トリクロロエチレン トリクロロエチレン (trichloroethylene) は有機塩素化合物
IUPAC名トリクロロエテン
別名トリクレン
分子式C2HCl3
分子量131.39 g/mol
CAS登録番号[79-01-6]
形状無色液体
密度と相1.463 g/cm3, 液体
相対蒸気密度4.5(空気 = 1)
融点−73 °C
沸点87 °C
SMILESC(=C(Cl)Cl)Cl
出典 ⇒国際化学物質安全性カード
脱脂力が大きいため、半導体産業での洗浄用やクリーニング剤として1980年代頃までは広く用いられていた。しかし発がん性が指摘され、代替物質への移行が行われている。
土壌汚染や地下水汚染を引き起こす原因ともなるため、各国で水質汚濁並びに土壌汚染に係る環境基準が定められている。日本では化学物質審査規制法により、1989年に第二種特定化学物質に指定された。国際がん研究機関の発がん性評価ではグループ 2A の「おそらく発がん性を持つ」物質として規定されている。
工業的な合成法とされていたのは、銅などの触媒のもと、1,2-ジクロロエタンに塩素、または塩素と酸素を作用させる方法であった。
目次
1 製造
2 用途
3 化学的不安定性
4 健康への影響
5 生産の縮小と処置
6 関連項目
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1970年代初頭より前にはアセチレンから2段階の工程で作られていた。まず、塩化鉄(III) 触媒の存在下、90 °C でアセチレンに塩素を作用させて 1,1,2,2-テトラクロロエタンとする。HC≡CH+ 2 Cl2 → Cl2CHCHCl2
次に脱塩化水素を行い、トリクロロエチレンを得る。この反応は水酸化カルシウム水溶液で行われる。2 Cl2CHCHCl2 + Ca(OH)2 → 2 ClCH=CCl2 + CaCl2 + 2 H2O
または、塩化バリウムまたは塩化カルシウム触媒を用い、気相中 300?500 °C に加熱しても良い。Cl2CHCHCl2 → ClCH=CCl2 + HCl
今日では、大部分がエチレンから合成されている。まず塩化鉄(III) を触媒として塩素化し、1,2-ジクロロエタンとする。CH2=CH2 + Cl2 → ClCH2CH2Cl
さらに塩素を加えて 400 °C 付近に加熱すると、トリクロロエチレンが得られる。ClCH2CH2Cl + 2 Cl2 → ClCH=CCl2 + 3 HCl
この反応を触媒する基質は数多い。最も一般的に用いられるのは塩化カリウムと塩化アルミニウムの混合物である。多孔質の炭素も用いられる。この反応ではテトラクロロエチレンが副生し、系に加えられた塩素の量によってはそちらが主生成物になることもある。一般的に、両者は一緒に回収され、蒸留によって分離される。
様々な有機化合物の良溶媒である。1920年代に初めて広く使われ始めたとき、その主用途はダイズ、ココナッツ、ヤシからの植物油の抽出であった。他にも、食品工業においてコーヒーのデカフェ、ホップや香辛料からの香料の抽出に使われた。ドライクリーニング用の溶媒としても利用されたが、この用途は1950年代にはテトラクロロエチレンに取って代わられた。
毒性をもつことから1970年代以降ほとんどの国で食品および医薬品工業での使用が禁止された。
その歴史の大部分を通して金属部品のグリース落としとして広く使われた。1950年代後期、より毒性の低い1,1,1-トリクロロエタンが登場したことにより、グリース落としとしての需要は減少し始めた。もう1つの問題点として、印刷をはがしやすくプラスチックを溶かしてしまうことから、多くの機械類へ適用する溶媒としては好ましくないという点が挙げられる。しかしながら、モントリオール議定書に従い 1,1,1-トリクロロエタンの製造は世界の大部分で廃止され、結果としてトリクロロエチレンが再び使われるようになった。100%エタノールを製造する際に、最後に残った微量の水を取り除くのにも使われている。
長い間クロロホルムやジエチルエーテル(エーテル)を抑え、製造にかかる時間およびコストの面で高い効率を示し続けた。イギリスのインペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI)がさきがけとなり、クロロホルムのような肝毒性や、エーテルのような刺激性・可燃性を持たないことから、その発展は革命とたたえられた。