インテリジェント・デザイン(「知的設計」論、intelligent design)とは、知性ある設計者によって生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする説。しばしば、ID(アイディー)と略される。
聖書信仰を基盤にする宗教的な論説の創造科学から宗教的な表現をなくして一般社会や学校教育など、広く受け入れられるように意図したもので、近年のアメリカ合衆国で始まった。宗教色を抑えるために、宇宙や生命を設計し創造した存在を「神」ではなく「偉大なる知性」と記述することが特徴である。これにより、非キリスト教徒に対するアピールを可能とする。また宗教色を薄めることで、政教分離原則を回避しやすくなる(公教育への浸透など)。
目次
1 概要
2 創造科学
3 各界の反応
3.1 科学者
3.2 カトリック教会
3.3 創造論否定者
3.4 創造論肯定者
3.5 風刺・パロディー
4 社会への影響
4.1 アメリカの社会問題
4.2 日本への影響
5 脚注
6 関連項目
7 外部リンク
//
旧約聖書によれば「全ての人間の祖先であるアダムは神によって作られ、その妻イヴはアダムのろっ骨から生まれた」とされ、ユダヤ教徒やキリスト教徒の間では長い間これが信じられてきた。しかし、ダーウィンの進化論が認知され、「原始的な動物が次第に進化して人間になった」と考えられるようになると、聖書の記述をどのように解釈するかについて議論が起こった。インテリジェント・デザインでは、「原始的な動物が人間に進化した」という、進化論を一部認めつつも、「その過程は(神のごとき)偉大な知性の操作によるものである」として、宗教色を薄めつつも、「偉大な知性」を神と解釈できる余地を残している。また、インテリジェント・デザインを公教育にも取り入れようとする動きがあり、議論になっている。
一方で、ID論は科学とは別の「道徳的な問題」を扱う際のツール(道具もしくは根拠)であり、実際の自然科学と共存する思想であるとする論者もある。これは、「仏教における輪廻転生や地獄といった考え方は科学では肯定されてはいないが、(熱心な仏教徒でなくとも)人々が倫理や道徳を考える際に有用なツールであることが経験的に知られているように、ID論も自然科学を否定するものではなく、あくまで「方便」に過ぎないのだ」という主張である。こういった擬似的な宗教を思想の枠組みとして設定する手法は、ニューサイエンスの流行時にしばしば用いられた(例:ガイア理論)。
詳細は創造科学を参照
宇宙や地球の出来た年代、生物の発生順や発生時期、各々の生物種の発生の仕方などについて、宇宙論・地球科学・古生物学・進化論など現在の科学的定説とされる進化論と対峙して、創世記の記述を科学的に論述し証明しようとする言説を「創造科学」と呼び、それに関与する学者・科学者を「クリエーショニスト」と呼ぶ。
アメリカ合衆国カンザス州での、進化論と同時にID論を学校で教育すべきである、というID推進派の主張に対しては、「これは科学の議論ではない」「科学と宗教は全く違うもので、議論自体がナンセンスだ」との意見があった[1]。
一般向け科学解説書の多数の著作がある生物学者リチャード・ドーキンスは、一神教的宗教を批判する著作[2]を発表し、その中でインテリジェント・デザインについても詳細な反論を行っている。
一般に勘違いされがちだが、カトリック教会を始めとする宗教界ではID論はあまり受け入れられていない。そもそも進化論は必ずしも創造論を否定するものではなく、進化論が生物の起源にまで及ばない以上、そこに神の存在を見出すことが可能である。公的な見解でも、カトリック教会が進化論を否定したことはなく、むしろヨハネ・パウロ2世が進化論を概ね認める発言を残しているくらいである。つまりID論は、たとえ「偉大なる知性」を「神」に置き換える余地があっても、彼らにとって進化論よりも神の存在を脅かす説なのである。[3]