堆肥(たいひ)とは、有機物を微生物によって完全に分解した肥料のこと。有機資材(有機肥料)と同義で用いられる場合もあるが、有機資材が易分解性有機が未分解の有機物残渣も含むのに対し、堆肥は易分解性有機物を完全に分解したものを指す。コンポスト (compost) とも呼ばれる。一方、昔ながらの植物系残渣を自然に堆積発酵させたものが堆肥であり、強制的に急速に発酵させたものがコンポストであるとする意見もある。本項は堆肥、コンポストを同義として扱う。
また、一部では生ごみ堆肥化容器の生成物である堆肥(コンポスト)が転じて、生ごみ堆肥化容器をコンポストと呼ぶ。
堆肥が出来る過程は堆肥化を参照
目次
1 各国のコンポストの定義
2 堆肥の効果
3 堆肥化
4 堆肥の品質基準
5 様々な堆肥
5.1 家畜ふんの堆肥
5.2 生ゴミの堆肥
5.3 Humanure
5.4 下肥
5.5 厩肥
6 堆肥の課題
7 堆肥の生態系
8 関連事項
9 関連リンク
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欧米と日本の各国または民間の団体の堆肥(コンポスト)の定義を挙げる。
EU - コンポストとは制御された好気的条件で自己発生熱で生分解された産物で、害虫を誘引せず、不快臭を持たず、病原菌の再増殖をもたらさない有機物である。
米国 - コンポストとは制御された方法で生物的に有機物を分解した後に得られる生成物であり、分解の過程で発生する熱によって衛生的にし、かつ作物の生育にとって有益なレベルまで熟成・安定化したものである。コンポストの物理的性質はその原材料が持っていた物理的性質とは異なる。コンポストはそれを施用することにより土壌の化学的、物理的、生物的性質を改善するという特有の能力を持つ有機物資源である。コンポストは植物の生育にとって必要な養分を含有するが、肥料とはみなされない。
カナダ - 不均一な性質を持つ固形の有機物原料を熱の発生を伴う生物的酸化過程でコンポスト化することによって得られる固体状熟成生成物。
日本 - わら、もみがら、樹皮、動物の排泄物その他の動植物質の有機質物(汚泥および魚介類の臓器を除く)を堆積または攪拌し、腐熟させたものをいう。
堆肥を施肥することによって、土壌に様々な効果が現れる。以下にその効果をまとめる。
腐植質の供給と土壌状態の改善 - 作物の生育に適した土壌は、水もちが良く水はけが良いという一見矛盾した機能が求められる。水もちが良すぎると水が通気性を阻害してしまうため、土壌が酸素欠乏状態に陥ってしまう。反対に、水はけが良すぎると作物に水が供給されず枯れてしまう。この二つを満たす土壌構造が団粒構造である。団粒構造は、堆肥中に含まれる腐植質が土壌粒子を接着して作られる。また、腐植質は肥料もちも良い。アンモニア、カルシウム、カリウムなどの陽イオンを保持する力(陽イオン交換容量)が高まる。これらは化学肥料にはない機能である。
微生物の供給による病害虫の抑制 - 堆肥を施肥することによって、堆肥化微生物やミミズなどが増える。これによって、病害虫菌の発生を抑制することができる。
緩衝能の増大 - 堆肥中には多種多様な物質があるため、化学的変化に対しての緩衝能を持つ。そのため、安定した土壌を作ることが出来る。
堆肥化とは堆肥を作ることであり、その定義は「生物系廃棄物をあるコントロールされた条件下で、取り扱い易く、貯蔵性良くそして環境に害を及ぼすことなく安全に土壌還元可能な状態まで微生物分解すること」である (Goluke, 1977) 。あるコントロールされた条件下とは、堆肥化を行う微生物にとって有意な環境を人為的に作ることを意味している。また、有機物分解が不完全な状態では肥料として様々な問題を持つ。これらの問題が起こらなくなるまで人為的に分解を進めることが堆肥化である。
堆肥化微生物の活動を活発にするためには、次の条件を整えることが必要となる。炭素と 窒素のバランス(C/N比)、含水率、pH、温度及び酸素である。上記の条件が最適ではなかった場合、分解速度が落ちたり、製品の品質低下につながる。
詳しくは堆肥化のページを参照。
水分 - 水分量は取扱に直結する。含水率60%w.b.以上であると、仮比重が大きく、付着性も大きくなるため、袋詰や輸送が困難になる。逆に、含水率が30%w.b.以下になると粉塵が発生するようになる。また、堆肥化が完全でないものを乾燥させると分解が停止して未熟なコンポストができてしまう。乾燥を行うのは堆肥が完全に出来上がってからが良い。各国の基準値は25-55%w.b.である。
pH - 全国農業協同組合連合会の推奨基準値はpH5.5-8.5。基本的にpH8.5以上になることはほとんどないが、pH5.5以下になることはままある。酸性の堆肥はミネラルの過剰害やリン酸の固定、吸収障害などが起こる。
EC - 堆肥に含まれるイオンの量。堆肥は低い方が良く、全国農業協同組合連合会の推奨基準値はバーク堆肥に対して3.0dS/m以下、家畜糞尿に対して5.0dS/m以下。堆肥中の主なイオンは、カリウム、ナトリウム、塩素、硝酸などである。
C/N比 - 堆肥中の炭素と窒素の割合を示したものであり、値が高いと窒素量が少ない。全国農業協同組合連合会の推奨基準値は10-40である。値が大きすぎると土壌が窒素飢餓を起こす恐れがある。しかし、これは絶対的な指標ではない。なぜなら、C/N比は易分解性有機物と難分解性有機物の炭素と窒素を同時に測定するからだ。例えば、おが粉のC/N比は340-1250と非常に高く、おが粉を副資材として混合した堆肥のC/N比も大きくなる。だが、おが粉は難分解性有機物のため、おが粉に含まれる炭素分を易分解性有機物の炭素と同様に考えることにあまり意味はない。他の指標と総合的に評価することが必要。