とりあえず質量保存の法則は無視しよう。栗まんじゅうは、なにも無いところから涌いて出るように増えて行くとする。それでは、ひたすら増殖を続ける栗まんじゅうは、その後どうなるのであろうか。
栗まんじゅうがその場で(地球との位置関係を変えずに)増殖を続ければ、数時間後には「栗まんじゅう球」の直径は地球の直径をこえ、地球は飲み込まれてしまう。地球から一定の速度をもって打ち出したとしても「運命の時」を遅らせるのみであり、いずれ地球はのみこまれる。栗まんじゅう球の直径は15分ごとに2倍に、指数的に増えてゆくためである。ただし、放出速度が光速度に近づけばローレンツ変換によって見かけ上の時間の経過が遅くなり、場合によっては「運命の時」が半永久的にやってこない(少なくとも宇宙の寿命より先)とすることも可能であろう。
数式
分裂開始から充分に時間が経過した後の栗まんじゅう球の直径および膨張速度は、以下の数式により求められる。
まず、分裂開始t秒後における栗まんじゅう球の体積をV(t)、栗まんじゅう球の半径をr(t)と置くと ……(1)
である。式 (1) を変形して ……(1)'
を求める。この時V(t) の値は、t=0における栗まんじゅうの初期値をV0とすると ……(2) T=300 sec:バイバイン増殖定数
となる。栗まんじゅうの増加量は上の式で示されるように離散的な数値を取るが、以下では計算の便宜上栗まんじゅうの増加量を連続量、すなわち ……(2)'
と見なす(充分にtが大きくなれば、上の式 (2)' は結局式 (2) に収束する)。式 (2) 'を式 (1)' に代入することで、
が求まる。ここでt=0におけるrをr0とすれば、式 (1)' より ……(3)
であり、これにより時刻tにおける栗まんじゅう球の半径が求められた。
式 (3) の時間微分により栗まんじゅう球の膨張速度 ……(3)'
が得られる。さらにここで上式 (3)' に (3) を代入すれば、
となり、この右辺が径がrの時の表面の速度となる。この式は球体内部にも適用でき、栗まんじゅう球内部のある点を通過する栗まんじゅうの速度は、中心からの距離 r に比例することになる。なお、これはほぼ7.7016×10-4・rである。
上の式 (3) および式 (3)' は、栗まんじゅう球の直径および膨張速度が15分ごとに倍増していくことを示す。圧縮を考慮しなければ、栗まんじゅう球の初期半径を2.88cmと仮定すると栗まんじゅうの膨張速度は分裂開始4時間45分後には新幹線「のぞみ号」の最高速度である時速270kmを越え、その30分後には音速に達する。相対論的な影響を一切考慮しなければ、11時間後には光速を突破する。
相対論の壁
表面速度が光速度よりも十分に遅い場合は上記の式のままで良い。しかし、栗まんじゅう球のサイズが一定以上になるとそうではなくなり、ローレンツ収縮が無視できない存在となる。
相対論では光速度を超える現象は禁止されているが、栗まんじゅう球においては次のように適用される。
栗まんじゅう球において、個々の栗まんじゅうを加速するのは、内側の栗まんじゅうの膨張力である。
光速度に近づいた栗まんじゅうは、ローレンツ短縮分だけ薄くなる(見かけ上)。
薄くなった栗まんじゅうは、その分だけ膨張力が減る。また、時間経過が遅くなり(見かけ上)、分裂速度も下がる。
上記のように、光速度に近づくほど膨張力も0に近づくので、球体の膨張を加速させることができなくなる。仮に光速度に達してしまうと(相対論上は禁止されているが)膨張力が完全に0になり、内側から押されることしかできなくなる。
結果、栗まんじゅう球の膨張速度は光速度に収束してゆく。 l=見かけ上の長さ l0=相対速度が0の時の長さ t=見かけ上の時間の速さ t0=相対速度が0の時の時間の速さ v=見かけ上の移動速度 c=光速度
※誰か、もう一歩踏み込んだ計算をお願いします
このモデルは、ほぼ光速度で膨張し続ける栗まんじゅう球という、あまり想像したくないシロモノを描き出している。なにしろこの栗まんじゅう球は衝突直前まで目に見えない(観測できない)のである。また衝撃光(オプティックブーム)の存在も忘れてはならない。まったくもって想像したくないシロモノである。
栗まんじゅうを破壊する要因
一方で、栗まんじゅう自体が破壊されてしまう可能性についても考慮すべきである。これは、破壊によって分裂が停止する説にとって重要である。
自重での崩壊
増殖が続くうちに自重で「栗まんじゅう球」の中心部が破壊され、やがて一つの天体を形成して増殖が止まる可能性がある。ただし、外縁部に近づくほど高速で移動している栗まんじゅうの一部が栗まんじゅう球の脱出速度をこえる可能性があり、自重での崩壊を検討することを難しくしている。
崩壊が一定以上進めば恒星が生まれ、さらにはブラックホール化するとも考えられる。ただし、恒星誕生時に起きるさまざまな現象により残った栗まんじゅうが破壊されたり吹き飛ばされる可能性もあり、ブラックホールまで行けないのではないか、とする意見もある。
検証1 - 脱出速度との関係
栗まんじゅう球の表面からの脱出速度 V は
で求められる。
ここで栗まんじゅう球の比重を1.0×103kg/m3と仮定する。ある瞬間の径R(m)に対しての栗まんじゅう球の質量は
(kg)
であり、r=Rであるから、
である。Gは6.673×10-11m3s-2kg-1だから、V=7.477×10-4×R(m/s) となる。
一方で表面速度は7.7016×10-4×R(m/s) であるから、表面の栗まんじゅうは常に脱出速度を上回っていることになる。ただし、栗まんじゅう球が散乱することはない。球の膨張は指数的に加速しており、表面の栗まんじゅうは常に内側の栗まんじゅうと接することになり、全体として球体を保ち続ける。
なお、栗まんじゅうの増殖が順調に進めば良いが、圧力による破壊が中央部から始まり、膨張速度が徐々に減少した場合、表面の栗まんじゅうも脱出速度を超えることができない可能性がある(脱出速度は密度の平方根に比例することを申し添えておく)。
検証2 - 重力による栗まんじゅうの破壊
栗まんじゅう球の膨張速度は別として、球の径がどのくらいになれば全ての栗まんじゅうが破壊され、膨張が止まるのであろうか。
栗まんじゅうがどの程度の加速度を受けると破壊されるかが明確ではないが、試しに1リットル入りペットボトル(栗まんじゅうの10倍の重さ)を載せてみると簡単に潰れたため、とりあえず表面の重力が10G(地球の重力の10倍)に達すると破壊されると仮定する。
ある天体の表面での重力加速度 g は密度と半径に比例する。すなわち、重力が10Gになるのは
密度が地球と同程度 (5.5×103kg/m3) ならば、地球の径の10倍。
密度が1.0×103kg/m3なら、地球の径の約55倍
になる。栗まんじゅう球がこの径に達すると、全ての栗まんじゅうが破壊されて増殖が停止する。余談だが、2.の半径はほぼ地球と月の距離と同じである。
1.の質量は地球の1,000倍となるが、恒星化するには質量が足りない。もし分裂が順調に進んでいれば、8時間後にこの径に到達することになるが、内部では崩壊が始まっているため、実際にはもっと長い時間がかかると考えられる。
2.の質量は地球の30,000倍の質量であり、恒星化するために最低限の質量(太陽の1/10以上)を持つことになるが、こちらの数字はあまり現実的ではない。分裂が順調に進めば8時間半後にこの径に到達する。
他の天体への衝突
地球はもちろん、太陽の引力や熱によって、十分に分裂する前に全ての栗まんじゅうが破壊されてしまうのではないか、とする意見がある。
加速度の問題
栗まんじゅうが分裂する際、その栗まんじゅうはどのように加速するのであろうか。全体に等しい加速度がかかるのであれば、どれほど強い加速度がかかっても問題は無いが、一点から押されるような加速の場合、栗まんじゅうが破壊される恐れがある。このため、外縁部では増殖が進まないのではないか、とする意見がある。
衝突による破壊
栗まんじゅうは、初期のうちは一つにまとまることなく、宇宙空間で散乱しながら分裂を続けるだろう。しかし増殖が進むにつれ、栗まんじゅうの間にある空間は埋め尽くされ、互いに衝突を始めるようになる。こうした衝突で栗まんじゅうが破壊され、単純な倍々では増殖しないのではないか、とする意見がある。
太陽光など
そもそも、宇宙空間には栗まんじゅうを破壊する要素が無数に存在する。真空状態により栗まんじゅうの水分が蒸発し、大気を通らない太陽光が栗まんじゅうをこんがりと焼き上げてしまうだろう。ぼろぼろになった栗まんじゅうがまだ分裂できるのかどうか、疑問な点が多い。
また、打ち上げ時に気圧を急激に下げれば内部の空気や水蒸気が逃げるのが間に合わず、栗まんじゅうが破裂してしまうのではないか、とする意見もある。