一票の格差(いっぴょうのかくさ)とは、主に国政選挙などで、有権者が投じる票の有する価値の差のことである。一票の重みの不平等とも言われている。
選出される議員1人当たりの人口(有権者数)が選挙区によって違うため、人口(有権者数)が少ない選挙区ほど有権者一人一人の投じる1票の価値は大きくなり、逆に人口(有権者数)が多い選挙区ほど1票の価値は小さくなる。通常は、人口(有権者数)が多い選挙区の選出定数を増加させたり、区割りを変更するなどの調整が図られるが、必ずしも十分な調整がなされていない場合があるとして問題となる。
目次
1 何の差を基準として格差を判定するか
1.1 人口
1.2 有権者数
1.3 投票者数
2 問題となる格差・問題とならない格差
3 日本における問題
3.1 最高裁判決例
3.2 衆議院小選挙区の状況
3.3 参議院選挙区の状況
4 諸外国の一票の格差
5 脚注
6 関連項目
7 外部リンク
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人口選出議員を非有権者を含む全ての住民(国民)の代表とする考え方に基づく。非有権者(子供など)も含めた人口による議席配分である。アメリカほか多くの国で、この説に基づき選挙区の区割りが行われる。日本でも、衆議院議員選挙区画定審議会設置法が人口を基準にしてその均衡を図ることを規定している。他の説からは、非有権者が多い選挙区に住む有権者の影響力が大きくなるという批判がなされる。
有権者数選出議員を有権者の代表とする考え方に基づく。イギリスではこの説に基づき選挙区の区割りが行われる。人口を基準とする説からは、人口に占める有権者の割合が少ない選挙区では国民一人当たりの議員数が他の選挙区より少なくなるという批判がなされる。また、投票者数を基準とする説からは、投票率の低い選挙区の投票者の影響力が大きくなるという批判がなされる。
投票者数選出議員は実際に投票した有権者の代表とする考え方に基づく。ドイツでは、この説に基づき、州選挙区の投票数に応じて開票後に定数配分が行われる。他の説からは、投票率の低い選挙区の住民(国民)または有権者一人当たりの議員数が、他の選挙区より少なくなることを批判される。
選挙区を区分して選挙をする方式では、州や都道府県などの境界または地理的な条件による境界を無視することはできないと考えられているし、人口や有権者数は常に流動するものであるから、選挙区を区分する選挙では一票の格差が完全に無くなることはありえない。このため、合理的な範囲を超える格差がある場合に問題となる。
各選挙区の有権者数を揃えても、選挙区毎に投票率が異なり総投票数に差が出るため、投票率の高い選挙区の一票の価値は小さくなり、投票率の低い選挙区の一票の価値は大きくなるようにも思われる。これは、投票者数を基準として格差を測る説に立った場合の帰結であり、多くの国の法運用では採用されていない格差論である。
日本では法の下の平等に反するとして各地で訴訟が提起されている。最高裁判所の判例をみると、衆議院の場合で約3倍以上、参議院の場合では約6倍以上の差が生じた場合には、違憲ないしは違憲状態との判決が出されている[1](投票価値の不平等が一般的に合理性を欠く状態が違憲状態であり、これが合理的な期間内に是正されない場合に違憲とされる)。参議院の場合に、衆議院と比べて許容度が広いのは、参議院が半数改選制をとっており、各選挙区からの選出定数を偶数とする必要があることが根拠として指摘されている。
衆議院・参議院はこれまで一票の格差を是正することに取り組んできた。しかし、選挙制度改革とも関連しており政党や議員の利害が複雑に絡む問題であり、調整は必ずしも容易ではない。1992年の参議院選挙を最後に、最高裁判所において違憲ないしは違憲状態との判決は下されてない。
さらに、衆議院は選挙区画定審議会を設置し格差が2倍以上にならないことを目標にしているが、これは達成されていない。都道府県にまず議席を配分する基礎配分方式と最大剰余方式を組み合わせていることが障害となっており、現状の方式を続ける限り実現は難しいといわれる。過去、1986年「8増7減」、1992年「9増10減」、2002年「5増5減」の是正が実施された。
参議院は改革協議会の下に専門委員会を設置し議論しているが衆議院に比べて是正は遅れている。1994年に「8増8減」、2000年に定数削減、2006年に「4増4減」を実施した。半数改選のため定数が最低でも2になることや都道府県単位の選挙区設定が是正を困難にしている。なお、たとえば鳥取県と島根県の選挙区を合区すると一票の格差が是正されるため、そうした合区もたびたび提唱されるが、これには否定的な意見が根強い。最高裁判所の平成16年判決の法廷意見に付された5名の判事による補足意見においても、合区した場合には「政治的にまとまりのある単位を構成する住民の意思を集約的に反映させることにより地方自治の本旨にかなうようにしていこうとする従来の都道府県単位の選挙区が果たしてきた意義ないし機能が果たされなくなるおそれがある」と述べて、合区が行われない現状に理解を示している。
かつては定数2の選挙区が定数4の選挙区より有権者が多い逆転現象も存在していた。
参議院に関しては、アメリカ上院の制度のように各都道府県から同人数の代表を選出する方式を採用すべきだという意見もある。これは、各都道府県の同価値性を強調することで、一票の格差という問題概念を理念的に無視するものである。しかし、この制度を導入すると、国会議員が地域(都道府県)代表としての性質を有することを理由として国民個々のもつ投票価値に大きな差異を生じさせることになるため、憲法第14条の平等権規定と憲法第43条に定められた「国会議員は全国民の代表者」という規定に反するおそれが強いことを指摘されている。そのため、このような制度は憲法改正をしない限り導入しえないとも言われる。
一票の格差と最高裁判決対象選挙投票日判決日衆議院参議院
格差判決格差判決
1962年参院選1962年7月1日1964年(昭和39年)2月5日?4.09合憲