変態(へんたい、metamorphosis)とは、動物の正常な生育過程において、ごく短い期間に著しく形態を変えることを表す。特に、栄養の摂取に特化し、生き残りと成長に最適化された幼生と、次世代を生み出すための生殖機能を備えた成体の間で、形態が大きく変わることが多い。それに伴い、生活様式や場所が変化する場合もある。海産無脊椎動物ではよくあるが、成体が底性生活で、幼生がプランクトンの生活をするものは、全て変態を行なう。
なお、哺乳類や鳥類、爬虫類のように、基本的な体の構成は変わらず、各部分の発達によってその比が変化する程度で、連続的に形態が変化して成体になる場合には変態とは呼ばない。また、「卵から生まれる」場合には、見かけ上の形態の変化は大きいが、その個体の形は、卵の中であらかじめ形成されており、変態には当たらない。つまり、変態とは、動物が孵化して幼生の形になった後の変化のみに対して用いる言葉である。
エルンスト・ヘッケルは生物の発生は進化の経路を辿るとする反復説をとなえた。この説は、現在では多くの問題を指摘されているものの、基本的にはある程度の範囲で認められている。その意味では、動物が発生の過程で姿を変えるのは当然とも言える。その観点に立てば、変態とは、それが成長の過程に見られる現象という見方もあり得る。つまり、変態をしない動物は、多くの変化を孵化以前に卵の中で行なったものということになる。そこで、変態をしない動物の成長のことを直接発生という場合がある。
目次
1 昆虫の変態
1.1 完全変態
1.2 不完全変態
1.3 過変態
1.4 無変態
2 昆虫以外の節足動物の変態
3 棘皮動物の変態
4 尾索動物の変態
5 魚類の変態
6 両生類の変態
7 物理学
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昆虫では、卵から孵化すると、幼虫と呼ばれる形態となる。幼虫が、生殖能力を有する成虫になる過程で変態を行う。
幼虫が成虫になる際、いったん運動能力を著しく欠いた蛹(さなぎ)と呼ばれる形態をとり、蛹から成虫が現れる種類が多い。卵→(孵化)→幼虫→(蛹化)→蛹→(羽化)→成虫
と変態していくことを完全変態という。チョウ、ハチ、ハエ、カブトムシなどが該当する。なお、完全変態をする昆虫の中でシリアゲムシが現生では最も古い群と考えられている。
完全変態を行う種の幼虫は、成体と全く異なった形態をとる場合が多い。いわゆるイモムシ型やジムシ型などの幼虫である。蛹の中では、幼虫の体を構成していた諸器官は一旦分解され、成虫の体を形作る部位「成虫原基」を中心に新しく形態形成が行われる。
完全変態:アゲハの場合
羽化した成虫
一方、蛹を経ず、幼虫が直接成虫に変態することを不完全変態という。セミ、カマキリ、トンボ、バッタ、ゴキブリなどが代表的な例となる。
不完全変態をする種では、幼虫と成虫の形態が良く似ており、幼虫時代に数回の脱皮を繰り返して成虫に変態することが多い。バッタ、ゴキブリでは、幼虫と成虫の外見上の違いは、体の大きさ以外では、翅(羽)が生えているかどうか程度である。中には、トンボのように形態変化が比較的大きなグループもある。トンボの幼虫「ヤゴ」は、水中でエラ呼吸をし、発達した伸縮自在の大顎で捕食生活をするが、成虫は特徴的な腹部を持ち、その姿は大変に異なるが、大型の複眼を有する頭部の形など、基本的な構造は共通している。
不完全変態:セミの場合(蛹にならない)
羽化直後(成虫)
また、幼虫期に生活様式にあわせて形状が著しく変態することを過変態 (Hypermetaboly, hypermetamorphosis) という。ツチハンミョウやネジレバネなどの一部の昆虫が行なう。過変態の昆虫は寄生虫であることが多く、幼虫が宿主へ移動するための形態と寄生するための形態に幼虫期で変態する。
なお、多変態 (polymetaboly) という語もある。両者を同一の意味に用いる場合もあるが、厳密には、前者は例えば足のある幼虫から無肢型に変わるというように、体制に変化がある場合を、後者は幼虫の基本体制そのものは変わらないものに対して用いる。このような区分では前者の例はいずれも多変態である。
成長過程で形態が殆ど変化せず、脱皮によって大きさだけが変化することを無変態という。シミ等に良く見られる。
多くの節足動物では、成長の過程で体節や付属肢が増加する。
多足類では体節と付属肢が増加する以外に大きな変化はない。
クモ綱ではダニ類が3対から4対へと付属肢を増加させるが、大部分のものは変態しない。
甲殻類では、分類群によって様々であるが、基本的にははじめにノープリウス幼生を生じる。