クィア理論
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クィア理論(クィアりろん Queer theory)は、第三波フェミニズムゲイ・レズビアンスタディーズとして知られる、ジェンダー・セクシュアリティの、哲学的、理論的な研究から派生し、構築された理論である。クイア理論とも表記する。
目次

1 概要

2 問題意識

3 歴史

4 思想的な背景

5 クィア理論の方法

6 注釈

7 関連項目

8 関連する思想家

9 参考文献

10 映像資料

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概要

1990年代初頭まで、「クィア(Queer)」とは「奇妙な」という意味から転じて「男性同性愛者」、「ホモセクシュアル」、「変態」、「おかま」などの意味で使用された侮蔑語、差別語であった。[1]しかし、LGBTといった細分化されたセクシュアリティの分類に対して、テレサ・デ・ラウレティスやジュディス・バトラー、イヴ・セジウィックらの思想家が新たな理論的な可能性を模索をはじめ、「クィア」という言葉は、非異性愛者の連帯として新たな意味として肯定的に用いられるようになった。

1990年代以降、クィア理論は、学問領域を横断する思想として広く受容されるようになり、「本質」、「生成」、「根源」といった概念に対して、「構築」、「行為遂行性(パフォーマティヴ)」、「経路」といった観点から、「性」(セックス、ジェンダー、セクシュアリティ)を問い直している。従って、クィア理論は、特定の方法論や概念的な外延を持たず、セックス、ジェンダー、セクシュアリティの相関関係や、社会的な「性」の基盤について考える取り組みの総称であり、集合体を指す言葉である。

具体的には、文学テクストや哲学テクスト、映画、音楽、映像、演劇、身体的なパフォーマンスなどの表象を、クィアという変数を導入して読み直したり、セックス、ジェンダー、セクシュアリティが、社会の中でどのように機能しているのかについて、社会的、政治的、法的、医学的な言説実践や、言説実践によって産出された知と権力の関係について研究する取り組みなどの集合を指し、独立した学問分野、単一な理論ではなく、学問横断的(学際的)で、撹乱的な知的行為である。

また、クィア理論は、異常という聖痕(スティグマ)を塗り替える政治的な戦いとしても捉えられることがある。しかし、これは暴力的な戦いではなく、自己のクィア性(変態性)を前面に出して生き、自己同一性という神話そのものを問い続ける動的な行為遂行性に基づいているために誤解やトラブルを生みやすい(ジュディス・バトラー『ジェンダートラブル』などで指摘)。しかし、そのトラブルから他者と自己といった二分法を越えるための理論を構築しようとしている。

共通するのは、「性」やアイデンティティに関して、「正常」、「ストレート」といった規範、異性愛中心主義や、生物学的な真理がいかに構築されたか、その過程や経路について、二項対立といた枠組みや学問領域、知の編成までも問い直す研究を行っている点である。


問題意識

クィア理論の主要な研究企図は、現在進行中の、ジェンダーセクシュアリティ性科学の類型化、分類について再考することである。例えば、「ホモセクシュアルとは何であるか?」という問いは、ホモセクシュアルの範疇を再考したり、ホモセクシュアルの構築過程について本質はあるのかという問いを可能にする。また、「黒人系の英国籍をもったレズビアンは、南アジアのゲイの男性と異なった生活経験をしているのか」など、これまで一面的にとらえてきたゲイやレズビアンなどの範疇(カテゴリー)の中にある差異を問い直すことも行われている。

そのほかには、「どうやってわたしたちは『男とは何であるか』『女とは何であるのか』を定義しているのか」といった疑問を提示し、「」や「」といったカテゴリーの構築過程を解きほぐす実践としてもクィア理論は捉えられる。その際、「女性は男性的になれるのか?」 或いは、「なる必要があるのか」といった問いかけも含む。

上述のように、クィア理論とは、主体というカテゴリーを「定義」し、固定化し、同定するのではなく、連続する動き、運動として、主体というカテゴリーを絶え間なく検証し続ける動的な行為である。同時にクィア理論は、唯一の起源や真理への異議申し立てであり、反復の際の規範の攪乱を期待している。カルチュラル・スタディーズの理論家ポール・ギルロイ( ⇒en:Paul Gilroy)によると、「起源(ルーツ)ではなく経路(ルート)に着目し」、具体的に例証することにより、論を組み立てるのがクィア理論である。

クィア理論は、もともと、ジェンダーセクシュアリティの諸問題において、自然的、必然的、本質的な立場をとらず、ジェンダーやセクシュアリティは文化的に構築されているという立場から出発した。言語自体が恣意的な差異の体系であるという、20世紀言語論的転回を受けて、「言語は恣意的に構築された差異の体系であること(構築主義的な見方)」、「規範的なにあてはまらないものは、排除されるか、言説の増産によって、一定の位置に追いやられること(ミシェル・フーコーが『性の歴史I 知への意志』で指摘)といった問題意識に基づき、同一性規範主体の産出の問題について活発に論を展開している。「クィア」という言葉には、概念の外延に限界はなく、過渡的であり、多様、非同一、定義拒絶を通じて、どのように主体が構築されたのかを、経路に着目することから解きほぐす。それらの方法論は、ジャック・デリダの脱構築と関連し、新たな概念や知を再構築する、生産的な営みとして、学際的に行われている。


歴史

クィア理論は、1990年2月に、カリフォルニア大学サンタクルーズ校において行われた、レズビアンゲイセクシュアリティを理論的に考える研究会議「クィア・セオリー」において、テレサ・デ・ラウリティス(テレサ・デ・ローティス)によって、「クィア」と「理論」を組み合わせて作られ、同会議では、クィア概念が提唱された。

ラウレティスの問題意識は、1960年代から進んでいたレズビアンやゲイの権利を確保するための解放運動の後、1980年代以降、反動(バックラッシュ)が起きたことに対して、セクシュアルマイノリティの間での連帯を呼びかけるものだった。風間孝、河口和也、キース・ヴィンセント『別冊id研』(動くゲイとレズビアンの会1997年13ページ/河口和也『クイア・スタディーズ』2003年・57-58ページにも採録)によると、ラウレティスは、アメリカ合衆国において、「ゲイとレズビアン」というひとかたまりの集団として扱われることについて、セクシュアリティについての差異がないかのように捉えられていることについて話す機会として1990年のカリフォルニア大学サンタクルーズ校での学会を主催したという。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki