デンプン(澱粉、Starch)とは、分子式(C6H10O5)n の炭水化物(多糖類)で、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子である。構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す。種子や球根などに多く含まれている。
高等植物の細胞において認められるデンプンの結晶(澱粉粒)やそれを取り出して集めたものも、一般にデンプンと呼ばれる。澱粉粒の形状や性質(特に糊化特性)は起源となった植物の種類によりかなり異なる。トウモロコシから取り出されたものを特にコーンスターチと呼ぶ。
目次
1 分子の構造
2 物理的性質
2.1 糊化
2.2 老化
2.3 性質の応用
3 化学的性質
3.1 ヨウ素デンプン反応
3.2 加水分解
4 デンプンの消化
5 デンプンの製造
6 原料となる植物とそのデンプンの性質
6.1 トウモロコシ澱粉
6.2 ワキシーコーンスターチ(もちトウモロコシ)
6.3 ハイアミロースコーンスターチ(ハイアミローストウモロコシ)
6.4 小麦澱粉
6.5 米澱粉
6.6 豆類(ソラマメ、緑豆、小豆など)
6.7 馬鈴薯澱粉
6.8 甘藷澱粉
6.9 タピオカ澱粉(キャッサバ)
7 デンプンの利用
8 関連項目
//
デンプンはその構造によってアミロースとアミロペクチンに分けられる。アミロースは直鎖状の分子で、分子量が比較的小さい。アミロペクチンは枝分かれの多い分子で、分子量が比較的大きい。アミロースとアミロペクチンの性質は異なるが、デンプンの中には両者が共存している。デンプンの直鎖部分は、グルコースがα1-4結合で連なったもので、分岐は直鎖の途中からグルコースのα1-6結合による。アミロースはほとんど分岐を持たないが、アミロペクチンは、平均でグルコース残基約25個に1個の割合でα1-6結合による分枝構造をもつ(直鎖部分の長さは18〜24残基、分岐間は5〜8残基の間隔がある)。なお、動物における貯蔵多糖として知られるグリコーゲンはアミロペクチンよりもはるかに分岐が多く、3残基に一回の分岐(直鎖部分の長さは12〜18残基、分岐の先がさらに分岐し、網目構造をとる)となり、アミロースやアミロペクチンとは区別される。トウモロコシの種子などでもこのグリコーゲンの顆粒が存在する。
α-グルコース分子が直鎖状に重合している部分は、水素結合によりα-グルコース6個で約1巻きのラセン構造となっている。また、ラセン構造同士も相互に水素結合を介して平行に並び、結晶構造をとる。分子は二重螺旋状態での結晶と、一重螺旋状態での結晶を作りうる。まず二重螺旋状態の結晶には、お互いのグルコース残基上の水酸基同士で直接水素結合を形成するタイプ(A型。コーンスターチなどの穀類由来のものがこの形)、間に水分子一層をはさむタイプ(B型と呼ぶ。馬鈴薯などの根茎・球根由来のものがこの型)と、両者の混合したタイプ(C型。根由来のもの)がある。また一重螺旋状態の結晶はV型と呼ばれ、天然ではデンプン顆粒に含まれる油脂成分がアミロースの一重螺旋のなかに包接された、包接錯体として存在している。
物理的性質
アミロース・アミロペクチンともに、白色の粒粉状物質で、無味・無臭。
アミロースは熱水に溶けるが、アミロペクチンは溶けない。
天然の結晶状態にある澱粉をβデンプンと呼び、澱粉中の糖鎖間の水素結合が破壊され糖鎖が自由になった状態の澱粉をαデンプンと呼ぶ。(日本国内の呼び方で、国際的用語ではない。)
澱粉を水中に懸濁し加熱すると、デンプン粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的にはデンプン粒が崩壊し、ゲル状に変化する。この現象を糊化という。このとき、澱粉懸濁液は白濁した状態から次第に透明になり、急激に粘度を増す。粒子が最大限吸水した時粘度が最大となり、粒子の崩壊により粘度は低下する。
澱粉の糊化は、結晶構造をとっている澱粉分子の隙間に水分子が入り込むことでその構造が緩み、各枝が水中に広がることによって起こる。このとき澱粉が溶解しているように見えるが、前述したようにアミロペクチンは溶解しているわけではない。
糊化した澱粉の溶液を冷却すると、糊液は次第に白濁し、水を遊離して不溶の状態となる。これを老化と呼ぶ。
澱粉糊液の老化は、水中に分散した澱粉分子が再び結晶化することにより起こる。ただし、完全にもとの状態に戻るわけではない。
これが澱粉を原料に含むパンなどの食品が、時間を経ると硬くなる主要な原因といえる。