ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。
ノロウイルスの透過型電子顕微鏡写真(スケールバー50nm)
ノロウイルス(Norovirus)とは非細菌性急性胃腸炎を引き起こすウイルスの一種である。カキなどの貝類による食中毒の原因になるほか、感染したヒトの糞便や嘔吐物、あるいはそれらが乾燥したものから出る塵埃を介して経口感染する。ノロウイルスによる集団感染は世界各地の学校や養護施設などで散発的に発生している。「NV」と略されることもある。
目次
1 分類と歴史
2 ウイルスの特徴
3 ノロウイルス感染症
3.1 症状
3.2 感染経路
3.2.1 感染型食中毒
3.2.2 伝染
3.3 診断
3.4 治療
3.5 感染予防
4 流行
5 参考文献・脚注
6 関連項目
7 外部リンク
//
1968年、米国オハイオ州ノーウォークの小学校において集団発生した胃腸炎の患者から発見された。1972年に電子顕微鏡による観察でその形態が明らかになり、「ノーウォークウイルス(Norwalk virus)」と呼ばれるようになった。その後、これと似た形態のウイルスによる胃腸炎や食中毒が世界各地で報告され、それぞれの地名を冠した名称で呼ばれるようなった。これらはウイルス粒子の形から英語でSmall Round-Structured Virus(SRSV:小型球形ウイルス)とも呼ばれた。また、ウイルス粒子の表面に32個のカップ状の窪みが見られることから、ラテン語で「杯」を意味するcalixにちなみカリシウイルス科(Caliciviridae)に分類された。
1977年、札幌で幼児に集団発生した胃腸炎からノーウォークウイルスとよく似た小型球形ウイルスが病原体として発見され、サッポロウイルス(Sapporo virus)と名付けられた。しかし、サッポロウイルスには電子顕微鏡下で「ダビデの星(Star of David)」と形容される特徴的な構造が見られ、その他の特徴からもカリシウイルス科の中でもノーウォークウイルスとの違いが大きいものと考えられた。そこで、それまで見つかっていたものを「ノーウォーク様ウイルス(”Norwalk-like virus”, NLV)」、ダビデの星型の構造を持つものを「サッポロ様ウイルス(”Sapporo-like virus”)」という仮称を用いて分類するようになった。
2002年、第12回国際ウイルス学会(パリ)において、それまで「ノーウォーク様ウイルス」と呼ばれていたものを「ノロウイルス属(Norovirus)」、「サッポロ様ウイルス」と呼ばれたものを「サポウイルス属(Sapovirus)」と定めた[1]。2005年現在、カリシウイルス科には4属のウイルスが含まれるが、そのうちヒトの疾患に関係するものはこのノロウイルス属とサポウイルス属の2属である。他のカリシウイルス科にはラゴウイルス属(Lagovirus)とベシウイルス属(Vesivirus)が認定されている。
エンベロープを持たないプラス一本鎖RNAウイルス
カリシウイルス科(Family:Caliciviridae)
ノロウイルス属(Genus:Norovirus, ”Norwalk-like virus”)(SRSV:Small Round-Structured Virus)
ノーウォークウイルス(Species:Norwalk virus)
サポウイルス属(Genus:Sapovirus, ”Sapporo-like virus”)
サッポロウイルス(Species:Sapporo virus)
ラゴウイルス属(Genus Lagovirus)
RHDV(Rabbit hemorrhagic disease virus)
ベシウイルス属(Genus Vesivirus)
VESV(Vesicular exanthema of swine virus)
ノロウイルスはウイルスの分類上、プラス鎖の一本鎖RNAウイルスに分類されるエンベロープを持たないウイルスである。ウイルス粒子は直径30-38nmの正二十面体であり、ウイルスの中では小さい部類に属する。電子顕微鏡下では32個のコップ状のくぼみのある球形の粒子として観察される。小型球形ウイルスという名称はこの形態的特徴に由来し、ウイルス学上での正式なものではないが食品衛生学分野では用いられることがある。
通常、ウイルスについての詳細な研究を行うには適切な動物培養細胞を探して感染させ、ウイルスを増殖させることが必要だが、ノロウイルスについては実験室的に増殖させる方法がまだ見つかっていない。このため、検査や治療方法に対する研究が他のウイルスと比べて格段に遅れているのが現状である。
ノロウイルスはヒトに経口感染して、伝染性の消化器感染症(感染性胃腸炎)を起こす。死に至る重篤な例はまれであるが、特異的な治療法は確立されていない。
嘔吐・下痢・発熱を主たる症状とする。
症状の始まりは突発的に起こることが多く、夜に床につくと突然腹の底からこみ上げてくるような感触と吐き気を催し、我慢出来ずに吐いてしまうことが多い。それも一度で終わらず何度も激しい吐き気が起こり、吐くためにトイレのそばを離れられないほどである。無理に横になろうとしても気持ち悪くて横になれず、吐き気が治まった後は急激且つ激しい悪寒が続き、さらに発熱を伴うこともある。これらの症状は通常、1、2日で治癒し、後遺症が残ることもない。ただし、免疫力の低下した老人や乳幼児では長引くことがあり、死亡した例(吐いたものを喉に詰まらせることによる窒息、誤嚥性肺炎による死亡転帰)も報告されている。
また感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や風邪と同様の症状が現れるのみの場合もある。