化学においてのアルコール (alcohol) とは、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置き換えた物質の総称である。芳香環の水素原子を置換したものはフェノール類と呼ばれ、アルコールと区別される。
最初にアルコールとして認識された物質は、エタノールである。この歴史的経緯により、一般には単に「アルコール」と言えば、エタノール、またはそれを含む飲料(酒)のことを指す。酒は、主に酵母による糖のアルコール発酵により生産され、このとき少量であるが多種多様のアルコール類も同時に産生されて酒の香味成分となる。
アルコール類は、生体内での主要代謝物の1つであり、生物体に多種多様なアルコール体が広く見いだされる。蝋はセタノールなど高級アルコールであり、脂肪(中性脂肪)は、多価アルコールのグリセリンと脂肪酸とのエステルである。そして、糖類もアルコール体である。特にカルボニル基を失った糖であるエリトリトールやペンチトール、ヘキシトールなどは、糖アルコールと呼ばれる。
目次
1 構造
1.1 命名法
2 語源
3 利用法
4 製造
5 物理学的あるいは化学的性質
5.1 実験室的合成法
5.2 反応
5.3 毒性
6 法律
7 主なアルコール類
7.1 メタノールとエタノール
7.2 低級アルコール
7.3 高級アルコール
7.4 アルコキシド
8 関連項目
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ヒドロキシル基が結合している炭素原子が結合する炭素原子の数で第一級、第二級、第三級という区別がある。酸化すると第一級アルコールはアルデヒドとなり、第二級アルコールはケトンとなる。第三級アルコールは酸化されにくい。なお、メタノールは炭素原子どうしの結合を持たないが、酸化してホルムアルデヒドとなるので、一般に第一級アルコールに含まれる。
それとは別に、炭素数が少ないアルコールを低級アルコール、炭素数が多いアルコールを高級アルコールという。低級アルコールは無色の液体であり、高級アルコールは蝋状の固体である。
さらに、結合しているヒドロキシ基の数がn個であるアルコールを、n価アルコールという。nが2以上で、ヒドロキシ基が隣り合った炭素原子上に存在するアルコールをグリコールと呼ぶ。グリコールは、一般に粘性が高い。
一般名では普通、対応するアルキル基の名称に "alcohol" の語を続けて命名する(例: methyl alcohol, ethyl alcohol)。より複雑なアルコールの場合、一般名は、一級アルコール、二級アルコール、三級アルコールによって異なる。プロピルアルコールの場合、ヒドロキシ基が1位炭素にある一級アルコールは n-propyl alcohol と呼ばれ、ヒドロキシ基が折れ曲がり位置の2位炭素にある二級アルコールは sec-propyl alcohol と呼ばれる。また、sec-propyl alcohol の別名に isopropyl alcohol がある。三級アルコールの場合は、同様に "tert-" の語をつける(例: tert-butyl alcohol)。2つのヒドロキシ基を持つ2価アルコールの場合は "glycol" の語を続ける(例: HOCH2CH2CH2OH, propylene glycol)。
IUPAC命名法によると上記の一般名も維持されるが、IUPACの推奨する組織名では対応するアルカン鎖の名称の末尾の "-e" を "-ol" に変えて命名する(例: methanol, ethanol)。一級アルコール、二級アルコール、三級アルコールの別は、"-ol" の前につける(例: propan-1-ol, propan-2-ol)。ほかにも置換基があり、ヒドロキシ基が主基にならない場合 "hydroxy" の語を前につけて表す(例: 2-hydroxypropanoic acid)。また多価アルコールの場合は "-ol" を "-diol"(二価アルコールの場合)、"-triol"(3価アルコールの場合)のように ol の前に数詞をつけて命名する。位置番号のつけ方は同様である。
アルコール (alcohol) の語源については正確な起源が判明しているわけではないものの、"al-" がアラビア語の定冠詞であることから、アラビア語に由来すると考えられている。そもそも、12世紀にイスラム社会の錬金術の発見を大衆向けに翻訳した数々のヨーロッパの翻訳者によって、アルコールは蒸留技法とともにその蒸留物のこととしてヨーロッパに紹介された。
多くの辞書では "al-khwl" から来たとする説を紹介しているが、al-khwl は、アラビア語の原義では殺菌剤と眉墨に利用されたアンチモン硫化物 Sb2S3 の非常に微細な粉体のことである。