分子線エピタキシー法(ぶんしせんエピタキシーほう、 MBE; Molecular Beam Epitaxy )は現在、半導体の結晶成長に使われている手法の一つである。真空蒸着法に分類され、物理吸着を利用する。 高真空のために、原料供給機構より放たれた分子が他の気体分子にぶつかることなく直進し、ビーム状の分子線となるのが名称の由来である。
目次
1 原理と特徴
2 歴史
3 装置の構成
3.1 概要
3.2 原料供給機構
3.2.1 要件
3.2.2 形式
3.3 分子線量のモニタリング法
3.4 超高真空の維持機構
3.4.1 真空ポンプ
3.4.2 液体窒素シュラウド
3.4.3 ベーキング機構
4 参考資料
5 関連項目
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原理自体は単純で、高真空中において、原料を蒸発させるなどして基板表面に照射して堆積させ、薄膜の形で成長させる。
特長としては、
超高真空(10-8Pa(10-10Torr)程度)下で成長を行うため、MOCVD法に比べて成長速度を遅くできる。また製膜温度も低くできる場合がある
各セルのシャッターにより、成長方向、組成分布を厳密にコントロールできる
RHEEDにより、成長しながらのその場観察が行える
数A(10-1nm)オーダーの、単原子層レベルでの成長が可能であり、条件に気をつければ、1原子層ごとに異なる原子を面方位関係を保ったまま堆積させ(エピタキシャル成長)、単結晶の人工格子を作成することができる。
複数の原料を独立に制御することで、原子比のよく制御された合金膜を作成することもできる。
などが挙げられる。
また短所としては、超高真空状態の維持が難しいなどの理由で、量産向きの蒸着法ではないことが挙げられる。
MBEという名称は、1970年にベル研究所のArthurとChoがGaAsの結晶成長法として命名したのが始まりとされる。当時広く普及していたLPE(液相成長法)とは異なる特長を有する新たな結晶成長手法として発展し、超格子構造の作製や結晶の成長過程そのものの研究、ドーピングなどに応用されるようになった。製膜速度が遅いぶん量産には向かず、主に研究開発用途に用いられているが、AlGaAs系半導体レーザやHEMT素子などの量産に用いられた実例も知られている。
MBE装置は下記のような要素から構成される。用途や原料によって詳細は異なる。
原料供給機構
製膜用真空チャンバー
試料交換用チャンバー
超高真空排気機構(真空ポンプ類および残留ガス吸着機構(液体窒素シュラウドなど))
真空計
分子線量のモニタリング機構
試料のモニタリング機構
MBE法が他の真空蒸着法と異なるのは、求められる種類の分子だけを、正確に、しかも長時間(数分?数週間)に亘って安定して供給できることである。このためMBE法に於ける原料の供給機構は、下記のような要件を満たすことが求められる。
真空度を著しく損なわないこと。圧力が上がりすぎれば蒸発した分子の平均自由行程が短くなりすぎ、「分子線」ではなくなる。
結晶成長を阻害するような不純物の混入を極力抑えること。
供給する分子線を時間的・空間的に安定して制御できること。
供給機構自体が破損しにくいこと。破損すると真空を破るメンテナンスが必要になり、チャンバの清浄度がその分損なわれる。
MBE法をMBE法たらしめるのは、このような原料供給機構を備えているかどうかで決まるとも言える。
上記の要件を満たすために、様々な原料供給機構が用いられている。
抵抗加熱
最も基本的な方式である。タンタルなどの高温に耐えるヒーター線によって原料を入れたるつぼを加熱・蒸発させるものである。分子線量の調節は、るつぼの温度を制御することで行われる。るつぼは高温に耐えて原料を汚染しにくいものが選ばれ、原料や用途によって焼結窒化硼素(PBN)やアルミナ、カーボン、石英、各種金属の単体や合金、などが用いられる。
電子衝撃加熱
真空容器内での原料の加熱は、金属原料が融解するほどの高温になるため、セル自体が溶けて蒸着してしまわない様に、よく絞った電子ビームを原料表面に当て、金属原料に電流が流れるジュール熱によって加熱する。セルは容器外側から冷却されているので、これにより電子ビームの当たる位置だけが融解し、液体状態の外側は同一の物質であるため、不純物の混入を防止できる。
ガスソース
単体では固体の原料を、有機化合物の形にするなどの方法で装置外部にて気体とし、流量で制御したものを送り込む方式もある。原料によっては分子線の制御性を大きく向上させる一方、化合物にすることで不要な元素が結晶に混入する危険性もある。このような方式はMOMBE(Metal-Organic Molecular Beam Epitaxy; 有機金属分子線エピタキシー)やガスソースMBE(Gas-source Molecular-)、CBE(Chemical-)等と呼ばれるが、厳密な分類ははっきりしない(言う人によって違ったりする)。