この項目は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
入会権(いりあいけん)とは、村落共同体等(入会集団)が、一定の主として山林原野において、伐木・採草・キノコ狩りのなどの共同利用を総有的に行うことができる慣習的な物権(用益物権)である。入会権が設定された土地のことを入会地(いりあいち)という。
なお、星野英一は、断定的ではないが著作において「『共同体的規制』が存在する共同所有(または利用)関係」と概括的にとらえており、入会権の現代的意義を考察するとき重要な示唆を与えている。
注:民法について以下では、条数のみ記載する。
目次
1 沿革・意義
2 適用法規
3 内容
3.1 主体
3.2 利用形態
3.3 管理方法
3.4 入会権と採草環境権
3.5 入会権の処分
3.6 入会権と時効による消滅
4 研究領域・主な研究者
5 参考文献
6 脚注
7 関連項目
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歴史的には、明治に近代法が確立する以前から、村有地や藩有地である山林の薪炭用の間伐材や堆肥用の落葉等を村民が伐採・利用していた慣習に由来し、その利用及び管理に関する規律は各々の村落において成立していた。明治期にいたり、近代所有権概念の下、山林等の所有権が明確になる(藩有地の多くは国有地となった)一方、その上に存在していた入会の取り扱いに関し、民法上の物権「入会権」として認めた。なお、国有地における入会権について、政府は戦前より一貫してその存在を否定しているが、通説は認めるべきとしている。
戦後になって、村落共同体が崩壊し、また、間伐材等の利用がほとんどなくなったという事情から、立法時に想定していた入会は、その意義を失ったかに見えるが(「入会権の解体」)、林業や牧畜といった積極的経済活動の目的で入会地を利用するケースが見られるようになり、また、道路開発・別荘地開発等における入会権者との調整、さらには環境問題などといった山林等における新たな問題が発生するようになったため、入会権の現代的意義が見直されつつある。
なお、漁場に関する漁業権・入漁権・入浜権、水源・水路に関する水利権、泉源・引湯路に関する温泉権については、入会権と混同した主張がなされることが多い。[1] 温泉権は慣習上の物権的権利であるが、日本では物権法定主義を採用しているため、理論上は一種の債権であり、信義則の働きによって物権的な性質を示しているとされる。
適用法規
( ⇒263条)「共有の性質を有する入会権」とは、その土地(地盤)の所有権が、入会集団にある場合をいい、慣習法の他、共有に関する規定が適用される。
( ⇒294条)「共有の性質を有しない入会権」とは、その土地(地盤)の所有権が入会集団にない場合をいい、慣習法の他、地役権に関する規定が適用される。
しかし、実際は、共有及び地役権の規定が適用又は準用される局面は稀であり、地域の慣習・規律に委ねられているといえる。
入会集団は入会団体とも言い、広義の「権利能力なき社団」に含まれる。権利能力なき社団であるため、その所有物は構成員の総有となり。権利は共同で行使することとなる。 広義の「権利能力なき社団」には、「代表者の定め」の有るものと無いものがあり、団体としての法的扱いに違いが有る。民事訴訟法では、代表者の定めの有る権利能力なき社団は、訴訟の当事者となることができると規定されており、代表者の定めの有る入会団体は、訴訟の当事者となることができる。入会団体の多くは、財産処分に関する代表者が存在しないため、団体としては訴訟の当事者になることはできず、共有の規定により固有必要的共同訴訟となる。
入会団体の構成員を入会権者と言い、入会権者の収益権を入会収益権という。判例によると、入会収益権が侵害された場合、入会権者は妨害排除請求の訴えを起こすことができる。入会地の権利者は入会団体であるから、代表者の定めの無い入会団体の場合、民事訴訟法の規定を素直に解釈すれば、妨害排除請求には入会権者全員の同意が必要という結論に至る。
この問題の解決方法は2つの説がある。
一つは、民事訴訟法にある「代表者」の解釈を広げて、「訴訟物の処分に関する権限を持つ代表者」を示すと解釈する説である。各入会権者は、入会地の所有権を処分する権限は持たないが、妨害排除請求をすることに関しては、各入会権者は、入会団体から妨害排除請求をする権限を代表として与えられていると解釈するのである。
もう一つの説は、入会収益権の侵害を不法行為としての面から捉え、既に成された不法行為から生じた不法行為債権に基づく賠償請求の一環として、妨害排除請求を解釈するものである。
入会収益権は登記することができない。また、権利能力なき社団の所有地の場合と同様に、入会団体の名によって登記することもできない。しかし、薪拾いや耕作等の入会活動が行われている場合は、信義則の働きによって、登記がなくても第三者に対抗できる。第三者が登記の不備を理由に権利を主張するためには、善意無過失である必要があり、土地を実際に見れば入会権が存在する可能性が予見できる場合は、第三者の善意又は無過失を否定できるのである。(登記の欠陥の主張は、悪意者であっても理論上は認められ得るが、悪意者が登記の欠陥を主張することは、原則として信義に反すると判断されるため、信義則に照らして保護されるべき理由がない限り、悪意者は登記の欠陥を主張できる正当な権利者とは判断されない。)
入会活動を中止している場合の入会権を主張する方法としては、共有としての登記、明認方法の設置がある。共有としての登記は、入会権を直接に主張するものではないが、入会地が取引の対象となった場合に、登記簿に名前の記載があれば事実関係の調査が必要となるため、第三者の善意無過失を否定することができるのである。明認方法の設置とは、立て看板等を現地に設置することであり、これも同様に、第三者の善意無過失を否定するためのものである。
入会地の登記は、代表者の名前や各入会権者の共有名義で為されている場合が多い。 入会団体は、権利能力なき社団の一形態であるから、権利能力なき社団の場合と同様に、団体の構成員(入会権者)全員の合意があれば、構成員ではない者の名前で登記をすることもできる。 それ故、行政機関が同意すれば、行政機関の名義で入会地を登記することも理論上は可能である。現在、地方公共団体名義で登記されている入会地の多くは、過去に行政機関と入会権者が共同で設立した権利能力なき社団の所有地である場合が多く、当時の意思決定が曖昧であったために、混乱をもたらしている例が多い。
国有名義の入会地の多くは、明治の官民区分令によって国有地として登録された土地である。