光触媒(ひかりしょくばい、英: photocatalyst(触媒そのもの)、photocatalysis(触媒作用))とは、光を照射することにより触媒(化学反応を促進させるがそれ自体は変化しない)作用を示す物質の総称である。また、光触媒作用は光化学反応の一種と定義される。
通常の触媒プロセスでは困難な化学反応を常温で引き起こしたり、また化学物質の自由エネルギーを増加させる(光エネルギーを蓄える)反応を起こす場合がある。
天然の光触媒反応として光合成が挙げられるが、人工の化学物質を指すことが多い。
目次
1 酸化チタン
1.1 性質
1.1.1 機構
1.1.2 課題と展望
1.2 研究開発の経緯
1.2.1 最新の研究成果
2 関連項目
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代表的な光触媒活性物質として、酸化チタン (TiO2) が知られている。
酸化チタン光触媒が光を吸収すると大きく分けて2つの機能を発現する。
強い酸化作用この作用は他の物質にくらべて顕著であり、水を酸素と水素に分解するほどの酸化作用をもっている。このため本多・藤嶋の発見以来、酸化チタンを用いて水から水素を得ようとする工学的応用が研究されている。これは太陽の光エネルギーから、水素というクリーンエネルギー(水素は燃焼して水になるため)を生成することを意味し、夢のエネルギー循環サイクルといわれている。しかし現状では効率が低く(後述)、大規模な製品化には至っていない。また この酸化作用を利用し、有害物質の分解なども試みられている。ただし有害物質の処理に関しては、他の処理技術のほうが効率や処理できる量の面で優れている場合が多い。そのため酸化チタンには、光照射だけでよい手軽さを生かした応用が行われている。たとえば病院の手術室の壁・床を酸化チタンでコーティングしておけば、ブラックライト(紫外光ランプ)を照らすだけで殺菌処理を行うことが可能である。この応用は既に製品化されており、一部の病院で利用されている(1億人の大質問!?笑ってコラえて!によると, 研究者は、東京大学のトイレで捕獲したゴキブリを酸化チタンの溶液に入れて溶かし、有害物質や病原体の除去に使えることを確かめた)。また応用として、太陽電池も作成されている(グレッツェル電池)。これは酸化チタン多孔性膜に色素(ルテニウム錯体化合物やクマリン系色素を用いることが多い)を塗布し、それをヨウ素電解液に浸して作成する。対電極には白金を用いたものが多い。この太陽電池に光照射をすると、まず色素の電子状態が光によって励起し、つづいて色素から酸化チタンへの電子注入が起こる(色素が酸化される)。電子を失った色素は、やがて電解液から電子を奪う(色素が還元される)。ただしこの太陽電池の光エネルギー変換効率は、現在のところ最大でも10%程度であり、多結晶シリコンを用いた太陽電池よりも効率の点で劣っている。そのため、太陽電池の主流にはなっていない。
超親水作用この現象は、ガラスの防曇加工技術として既に応用されている。自動車のバックミラーや道路のミラー等を酸化チタンでコーティングしておけば、水がはねついても表面で水滴とはならず、そのまま流れ落ちる。そのため雨天時の視認性が大幅に向上する。また油性の汚れ(マジックペンなど)が全く定着せず、雨などで定期的にこのような水が流れることにより、表面が洗浄され、いわゆるセルフクリーニング作用をもつ。このセルフクリーニング作用は、既にビル外壁やテントシートおよび住宅用窓ガラスなどへ応用されている。
酸化チタンに似た電子構造(バンドギャップなど)を持つ物質が他にも数多く存在するなかで、なぜ酸化チタンに顕著な光触媒活性が見られるかは、未知の部分が多く、この解明に向けて多くの研究が行われている。特に表面活性種としてのスーパーオキシドアニオン・ヒドロキシルラジカルの関与、表面酸素欠陥の役割などが議論されている。しかし、いずれも断片的な実験事実からの推測の域を得ず、いまだに統一的なシナリオは描かれていない。超親水作用についても、酸化チタンの酸化作用によって表面に吸着した疎水性有機物が分解された影響なのか、それとも酸化チタン表面自体に何らかの化学変化が起こっているのか、研究者の見解は分かれたままである。
純粋な酸化チタンは無色透明な粉末であり、ルチル型二酸化チタンの場合吸収する光の波長のピークは380 nm以下の紫外領域にある。そのため太陽光や白熱灯・蛍光灯など通常の生活空間における光源では、そのごく一部しか光触媒反応に寄与していない。しかしこれは酸化チタンが可視光を吸収するようにすれば(可視光応答化)、飛躍的に性能向上が期待できることも意味している。可視光応答化の技法の代表的なものは、少量の不純物を加えるもので、ドープ(ドーピング)と呼ばれる。さまざまな物質がこれまでにドープされている。その中には可視光での光触媒活性を持つものも報告されている。しかし同じ物質のドーピングでも生成手法(合成手順)によって特性が大きく変化するなど、その機構は不明な点が多い。
研究開発の経緯
1972年(昭和47年)、東京大学の本多健一と藤嶋昭は、酸化チタンを用いた水の光分解に関する論文をネイチャー誌に発表した。これは、粉末状の酸化チタンを水中に入れ光(主に近紫外線)を当てると、水素と酸素に分解され、それぞれの気泡が発生するというものだった。この現象は、発見者の名前を取って「本多-藤嶋効果」と呼ばれる。
最新の研究成果
光触媒効果に用いる光の波長現在は、紫外線だけでなく、400-600nmの可視光で作用する光触媒が開発されている。可視光が使えることで、応用範囲が広がると期待できる。(参考)紫外線は波長380nm以下。可視光は波長380-780nm(紫?青色:380-490nm、緑?黄色:490-600nm、橙?赤色:600-780nm)。400-600nmは紫色?橙色の可視光に相当する。
光触媒のバインダー光触媒のバインダーとしては有機のもの以外に、無機のものも開発されており、水性のものも開発されている。