動物実験(どうぶつじっけん)とは、広くは動物を使う実験一般をさすが、普通はヒトに対して危険が生じる可能性のある化学物質や機器を、ヒトに適用する前に先ず動物に対してこれを用いて試すことである。医療技術、薬品、化粧品や食品添加物の他に、あらゆる物質の安全性や有効性、操作の危険性を研究するために行う。止むを得ず人体実験(臨床試験)を実施せざるを得ない場合に、その実験を科学的かつ倫理的に適正に実施するための科学的知見を収集するために、先立って行われるのが動物実験であり、この文脈では前臨床試験や非臨床試験とも呼ばれる。
目次
1 必要性
2 動物種
3 問題視される理由
4 実験動物
5 3R
6 規制
7 動物実験の方向
8 アニマルフリー
9 日本の動物実験の現状
10 外部リンク
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動物実験は、主に医学の発展のために、一部は公衆衛生に資するために、必要なものとして止むを得ず実施するものである。その必要性はヒトを対象とする医学研究の倫理的原則、すなわちヘルシンキ宣言に明確に示されている。すなわち、
医学の進歩は、最終的にはヒトを対象とする試験に一部依存せざるをえない研究に基づく
のであるが、
ヒトを対象とする医学研究は、一般的に受け入れられた科学的原則に従い、科学的文献の十分な知識、他の関連した情報源および十分な実験ならびに適切な場合には動物実験に基づかなければならない。
かつて、非倫理的な人体実験が行われた時代を反省して、人体実験をする以前には十分な科学的知見を得ておかなければならないことを、この宣言はここで謳っているのである。
実験動物はその動物種としてヒトに近い方が良質なデータを得られる可能性が高いと考えられ、主にほ乳類が用いられる。大型動物としてサル、イヌ、ミニブタなどが、小型動物としてラットやマウス、モルモット、ウサギなどが用いられる。 但し、生物学的に(進化論的に)サルの方がラットよりヒトに近いということをもって、サルのほうがラットよりも良質なデータが得られるとは、一概には言い切れない。目的に応じた適切な動物種を用いることが重要である。
動物実験に反対する立場がある理由は、まずそれが動物の幸せのために企画されたものではないことである。もちろん実験対象とされる動物が不幸になることが多いのは当たり前であるから、それに対して動物虐待であるとする論はある。また、大抵の動物実験は人間の代理物として動物を扱っており、人間だけの利益を求めるものである。 また、動物と人間の間には厳然とした種差が存在し、動物は人間の完全な代替物とはなりえないがために、動物実験は人間の健康について誤った結論を導き出すという科学的な側面からの批判も存在する。
過去にイヌ・ネコに関しては、保健所へ持ち込まれたペットのイヌ・ネコや捕獲(駆除)されたイヌの一部が全国の自治体で動物実験用に払い下げられていた。しかし、東京都を皮切りに払い下げ廃止を決定する自治体が続き、平成18年度をもって、全国的にそのような制度は終結している。現在は、実験結果の信頼性や再現性、安定した個体数確保を目的として最初から実験用として繁殖させた動物(実験動物)を用いることが常識となっている。
このうち、マウス及びラットといったげっ歯類に関しては実験用途としてのビジネス化がひときわ進んでおり、微生物学的なコントロールにより清浄度を高めたSPF動物や、特定の疾病を発症する疾患モデル動物や無毛(ヌードマウスなど)のもの、さらには特定の遺伝子を組み換えたり(トランスジェニック動物)、欠損(ノックアウト動物)させたりした遺伝子改変動物が生産されている。
3Rは動物実験の基準についての理念。 Replacement(代替)、Reduction(削減)、Refinement(改善)の3つを表し、1959年にイギリスの研究者(Russell and Burch )により提唱された。
Replacement(代替):意識・感覚のない低位の動物種、in vitro(試験管内実験)への代替、重複実験の排除
Reduction(削減):使用動物数の削減、科学的に必要な最少の動物数使用
Refinement(改善):苦痛軽減、安楽死措置、飼育環境改善など
※3RにResponsibility(責任)、Review(審査)などを加えた4Rという概念を提唱する者もあるが一般的ではない。
動物実験に関する規制については、法律上の規制を主としたイギリス、フランス型と研究者の自主規制を主としたアメリカ、カナダ型に二分される。
イギリスでは実験者、実験計画、実験施設の3つについて法律上の許認可を必要としている。
アメリカでは動物実験に関する直接の法規制は存在しないが、倫理委員会の設置を義務付けている。
日本はアメリカ型の規制を採用しており、環境省の指針に従い各研究機関が独自の基準を設けている。
近年、世界各国で動物福祉や倫理上の問題から、動物実験に反対する団体の行動が活発化している。これらの運動に対応すべく、研究機関や製造業の業界では動物実験そのものを最小限に抑えるほか、細菌や昆虫といった他種の生物や培養細胞などに置き換える代替法を開発するなどの手法が取られつつある。こうした動きは1990年代頃から見られ、動物実験(特に、サルなどの大型動物)を多用する研究の見直し等が進んでいる。しかしながら、培養細胞を用いた系では実際の個体内における総体的な生理的・生化学的機構と大きく異なる点も多く、全ての情報を得ることは不可能である。
また動物実験自体が科学的論理性に乏しいという意見もあり、反発を招いている。
近年EU圏内では、動物実験反対運動の活性化とともに「動物実験」及び動物実験をした製品の「販売禁止」の方向に向かいつつある。
【実験禁止】2009年3月より、EU領域内での化粧品の原料における動物実験の禁止 2013年より化粧品の安全性試験における、薬物動態、生殖発生毒性、反復投与毒性の例外領域での動物実験の禁止 [要出典]