先天性(せんてんせい)とは、「生まれたときに備わっていること」「生まれつきにそうであること」という意味である。「先天的」という形容詞の形で普通使用する。人間の場合だと、生まれつき備わっている性質や形質が、先天的な性質、先天的な形質ということになる。「先天」と云う言葉は、『易経』に現れる言葉である。対語は「後天性」であり、この言葉は「生まれた後で備わったこと」の意味になる。
また哲学上の用語としては、ア・プリオリ(a priori)の訳語として使われる。ア・プリオリはラテン語で「の前に」という意味で、「先天的」の他に「先験的」という訳語がある。プラトーンのイデア説 (原像と事物)
目次
1 概説
2 生物の形質の先天性
2.1 遺伝子における決定
2.2 発生過程での決定
3 人間における先天性
3.1 身体における先天性
3.1.1 先天的疾患
3.1.2 性別の分化
3.1.3 一般的な先天的決定
3.2 精神・心における先天性
3.2.1 人間としての独自性
4 哲学における先天性
4.1 ア・プリオリとア・ポステリオリ
5 関連項目
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人間や動物などで、形質や性質が先天的というのは、個体として生まれたときにすでにその形質や性質が個体に備わっていることを意味する。遺伝子での決定に引き続き、胎児(または幼生)の段階で形質や性質が決定され、誕生した時点では、すでに性質や形質が獲得されていることを表す。
先天性に対するのは後天性で、これは、誕生の後に、成長や経験による学習を通じて、個体としてのありようや行動の様式、世界の把握や経験と知識のありようが決まって来ることを意味する。巣で卵を抱く白カナリア
人間が持っているほとんどすべての知識などは、後天的に経験などを通じて学習したものであるが、知識であって先天的なものもある。動物の場合は、経験による学習を通じなくとも、様々な実際的な知識を生まれながらに身に付けている。これらは「本能」による知識とも云えるもので、例えば鳥が営巣するとき、あるいはビーバーがダムを造るとき、巣の作り方やダムの作り方を鳥やビーバーは経験を通じて学習したのではない。彼らはそのような知識を先天的に備えていた。
先天性ということは、生物においては形質について云われることが多い。鳥類や哺乳類における雌雄、人間における男性か女性かの生物的な「性別」などは先天的に決まっている。人間を含め、多くの動物の血液型なども生まれたときに決まっており、先天的な決定である。
すべての生物は、ウィルスを例外として、二重螺旋の染色体または DNA 上にある遺伝子の配置パターンによって、生物としての基本設計が決まっている。当然のことと考えられるが、人間が二本の脚を持ち、一対の手(または腕)と直立型の体機制を持つことは遺伝子における決定である。他方、鳥類には基本的に翼があることや、魚類の四肢は手足としては発達・進化しておらず、鰭を持ち、鰓呼吸するなども遺伝子における決定である。
生物学における種の概念が、遺伝子のパターンと、それによる形質のありよう、体構造や更に生殖の可能性から決まっている。犬からヒツジの子供は産まれないし、馬や牛から人間の子供は産まれない。生物界における種の安定と多様性の秩序は先天的に決まっている。
動物の雌雄も遺伝子によって決定されるものが多い。魚類などには栄養状態や雌雄の比率などの環境条件で、雄と雌が自然的に性転換するものがいるが、哺乳類・鳥類などの雌雄は遺伝子で決定されている。