不正軽油
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不正軽油(ふせいけいゆ)とは、日本において軽油に課せられる軽油引取税脱税を目的として、軽油に灯油重油をまぜた混和軽油や、灯油と重油をまぜて、濃硫酸苛性ソーダなどの薬品により脱色・クマリン除去処理を行って製造した燃料などをいう。
目次

1 不正軽油問題

2 不正軽油の流通

3 環境問題

4 不正軽油の種類

5 不正軽油の品質

6 不正軽油に対する刑罰

7 外部リンク

8 関連項目

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不正軽油問題

原則として、軽油引取税は軽油にのみ賦課されるものであり(例外については軽油引取税の項目を参照)、軽油と性状の類似するA重油や灯油に対しては通常賦課されていない。しかも、ディーゼルエンジンの燃料としては必ずしも軽油の性状を満たしている必要はなく、A重油や灯油等でも稼働には問題がないとされる。このため、軽油引取税の古典的な脱税手法として、軽油とA重油・灯油を混和したもの・A重油と灯油を混和したものなどを軽油代替の燃料として用いることがしばしば行われる。このような燃料を混和軽油と言い、A重油・灯油等を単体でディーゼル車に給油する場合等をも含めて不正軽油と呼ぶ。

不正軽油の検出・摘発を容易にするため、A重油や灯油には識別剤としてクマリンが添加されている。クマリンの紫外線に対する蛍光反応によりA重油・灯油の混入を判別するためである。

この検出を避けるために、クマリンを硫酸により分解した上で不正軽油を製造・密売する脱税手法が近年増加している。脱税自体が違法行為であるが、このクマリン分解時に排出される硫酸ピッチと呼ばれる廃棄物が未処理のまま密造現場付近に不法放棄されることも社会問題化している。硫酸ピッチはクマリンと反応しきれなかった硫酸を含有するため強酸性であり、また石油由来の有害成分を含む。

このことから、2004年税制改正で不正軽油に対する脱税取締体制の強化が図られる一方、廃棄物処理法の改正等により硫酸ピッチの廃棄に関する規制・罰則も強化された。

また、硫酸ピッチの問題以外にも、不正軽油を用いた場合にディーゼルエンジン内部で不完全燃焼が発生しやすくなり、排気ガスの環境負荷が大きくなること、ディーゼルエンジンの損傷を招くことも指摘される。


不正軽油の流通

こうした手段で製造された粗悪な燃料が、「軽油」と偽って市中で格安で販売されることがある。 仕入れた不正軽油を早期に売り切るために、近隣の給油所より大幅に安く販売されている例が多い。 (安価であることがただちに不正軽油であることを意味しないが、石油販売元売会社と連帯しての品質を保証する旨の表示がない場合には疑わしい。なお一般に、不正軽油の仕入れ元を販売店が明かすことはない)

これらの販売者は、運送業者等へ電話やダイレクトメールなどにより販路を開拓する。 あるいは、運送業者へ直接タンクローリーで乗り付けたり、ドラム缶に注入した不正軽油を持ち込んで売り歩く行商のごとき販売者の例もある。 これらの販売者(また燃料油の製造者)は商品の品質に責任を果たすことはなく、概していわゆる「売り逃げ」をする。したがって購入者(仕入先や消費者)が購入してしまうと、後に販売者との連絡をとることは極めて困難である。 かかる事情により一般に、故意であれ不測であれ不正軽油を購入した場合、品質如何にかかわらずその補償を求めることができない。

また消費者責任の観点から、不正軽油が原因の故障車は自動車のメーカー・ディーラーに修理を拒否される可能性も高い。


環境問題

不正軽油の流通は、その目的である軽油引取税の脱税を生じるばかりでなく、製造時の副産物として生じる硫酸ピッチ不法投棄や、その劣悪な品質から生じる不完全燃焼による大気汚染など環境面での悪影響をも生じる。不正軽油(特に重油を混ぜたもの)は、ディーゼル車の排気ガス中の有害物質を増加させ、環境や人体を損なうとされている。


不正軽油の種類
混和軽油
軽油と重油・灯油を不正に混和したもの灯油と重油を不正に混和したもの
密造軽油
重油や灯油から酸・アルカリを用いてクマリン(重油や灯油に添加されている識別剤)を除去・脱色したもの。俗にクマ抜きと呼ばれ、硫酸苛性ソーダ・アルミン酸ナトリウムなどが用いられる。硫酸を利用した製造過程では硫酸ピッチ(強酸性廃棄物)が発生する。なお重油からクマリンを抜くことは「黒抜き」、灯油からクマリンを抜くことは「白抜き」と呼ばれる。
灯油等
灯油や重油を軽油代替品として自動車用燃料にそのまま使用するもの軽油代替品として灯油に添加剤や潤滑剤・潤滑油を混ぜ、自動車用の燃料として使用するもの

いずれも日本においては軽油引取税の脱税行為に他ならず、税務当局が厳しく取り締まる。


不正軽油の品質

製造コストを抑えるために、不正軽油の品質管理はずさんである場合が多い。(不正軽油の存在理由に照らせば、不正軽油の品質が保証されないことは明らかである。)

不正軽油には、をはじめ、不正軽油製造装置に使用するオイルはもちろんのこと、や小動物の死骸排泄物までもがタンクに混入していることもまれではない。

不正軽油の製造に従事するものが化学薬品に関する専門知識を有することは少ない。このため、いわば素人が製造手引きに記載された範囲で硫酸苛性ソーダなどの酸やアルカリ性薬品を混合し、機械を作動させ製造している。現実にはこれら薬品の品質や保管状況は非常に劣悪であることが多く、また機械の操作誤りによって不正軽油内に残留する酸性薬品、アルカリ性薬品の濃度が正規の軽油に比較して高い場合がある。

もともと、不正軽油の製造者に品質を管理する意図を期待することはできず、したがって正規の軽油に対して行われるべき各種の品質検査が行われることも期待できない。多くの場合は製造者の視認での判断にもとづいて出荷されるようである。

従って不正軽油の使用によって、極めて高い確率で金属製のエンジンに損傷が生じることになり、不正軽油の使用で得られる経済的利益を、修理などによる経済的損失が上回ることもままある。

例えば、正規の軽油を使用する前提で設計されているディーゼル・エンジンにとって、不正軽油は硫黄分・炭素分・粘性度・セタン価分・酸・アルカリ・虫や小動物の死骸からでる体液など設計上想定外の性状・成分から成る粗悪な燃料である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki