司法(しほう)とは、具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用のこと。立法・行政と並ぶ国家作用の一つ。司法の作用を行う国家の権能を司法権といい、立法権・行政権と対比される。
目次
1 概説
1.1 定義の相対性
2 日本の司法
2.1 大日本帝国憲法における司法
2.2 日本国憲法における司法
2.2.1 具体的な争訟
2.2.2 客観訴訟
2.2.3 司法権の限界
2.3 立法と司法の関係
2.4 行政と司法の関係
2.5 準司法的手続
3 関連項目
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司法とは、「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用」と定義される。これは、近代以降の各国・各時代に通じる司法と司法権の共通項を示したものと言える。
司法と司法権は、近代の権力分立制とともに生成してきた。そして、権力分立制の形態と内容が各国・各時代において異なるように、司法と司法権の形態と内容も各国・各時代において異なる。そのため、司法には「定義の相対性」がつきまとう。
国家作用が立法・行政・司法に分離独立するに至った歴史的経緯が各国により異なることもあり、司法という言葉で呼ばれる国家作用の内容は、各国・時代により当然異なる。特に行政と司法との理論的な区別の可能性については疑義も出されており、権限が与えられている官署の区別に対応しているに過ぎない(裁判所の職務が司法)との指摘もされている。
この点が典型的に現れるのは、行政事件の裁判に関する扱いである。
フランスやドイツなど、大陸法系の国々では、司法とは「民事事件・刑事事件の裁判作用」を指し、行政事件の裁判を含まない。この意味での司法権は、法治主義や権力分立制の確立により、行政権から切り離され、独立した裁判所の権能とされるようになった。行政事件については、通常の裁判所とは別に行政裁判所が設けられ、そこで審理・裁判された。この行政裁判所は、行政権の一部を担うとされる。現在でも、フランスでは、国務院( ⇒Conseil d'?tat、コンセイユ・デタ)と呼ばれる機関が最上級審の行政裁判所としての権能を有しており、国務院は行政機関とされる。また、大日本帝国憲法における体制も、行政事件の管轄は行政裁判所にあるとされた。
他方、英米法系の国々では、行政事件の裁判も司法に含まれると解され、行政事件の裁判作用は通常の裁判所の権能に属する。日本国憲法における「司法」「司法権」は、英米法系の制度に倣い、行政事件も通常の裁判所が裁判する(日本国憲法第76条1項、2項)。
極論すれば、各国で司法又はそれと同視し得る言葉により把握される国家作用について最大公約数的な定義をするとなると、「いわゆる裁判所と呼ばれる機関が有している国家作用の中核部分」というあまり意味のない定義で満足せざるを得ない。そこで、多少の齟齬を取り捨てて、より内容のある定義として示されるのが頭書の「司法とは、具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用」という一文である。なお、ドイツにおいては、ドイツ連邦共和国基本法(ドイツの憲法典、通称「ボン基本法」)が連邦憲法裁判所の制度を設け、それには具体的な権利関係の紛争を前提とせずに憲法判断をする権限が与えられている。この憲法裁判所が有する国家作用は、立法・行政と並ぶ裁判 (Rechtsprechung) の一部とされており、伝統的な司法 (Justiz) の枠を超えた概念である。もっとも、Rechtsprechung に「司法」という訳語をあてる例もある。
大日本帝国憲法において、司法権とは、民事事件・刑事事件の裁判作用を行う権能を指した。行政事件は、通常の裁判所とは別系統の行政裁判所の所管であった。このほか、軍人・軍属などの刑事事件を裁判する軍法会議や、皇族の民事事件を裁判する皇室裁判所などの特別裁判所も設置された。
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