線型代数学において、線型変換の特徴を表す指標として固有値や固有ベクトルがある。与えられた線型変換の固有値および固有ベクトルを求める問題のことを固有値問題(Eigenvalue problem)という。ヒルベルト空間論において線型作用素 あるいは線型演算子 と呼ばれるものは線型変換であり、やはりその固有値や固有ベクトルを考えることができる。固有値という言葉は無限次元ヒルベルト空間論や作用素代数におけるスペクトルの意味でもしばしば使われる。
目次
1 歴史
2 定義
3 固有値・固有ベクトル
3.1 その他の例
4 正定値、半正定値
5 固有値問題の解法
6 量子力学における固有値問題
7 関連項目
8 参考文献
9 注
10 解析ソフト
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現在では、固有値の概念は行列論とからめて導入されることが多いものの、歴史的には二次形式や微分方程式の研究から生じたものである。
18世紀初頭、ヨハン・ベルヌーイとダニエル・ベルヌーイ、ダランベール および オイラーらは、いくつかの質点がつけられた重さのない弦の運動を研究しているうちに固有値問題につきあたった。18世紀後半に、ラプラスとラグランジュはこの問題をさらに研究し、弦の運動の安定性には固有値が関係していることをつきとめた。彼らはまた固有値問題を太陽系の研究にも適用している[1]。
オイラーはまた剛体の回転についても研究し、主軸の重要性に気づいた。ラグランジュがこの後発見したように、主軸は慣性行列の固有ベクトルである[2]。19世紀初頭には、コーシーがこの研究を二次曲面の分類に適用する方法を示し、その後一般化して任意次元の二次超曲面の分類を行った[3]。コーシーはまた "racine caract?ristique"(特性根)という言葉も考案し、これが今日「固有値」と呼ばれているものである。彼の単語は「特性方程式 (characteristic equation)」という用語の中に生きている[4]。
フーリエは、1822年の有名な著書 "Th?orie analytique de la chaleur" の中で、変数分離による熱方程式の解法においてラプラスとラグランジュの結果を利用している[5]。スツルムはフーリエのアイデアをさらに発展させ、これにコーシーが気づくことになった。コーシーは彼自身のアイデアを加え、すべての対称行列は実数の固有値を持つという事実を発見した[3]。この事実は、1855年にエルミートによって、今日エルミート行列と呼ばれる概念に対して拡張された[4]。ほぼ同時期にブリオスキは直交行列の固有値全てが単位円上に分布することを証明し[3]、クレープシュが歪対称行列に関して対応する結果を得ている[4]。最終的に、ワイエルシュトラスが、ラプラスの創始した安定論 (stability theory) の重要な側面を、不安定性の引き起こす不完全行列を構成することによって明らかにした[3]。
19世紀中ごろ、リュービユは、スツルムの固有値問題の類似研究を行った。彼らの研究は、今日スツルム-リュービユ理論と呼ばれる一分野に発展している[6]。 シュヴァルツは一般の定義域上でのラプラス方程式の固有値についての研究を19世紀の終わりにかけて初めて行った。一方、ポワンカレはその数年後ポワソン方程式について研究している[7]。