次的な循環だといえる。低緯度側ではハドレー循環によって大気が下降する一方、高緯度側では極循環によって大気が上昇している。この流れに合わせる形で、大気が渦を巻き循環していると考えられている。
フェレル循環によって、極東風や貿易風とは正反対の向きに風が発生する。これは偏西風と呼ばれ、フェレル循環と極循環の境界付近で最も強くなり、強い西風(ジェット気流)となる。ジェット気流は、亜熱帯高圧帯と極高圧帯の境界となっている。
フェレル循環は、亜熱帯高圧帯をつくる熱帯性気団と極高圧帯をつくる寒帯性気団の動きに左右される。2つの気団の境目は気圧が低く温度差も大きいため、常に低気圧(温帯低気圧)が発生しては消滅することを繰り返している。この繰り返しによってこの付近は年間を通して気圧が低い地域となり、高緯度低圧帯ができる。
ハドレー循環や極循環が1つの閉じられた大気の渦であるのに対して、フェレル循環は閉じておらず不完全で、地上付近ではその影響が顕著に現れる。大気の高層で風が西寄りのときにも、地上付近ではそれに関わらずさまざまな向きに風が吹くことが多い。寒冷前線の通過時には、風向が急変することもあるほか、低気圧が北にあるときは何日も東風が吹き続けることが多い。
極循環詳細は極循環を参照。
赤道付近に比べて温度は低いものの、60°付近の大気は極地域に比べて暖かく湿潤である。このため、この付近で温められた空気が上昇する。するとこの付近の大気の下層部は気圧が下がり、高緯度低圧帯が発生する。極地域からはこの高緯度低圧帯に向かって大気が流れ込むが、コリオリの力を受めるため東寄りの極東風となる。極東風の風向は、北半球では北東、南半球では南東となる。
ロスビー波のため、極東風は大気に倍音の波を発生させる。この倍音は、極循環とフェレル循環によって大気が上昇する地域を流れるジェット気流の流路に影響を与えている(偏西風の蛇行)。
極循環は、低緯度地域から運ばれた熱を解消するヒートシンクの役割を果たし、地球上のエネルギー収支のバランスをとっている。
極循環によって寒気と暖気が衝突し、カナダやヨーロッパなど高緯度地域では発達した低気圧による激しい嵐に見舞われることがある。しかし、極地域では大気が下降して高気圧(極高圧帯)となり大気は安定している。そのかわり、気温は非常に低い。
ハドレー循環、フェレル循環、極循環の3つの循環は、熱赤道と極の気温差(緯度の違い)から生じる現象で、これと同じように気温差を生じさせるものはほかにもいくつかあり、そのうち大規模なものは帯状風や帯状反循環などと呼ばれており、3つの大循環を覆すほどのものである。