エンバーミング
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この項目では遺体の保存処理技術について記述しています。和月伸宏の漫画作品についてはエンバーミング (漫画)をご覧ください。

エンバーミング (embalming) とは、欧米で遺体を消毒、保存処理を施し、また、必要に応じて修復し、長期保存を可能にしようとする技法。日本語では死体防腐処理、遺体衛生保全などと翻訳される。土葬が基本の欧米では遺体から感染症が蔓延することを防止する目的も含まれる。
目次

1 概要

2 プロセス

3 欧米と日本の現状

4 これから

5 エンバーミングを題材とした作品

5.1 映画

5.2 ドラマ

5.3 漫画

5.4 小説


6 関連項目

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概要

人間動物の肉体は死後、体内にある自己融解酵素及び体の内外に棲息する微生物などによって、細胞レベルで急速に分解が始まり(腐敗)、さらにはこれとほぼ同時進行でクロバエ科やニクバエ科を中心とするハエ幼虫(いわゆる)などの死肉食性の昆虫の摂食活動によって速やかに損壊する。しかしながら、遺体を遠方に運ぶ必要がある場合など、遺体の長期保存が必要となる場合がある。また、感染症で死亡した遺体は通常の保存方法や埋葬方法で衛生上の問題は発生しないものの、遺体そのものへの接触および遺体から浸出した体液・腐敗汁などの汚染によって感染する可能性はゼロではない。

エンバーミングとは、上記の問題に対処すべく、エンバーマーと呼ばれる葬儀の専門の技術者や医学資格を有した医療従事者によって故人の遺体に対して行われる化学的・外科学的処理のことである。


プロセス

現代のエンバーミングは、具体的には以下の方法で行われている。
全身の消毒処理、及び洗浄を行う。

遺体の表情を整え、必要に応じて髭を剃るなどの処理を行う。

遺体に少切開(主に頸部など)を施し、動脈より体内に防腐剤を注入。同時に静脈より血液を排出する。

腹部に約1cmの穴を開け、そこから鋼管を刺し胸腔・腹腔部に残った体液や、腐敗を起こしやすい消化器官内の残存物を吸引し除去する。また同時にそれらの部分にも防腐剤を注入する。

切開を施した部位を縫合し、事故などで損傷箇所がある場合はその部分の修復も行う。この時、切開を行った部分にはテープ等を貼り目立たなくする。

再度全身・毛髪を洗浄し、遺族より依頼のあった衣装を着せ、表情を整え直した上で納棺する。

上記の処理を行われた遺体は注入される薬剤の濃度や量により数日〜2週間程度までは常温での保存が可能になる。もちろんこれ以上に徹底した処理を行えば保存可能期間を更に延ばすことが可能となるだけでなく、防腐剤の交換など、定期的なメンテナンスを行えば、半永久的な保存も可能になる。ロシア革命の指導者ウラジーミル・レーニンの遺体は、現在でもモスクワレーニン廟で生前の姿のまま保存展示されている。共産主義国の建国指導者は遺体保存されているケースが多い。

また、それ以外にも遺体に美容を施すことにより、あたかも故人が生きて眠っているかのような安らかな容姿を演出することによって遺族の心を慰めるのもエンバーマーの重要な技術とされている。


欧米と日本の現状

エンバーミングの始まりは古代におけるミイラにまで遡る事ができる。だが、近代エンバーミングが急速に発展する契機となったのは1860年代アメリカの南北戦争であるといわれている。当時の交通手段では兵士の遺体を故郷に帰すのに長期間を要したため、遺体保存の技術が必要とされ発達した。エンバーミングはアメリカやカナダのほとんどの州と、フランスやイギリスの一部ではごく一般的な行為であり、→エンバーミング→葬儀という流れが確立している。特にアメリカでは州法で移動距離によってエンバーミングを義務づけるなど、州レベルの法整備がなされており、州法によりエンバーマーの教育・資格制度も整っている。ただし、州法にもとづく試験と資格のため、資格の発行権者は州知事もしくは州の衛生担当者であり国家資格ではない。そのため、州単位でエンバーミングに関する考えがまちまちであり、州法で資格やその他の規定をしていない州も存在する。また、アメリカでは土葬率の非常に高い南部地区のエンバーミング率は95%以上だが、大都市部や西海岸地区、ハワイでのエンバーミング率は大きく低下してきており、アメリカでの火葬率の上昇にともない、アメリカ全土でのエンバーミング率は低下の一途を辿っている。

一方、日本ではエンバーミングの風習もこれを想定した法規制もない。これは、今日の日本では遺体の最終処理は99%以上が仏教の影響により火葬であり(アメリカのネバダ、アラスカ、ハワイ、ワシントン州などでは火葬率は60%であるが、キリスト教プロテスタント教会保守派の影響が強い中南部の州では火葬率は5%程度)、また狭い国土ゆえ輸送時間も欧米に比して短く[要出典]、欧米ほど長期保存の必要性や感染症まん延のリスクがないためであるといわれている。

キリスト教では最後の審判に際しての死者のよみがえりの教義を持つため、キリスト教会の見解として火葬を禁止してきた。しかし、1913年にはチェコ・カトリック教会、1944年に英国国教会、1963年にフランス・カトリック教会が「火葬は教義に反しない」と火葬を認めた。これに遅れて、1965年にはローマ・カトリック教会が教令1203条の「火葬禁止令」を撤廃し、バチカンの正式見解として「火葬は教義に反しない」としたため、地域による格差はあるものの徐々に火葬が許容されつつある。

これに対して日本では、欧米圏のキリスト教による遺体の復活信仰やそれに伴い存在した火葬の禁忌・抵抗感の様な概念は乏しく(ただし、神道家の一部に火葬否定の思想はある)、土葬習慣が残っていた地域でも火葬技術の進歩・導入によって近現代に急速に土葬が衰退したために欧米式エンバーミングの発達をみることがなかった。また、江戸時代の日本には馬車が存在しておらず、旅先や遠い奉公先での急死者の遺体の搬送は実質的に人力に頼らざるを得ず、一般庶民のレベルでは遺体をそのままの姿で長距離輸送するという考え方も選択肢も存在していなかった。この考え方については明治期以降もさしたる変化が無く、戦前の日本陸軍は戦死者は現地で荼毘に付す事が多かったし、戦後でも多数の死者が発生した災害や事故では現地で火葬許可を得て早々に荼毘に付して遺骨をもって帰る事が昭和中期まではごく普通であった事も、日本においてエンバーミングへの興味がなされない要因となった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki