メイス(mace)は殴打用の武器で、打撃部分の頭部(柄頭)と柄を組み合わせた合成棍棒の一種である。日本語では鎚矛、槌矛(つちほこ)あるいは戦棍(せんこん)とも訳される。出縁形メイス
目次
1 概要
2 歴史
2.1 古代
2.2 中世
2.3 近代、現代
3 関連項目
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メイスは単体棍棒から発達した武器で、重量のある柄頭と柄の二つの部位からなり、複数の部品を組み合わせて構成される合成棍棒の一種である。棍棒と同様に殴打用の武器で、柄の先に重い頭部を有することにより単体棍棒より高い打撃力を生みだす事ができる。 通常、金属製の柄頭と木製の柄からなるが、石や骨、木のような自然物製の柄頭をもつものや、全金属製のものも作られている。特に金属製の柄頭を持つメイスの打撃は強固な金属鎧に対し刃類よりも有効で、出縁やスパイク、突起により衝撃点を集中し厚い甲冑をへこませたり貫通したりすることができた。そのため、金属鎧による重武装化が進むと幅広く使用された。歩兵や騎兵が使用するメイスは通常60?90cm程度だが、騎兵に対してはより長い物が使用された。特に歩兵が使う両手用のメイスには柄の長さが1mを越える種類もあった。メイスは金属製殴打武器の代表的な存在であり、フレイルやウォーハンマーなどを含む合成棍棒の総称として広義の意味で使われる場合がある。
棍棒が暴力の象徴から権威の象徴となっていったように、メイスもまた権力の象徴として祭礼用の職杖を生んでいる。
柄頭はメイスの心臓部であり様々な形状をしている。下記では特に有名な物を記載する。
球型柄頭はメイスの基本の形と言え、サイズや形も多様である。円盤型や紡錘型をした亜種も存在する。特に巨大な球形柄頭をもつメイスは球を空洞にし軽量化を図る事が多い。
球型柄頭に瘤やスパイクを放射状に取り付けたメイスは特に星型、モーニングスターと分類される場合もある。
たまねぎ型、あるいは洋梨型とよばれるメイスは、放射状に房が配置された形状をしている。原型はトルコだが主にハンガリーで使われた。
出縁型柄頭は、出縁(フランジ)をもった同形の金属片を放射状に組み合わせたもので、横から見ると菱形や方形をしている。軽量化と、衝撃の集中の両方を狙ったメイスで、特に中世イタリアやドイツで生み出された物が有名である。
円柱型は、柄の先にさらに太い円柱状の柄頭を備えたメイスで、大型のスパイクで補強されている。
紀元前12,000年頃に木や石や土器で柄頭を作ったメイスが誕生しており、世界中で使用されている。しかし、自然物を素材としたメイスは、それほど重い柄頭をもちえず、特に強力な武器とは言えなかった。革の鎧が使われるようになると、有効な打撃があたえられず武器の本流からは外れていった。
金属が発見された当初は、金属を塊に成形するだけで作成できるメイスは大いに使用されたが、冶金技術の発達で長い刃が成形できるようになると補助の武器の座へ戻っていった。
紀元前3,000年頃メソポタミア文明では自然物や青銅製のメイスが一般的な武器として用いられ、様々な形状や組み合わせが開発されている。武器の中心は軍の中核を成す戦車戦に向いた刀や、槍、弓にうつっていくが、防具の重装化が早かったこともあり、メイスは中近東やイスラム世界では親しまれる武器となっていった。ウクライナ地方のスキタイの騎馬兵はメイスやウォーハンマーも用いていた。
古代ギリシアやローマ帝国は、棍棒のような殴打武器を蛮族が持つ武器と見なす風潮があった事に加え、軍の中心となる歩兵の密集陣形ではメイスは使いにくいこともあり、使用されることは無かった。ただその後のビザンツ帝国の重装騎兵カタフラクトは予備武器に剣かメイスを装備していた。
中国では春秋戦国時代には既にメイスに相当する錘が使われていたことがわかっている。錘は中国から北方や西方の遊牧民族(騎馬民族)にも広まり、彼らにも好んで使用された。
10世紀頃から、ヨーロッパや中東地方、東アジアでは、金属製鎧が発達し、チェインメイルや、小さい金属札を綴ったラメラーアーマー、板金で全身を覆うプレートアーマーなどが生まれていった。これら重装の兵に対し有効なメイスは戦場での重要度を増していった。
中東などのイスラム世界ではメイスは一般的な武器で、マムルークなどが武装として、刀、弓、メイスを好んで使用していた。
メイスの分野では出おくれていた西ヨーロッパでは、11世紀から始まった十字軍においてイスラム世界に侵攻した際、その有効性を身を以て体験し戦訓として持ち帰った。また、十字軍に限ったことではないが、キリスト教の聖職者が戦闘に参加する際、聖職者が他者の血を流すことを禁じた掟に従い、血を流さない武器としてメイスを選択することがしばしばあり、修道騎士は十字の柄を持つ剣のほかに、メイスやフレイルを好んで使用している。(しかし実際には、メイスで殴打すれば皮膚が破れ、同時に流血するのは明らかである。この場合の「血を流さない」とは、皮膚を切り裂く或いは貫通することを目的とする刀剣に対しての、あくまでも相対的な比喩である)
それらの様々な理由から西ヨーロッパでも、メイスの有効性が再認識され、14世紀にはイタリア、ドイツ地方でメイスは大きく発達を見せ、洗練されたデザインの出縁の物や、モルゲンシュテルンのような優れた星型柄頭のメイスが生み出されて、西ヨーロッパ各地へ広まり一般的な武器として使われるようになっていった。
東ヨーロッパやロシア、ハンガリーでもメイスはよく用いられた。
東アジアの地域でも大きく発達し、中国では宋の時代に、モーニングスターに相当する狼牙棒や杵、フレイルに相当する梢子棍が開発されている。それ以外でも、鞭や多接鞭など独自の発達をとげている。
13世紀に起こったモンゴル帝国では重装騎兵が出縁型メイスで武装していた。
銃の登場により、戦場から金属製の重い鎧は姿を消しメイスもそれに従って廃れていった。制式な兵器としては消えたといっても殴るだけという単純さからメイス状の即席武器がしばしば使用される。たとえば第一次大戦の塹壕戦など。戦争用の武器という範疇を外れれば警棒として警察や警備員が幅広く持っている。また、儀礼用の職杖は未だ多くの国々で使用されている。反対に暴徒がメイス状のもので武装することもあるだろう。