ボーイング929 (Boeing 929) は、米国ボーイング社によって開発された水中翼船。旅客用はジェットフォイル (Jetfoil) という愛称を持つ。ジェットフォイル(東海汽船セブンアイランド虹、伊豆大島元町港)
目次
1 構造
2 歴史
3 諸元(旅客用)
4 主な航路
4.1 日本国内発着
4.2 日本-海外間
4.3 日本国外
5 外部リンク
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構造整備中の東海汽船「虹」(千葉県富津市)
水中翼船としては全没型に属し、翼が全て水中にある。ガスタービンを動力としたウォータージェット推進である。
停止時および低速では通常の船と同様、船体の浮力で浮いて航行し、「艇走」と呼ばれる。速度が上がると翼に揚力が発生し、しだいに船体が浮上し離水、最終的には翼だけで航行する、「翼走」という状態になる。
船体の安定は Automatic Control System(ACS、自動姿勢制御装置)により制御された翼のフラップにより行われる。進行方向を変える場合もフラップを使うため航空機さながらに船体を傾けながら旋回する。翼走状態では、水面の波の影響を受けにくく高速でも半没式水中翼船に比べ乗り心地がよい。
翼は跳ね上げ式になっており、停止・低速時の吃水を抑えることができる。また半没型と異なり翼の左右への張り出しもないため港に特別の設備なしに着岸できる。また翼にはショックアブソーバーが付いており、材木など多少の障害物への衝突に耐えることができる。
姿勢制御はACSと油圧アクチュエータに依存するので、推進用のタービン共々、航空機なみのメンテナンスが必要である。
歴史軍用929(米海軍のペガサス級水中翼ミサイル艇の三番艇トーラスPHM-3)
航空機メーカーであるボーイングがその技術を水上に対して適用する研究を始めたのは1962年頃で、当初は軍事目的であった。1967年にパトロール用の小型艇が実用化された。これがベトナム戦争で有用であったため、その後NATOの依頼によりミサイル艇が開発された。このときに929の型番となった。
これを基に旅客用が開発されたのは1974年である。型番は929-100型となり、ジェットフォイルの名前もこのとき付けられた。ボーイングとしては初期型929-100型を10隻、前方フォイル及び乗船口付近の改良を施した929-115/117型を13隻、軍用の929-320、929-119、929-120型5隻の合計28隻を製造した後、ライセンスを川崎重工業に提供し、1989年に日本製1号艇が就航した。現在は川崎重工(神戸工場)に全面的に移管されており、川崎ジェットフォイル929-117として製造されている。川崎重工では1989年から1995年までに15隻が製造された。ボーイング、川崎重工の両社で旅客型として製造されたジェットフォイル(軍用-320型からの改造1隻含む)は29隻にのぼる。
同じくボーイングのライセンスを基にイタリアのフィンカンティエーリ社が建造して1983年に就役したイタリア海軍のスパルヴィエロ級ミサイル艇は海上自衛隊の目を引き、住友重機械工業がライセンスを受けて1993年-1995年に1号型ミサイル艇を3隻建造している。
また、日本国内の定期航路に本格的に投入されたのは佐渡汽船の新潟港 - 両津港間航路で、1977年のこと。当時国内ではメンテナンスが困難だったことから、佐渡汽船の整備担当者はボーイングで長期研修を受けてメンテナンスのノウハウを学んだ。その後川崎重工がジェットフォイルのライセンスを得た際には佐渡汽船からもノウハウの提供を受けている。また運航開始当初、新潟港が河口部にあるという構造上、水と共にごみなどの異物・浮遊物を吸入して運航不能となるトラブルが頻発したことから、ボーイングは急遽社内に対策チームを設け、吸入口に特殊な構造のグリルを設置する対策を講じた。これが奏功して異物吸入のトラブルは減少し、その後製造されたジェットフォイルの設計にも反映された。
前述のように水中翼は頑丈ではあるが、2002年に神戸港-関西国際空港間航路において船底に穴が開き、沈没寸前に至る事故が発生している。この事故が直接の原因ではないが、同航路は慢性的な乗客低迷に伴って休止された。
海上浮遊物への対策が採られているものの、衝突事故が数回起きている。1992年と1995年には新潟-佐渡間航路で、2004年末ごろからは、福岡-釜山間航路(対馬海峡)においてクジラと見られる生物に衝突、前部水中翼が破損して高速航行が不能になる事故が数回発生している。2006年4月9日には、屋久島-鹿児島間航路の佐多岬沖合で流木に衝突、100名以上の重軽傷者を出す事故が起きている。このような事故後は運航会社ではシートベルトを着用するよう乗客に促していた。特に佐多岬沖の事故後は、国土交通省から事業者に対して見張りの強化やシートベルトの着用を徹底するよう指導されている。
諸元(旅客用)
速度: 約45ノット(時速約83km)
全長: 約30m(翼の上げ下げで約3m変わる)
全幅: 8.5m
吃水: 2.2m-5m(翼を下げた状態)
旅客定員: 250-350名
エンジン: ガスタービン2基、7600馬力