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この項目は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

不当利得(ふとうりとく)とは、契約などのような法律上の原因がないにもかかわらず、本来利益が帰属すべき者の損失と対応する形で利益を受けること(利得すること)、またはその受けた利益(利得)そのもののこと。またはそのような利益が本来は帰属すべきだった者に対して自身が得た利益(利得)を返還させる法理あるいは制度(不当利得法、不当利得制度)のこと。日本の民法においては ⇒民法703条から ⇒708条に規定されている。契約、不法行為事務管理とならぶ民法上の債権発生原因の一つである。

民法について以下では、条数のみ記載する。

目次

1 適用場面

2 一般の不当利得

3 解釈論の変遷

3.1 かつての通説

3.2 給付利得の類型

3.3 侵害利得の類型


4 要件

4.1 給付利得

4.2 侵害利得


5 効果

6 特殊の不当利得

7 転用物訴権と騙取金による弁済

7.1 転用物訴権

7.2 騙取金による弁済


8 参考文献

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適用場面

不当利得が適用される典型的な場面は、一度有効に成立した契約が無効であったり、取り消されたりして「初めからなかったもの」とされた場合である。例えば、カメラを5万円で買う契約を結び、買主は代金と引き換えに売主からカメラを受け取ったが、後になって買主が錯誤による契約の無効を主張した、とする。すると契約は「初めからなかったこと」になるので、売主は「契約」という法律上の原因なしに代金を所持していることになり、買主は支払った代金分の「損失」を被っていることになる。そこで買主は不当利得の制度に基づいて売主に対し代金の返還を請求できる。もちろん、売主の方も不当利得制度によってカメラを返還するように請求できる。これが不当利得制度の想定する典型的な場面である。


一般の不当利得

不当利得について原則的な処理方法が記述されているのは703条と ⇒704条である。そこでこれを一般不当利得と呼ぶことがある。これによれば、不当利得とは、法律上の原因なしに他人の財産又は労務により利益を受けている者(受益者という)から、これによって損失を被っている者に対して利得を返還させる制度であると規定されている。

法律上の原因がないのに利益を受けていることについて知らなかった者(善意の受益者)は利益の存する限度(現存利益)でその利得を返還しなくてはならない(不当利得に基づく返還請求は原則として全額の返還であるとする考え方からすれば、「善意者は現存利益の返還のみで足りる」と言う方が正確である)。これは、問題となっている利得が自己に帰属していると信じていた場合、その信頼を保護する必要があると考えられるためである。

一方、不当利得であると知りながら利益を得ていた者(悪意の受益者)は受けた利益に法定利息をつけて返還する必要があり、場合によっては損害賠償責任(これは不法行為に基づく損害賠償請求であるとされている)をも負うことになる。これは、悪意の受益者は当該利益を保持することができる法律上の原因が自己にないことを知っている以上、利得を返還することまでを計算に入れておくべきであるから、他人の財産を管理するのと同等の注意をもって当該利得を管理することが義務付けられることに由来する。


解釈論の変遷


かつての通説

初め、ドイツ民法学の影響を受けた日本の民法学者(我妻栄など)は、公平の理念を基礎に不当利得制度を統一的に捉えようとしてきた。つまり、不当利得とは、形式的には問題のない財産的価値(財貨)の移転が実質的観点から正当化できない場合に生じる矛盾を公平の理念に従って調整するものと考えたのである。これを公平(衡平)説という。この公平説は通説となった。

しかし、公平という概念が曖昧でありここの場面では用をなさないという批判が大きくなった。また、公平説がドイツの法制度を基礎とするからこそ意味を持つ理論であることが指摘された。すなわち、物権行為をその原因関係と切り離して考える(「物権行為の無因性」)ドイツ民法においては、物権変動(例えば、所有権の移転)の原因関係(例えば、売買契約)が取り消されても、物権変動の結果はこれとは無関係に存続し続けるために、公平の理念に基づく調整が必要とされる。しかし、物権行為の無因性を認めない日本の法制度においては、こうした調整を認める必要はない(原因関係が無効となれば、それによる物権変動も無効となる)。

以上のような批判を踏まえて、次第に不当利得が適用される場面の類型に応じてその根拠や解釈論を定めるべきとの考え(「類型論」という)が多数説(あるいは、既に通説的地位を得ているとも言われる)となった。

上記多数説では、不当利得を給付利得、侵害利得、費用利得、及び求償利得の類型に分けて考える(ただし、費用利得と求償利得をまとめて「支出利得」として整理する場合も多い)。


給付利得の類型

給付利得とは、一見有効な契約など(表見的法律関係、という)によって財貨が移転したものの、後に契約が無効とされたり、取り消されたり、または解除されたりした場合にその返還を求めるという類型である。上述したような不当利得の典型的場面がこれに当たる。

この類型においては、一度は有効なものとして扱われた契約などの法律関係に基づいて財貨が移動しており、これを不当利得によって逆行させることが行われる(お互いが、お互いから受け取ったものを返す)。そこでは元の契約の趣旨や、同時履行の抗弁権危険負担の規定が適用される。


侵害利得の類型

侵害利得とは、外形的にも有効な契約などがないのに相手の権利を侵害して利益を受けている者がいる場合にそこで得られた利益の返還を求める類型である。他人の土地に勝手に家を建てて住んでいる者に対して賃料相当額を請求するような場合がこれに当たる(いわゆる不法占拠もこれに該当する)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Smilegreen