?モクズガニ
抱卵した成熟メス(甲幅7cm)
(2007年9月・千葉市)
分類
界:動物界 ⇒Animalia
門:節足動物門 ⇒Arthropoda
亜門:甲殻亜門 ⇒Crustacea
綱:軟甲綱 ⇒Malacostraca
亜綱:真軟甲亜綱 ⇒Eumalacostraca
上目:ホンエビ上目 ⇒Eucarida
目:エビ目(十脚目) ⇒Decapoda
亜目:エビ亜目(抱卵亜目)
⇒Pleocyemata
下目:カニ下目(短尾下目)
⇒Brachyura
科:イワガニ科 ⇒Grapsidae
属:モクズガニ属 ⇒Eriocheir
種:モクズガニ E. japonica
学名
Eriocheir japonica (De Haan, 1835)
和名
モクズガニ
英名
Japanese mitten crab
モクズガニ(藻屑蟹)Eriocheir japonica は、エビ目(十脚目)・カニ下目・イワガニ科に分類されるカニの一種。食用として有名な「上海蟹」(チュウゴクモクズガニ)の同属異種であり、日本各地で食用にされている内水面漁業の重要漁獲種である。
目次
1 名前
2 特徴
3 生活史
4 分布
5 利用
5.1 漁
5.2 資源保護
5.3 食用
5.4 感染症
6 伝承など
7 近縁種
8 外部リンク
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学名については、一般向けの書物や分類学以外の学術雑誌では Eriocheir japonicus が普通に用いられているが、20世紀末頃から甲殻類の分類学者の間で種名を "japonica" とする傾向が強くなっている。学名には属名と種名の性 (gender) 一致の原則が決められているが、属名 Eriocheir がもともと性不明の単語であるため、原則を適用することができず、男性形の japonicus と女性形の japonica のどちらが正しいという結論は出ない。甲殻類の研究論文が発表される最も信頼のおける国際学術誌である『 Journal of Crustacean Biology 』や『 Crustaceana 』では、 japonica が用いられている。日本甲殻類学会でも japonica を用いるようになってきているので、現時点ではそれに倣うのが混乱を避ける上で望ましい。
別名については、モクゾウガニ(千葉県習志野市)、ズガニ、ツガニ、ツガネ(長崎県)、ヤマタロウ、カワガニ、ケガニ、ヒゲガニ(徳島県貞光町)、ガンチ(徳島県阿南市)などがある。モクズガニはおもに関東地方の呼び名であり、西日本ではツガニやズガニと呼ぶ地域が多い。「モズクガニ」と間違えて呼ぶ人がいるが、「モクズガニ」が正しく、地方名にも「モズク」とつくものは見あたらない。また戦前は「モクヅガニ」と書かれていた。
甲の拡大写真。細かいヒョウ柄が見える色素異常個体。やや透明な感じの淡赤褐色
甲幅は7-8cm、体重180gほどに成長する、川に産するカニの中では大型種である。鋏脚に濃い毛が生えるのが大きな特徴で、 "Mitten crab (手袋ガニ)"という英名もこの毛に由来している。毛はふつう黒褐色をしているが、脱皮直後は白色で白髪のようにみえる。頭胸甲はやや後方に拡がった六角形をしており、側縁部にはノコギリの歯のようなとげが3対ある。体色は白い腹部と胸部腹甲を除き、本来全体的に濃い緑がかった褐色をしている。拡大するとわかるが、実際はこれはモノトーンではなく、黄緑色の下地に黒い縞模様が混ざった豹柄に近い。野生の状態では付着物が覆っていて黒く汚れた個体も多い。なお洗剤が流れ込む川は、あずき色や黄色の色素形成異常と思われる個体がみつかることもある。成長とともに鋏脚は相対的に大きくなり、毛も濃くなる傾向がある。成体では雌雄の形態差(性的二形)が明瞭で、雄は雌に比べたくさん毛の生えた大きな鋏脚を持ち、歩脚の長さは長い。成体の体サイズは雌雄でほぼ重なるが、雄の方が小型個体が多く、また最大サイズは大きい傾向がある。
成体の雄には形態に関して二形が認められ、相対的に小さな鋏を持ち歩脚の長い小型個体(甲幅約3-6cm)と、たくさん毛の生えた大きな鋏脚と短い歩脚の大型個体(約6cm以上)の2タイプが分けられるが、雌はこのように分かれる傾向は認められない。これはカブトムシの角やクワガタムシの大顎など資源防衛型の交配システムをとる甲虫類でよく知られる現象で、甲殻類ではアメリカザリガニの鋏にその傾向がある。このような雄の二形は、「配偶行動においていかにふるまえば最も自らの遺伝子を残せるか」という配偶行動戦略の違いが生出したものだという性選択の理論で説明されること多い。つまり大きな体サイズを確保できた個体は鋏という武器を有効に使い雌を獲得する(特にモクズガニの場合には交尾後ガードで交尾済みの雌の再交尾を妨げる闘争において有効に機能する)ような軍拡競争的進化で獲得された形態を発現し、小型の個体は大型個体には武器を使った闘争ではかなわないので行動力を高める形質を発現するというふうに、複数の戦略を生育履歴にしたがって切り替える表現型の可塑性が進化することで、二形が分離したというものである。
食性はカワニナなどの貝類、ミミズ、小魚、水生昆虫、両生類などを捕食するところが目撃されやすい、あるいは魚のあらなどを誘引餌として用いたカニ籠が漁獲に用いられることから、おもに肉食性と考えられていた。