匿名(とくめい)とは、何らかの行動をとった人物が誰であるのかが分からない状態を指す。自分の実名・正体を明かさない事を目的とする。
各人の匿名性を保証することにより、各人のプライバシーが保護できるという利点がある一方で、匿名であるのをよい事に悪事を行われかねないという欠点がある。
各人のプライバシーが保護されるという匿名性の利点を最大限に生かせる行為として告発がある。 匿名性が保証された方法で権力者や企業の不正を暴露することで、不当な弾圧や差別を受ける事無く不正を公にすることができる。
また寄付を初めとした社会的善行も匿名で行われることがある。
自分が誰であるのかを隠して寄付を行う事で、売名のために寄付したのでは無い事を示す事ができ、しかも周囲から余計な詮索を受けずに寄付を行う事ができる。
一方で匿名性は悪事を助長しかねない一面がある。自分が誰であるのかを特定されなければ、後で自分の言動に対する責任を追及される危険が無いので、匿名であるのをよい事に、他人を誹謗中傷するといった悪事を行う者が現れかねない。
目次
1 匿名性のレベル
1.1 Unlinkability
1.2 Undeniability
1.3 Escrow Agent
2 暗号理論と匿名性
2.1 電子投票方式
2.2 電子入札方式
2.3 暗号
2.4 グループ署名方式
3 報道における匿名
4 民主主義の基礎としての匿名
5 ネットワークにおける匿名
6 関連項目
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一口に「匿名」といっても、強い匿名性から弱い匿名性まで様々なレベルがある。
次の性質をUnlinkabilityという:任意のA,Bに対し、Aを行った人物とBを行った人物が同一人物であるかどうかを判定する事はできない。
各人にPseudonym(偽名、例えばペンネームやハンドルネーム)を割り振れば一応の匿名性を確保できるが、この場合にはUnlinkabilityは満たされない。Aを行った人物のPseudonymとBを行った人物のPseudonymが同じかどうかを調べる事でAを行った人物とBを行った人物が同一人物であるか判定できるからである。
強い匿名性が要求される場合は、Unlinkableである事が望ましい。
「匿名」という言葉には細かく言えば2つの意味があり、Unlinkablityを満たさないと「匿名」と言わない場合と、Unlinkablityを満たさなくても「匿名」と言う場合がある。
Unlinkablityを満たす場合の「匿名性」と区別するため、Unlinkablityを満たさない場合の「匿名性」をPseudonymityという事がある。
Aを行ったのが自分でないという事を第三者に証明できるとき、deniableであるといい、そうでないときundeniableであるという。
今Aを行った可能性がある人物が100人いるとする。このうち99人が自分はAを行っていない事を証明したならば、最後の一人がAを行ったのだと結論づける事ができてしまう。
強い匿名性が要求される場合にはundeniableである事が望ましい。
完全に匿名性を保証してしまうと、匿名性を悪用する者が現れかねない。そこで一部の権限者(Escrow Agentと呼ばれる)にのみ、誰が誰であるのかを特定する権限を与える場合がある。Escrow Agentは追跡者、開示者などとも呼ばれる。
匿名性を保証し、しかも同時に匿名性を悪用されない方法を見付ける事は、暗号研究における大きなテーマの一つである。
匿名性に関わる代表的な暗号プロトコルとして以下のものがある。
電子投票方式では投票者のプライバシーを保証する為、匿名性が要求される。
次の2つの要件が数学的に保証されるとき、電子投票方式は、安全であるという。
どの投票者が誰に投票したのかは誰にも分からない。
投票結果は正しく集計される。
電子入札方式においても、入札者のプライバシーを保証する為、匿名性が要求される。
次の2つの要件が数学的に保証されるとき、電子入札方式は、安全であるという。
落札者と入札者の入札金額だけが公知となる。その他の入札者がどの金額で入札したのかは誰にも分からない。
入札結果を偽ることはできない。
普通の公開鍵暗号の場合、送信者の匿名性は保証されるが受信者の匿名性は保証されない。
しかし受信者の匿名性に考慮した暗号方式の研究もなされている。
各ユーザは、発行者という権限者と通信する事でグループに加わる事ができる。 グループのメンバーは、署名文を作成できる。 この署名文は署名者がグループに属する事を保証するが、 しかし署名文から署名者がどのメンバーであるのかを特定する事はできない。 ただし追跡者という権限者のみは例外的に署名者を特定する権限が与えられている。
グループ署名方式では、UnlinkabilityとUndeniabilityが保証されている。
グループ署名方式では、追跡者に署名者を特定できる権限を与える事で、 グループメンバーが匿名性を悪用する事を抑止できている、という利点がある。 しかし、グループ署名方式では追跡者に対しては一切の匿名性が保てないので、 追跡者は信頼できる人物でなければならない。 しかし、グループ署名方式には追跡者に対しては一切の匿名性が保てないという欠点が ある。より匿名性を高めるために、署名者が指定回数以上 の署名を行った場合にのみ、追跡者が署名者を特定できるグループ署名方式も存在する
報道においては、たとえば、「情報発信源を明確に明らかにしない(オフレコ)」という約束で記者が実力者・役職者から談話をもらうことがある。そのような場合、「政府筋によれば」(以下同じ)「×国筋」「現地の信頼すべき消息筋」というように「筋」「首脳」「高官」などの接尾語を用いて発言者を隠蔽することが多い。事実上発言者を特定できる言い換えもあるが(たとえば「政府首脳」は日本の場合、内閣官房長官を指すことが多く、内閣総理大臣自身を指すこともある)、事情を知らなければ特定できないので、不特定多数の読者にわかりにくくする効果はある。ちなみに、福田康夫は内閣官房長官時代、「政府首脳」のものとして報じられた発言が、自分のものであることを認めたことがある(福田康夫#安全保障)。で指す対象の実例を挙げる。
政府首脳 内閣官房長官、内閣総理大臣(ほとんどは前者のみ)
政府筋 内閣官房副長官、内閣総理大臣秘書官