【ひぐらし】雛見沢に ..
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62:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/02/18 11:06:48 ET9QUkdk
「……ん、ここは……?」
 俺は意識を取り戻し、薄っすらと目を開けた。視界が白くぼやけてまだよく見えない。
 机に寝かされているのだろうか。背中がひんやりと心地良い。
 視線の先に魅音が映った。魅音が俺を微妙な表情で見下ろしている。
「……魅音?」
「ルル、あんた……」
 魅音は手を口元に当て、呆然とこちらを窺っている。
「なんだ、俺がどうかし……ん?」
 何気なく両の手を見ると、自分が手袋を着用している現状に気がつく。
 白い手袋。よく見ると全体的に服装が白い気がする、が……ま、まさか。
 俺は自分自身に降りかかった災いを思い出して青くなった。
「沙都子、それを貸せ……」
「あっ」
 机から起き上がると、近くにいた沙都子の持つ手鏡を強引に奪い取る。
「ぐっ……!」
 鏡を見て俺はさらに青くなった。
 そこには口に出すのもおぞましい姿の俺がいたのだ。
 

63:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/02/18 11:08:16 ET9QUkdk

 ナナリーを除く女性陣は何が良いのか、俺を眺めて感嘆の息を漏らしている。
「ルル、あんたすごいよ……」
「はぅぅ、ルルーシュくん本当に綺麗なんだよ、だよ」
「ですわね。女装姿をからかってやろうと思ってたのでございますが、これは……」
「レナがお持ち帰りを躊躇するほど綺麗なのですよ」
 褒められているのだろうが全然嬉しくない……。
「あのさ、ルル」
「……なんだ。先に言っておくが慰めは不要だぞ」
 慰めの言葉などかけられたら、自分が余計惨めに思えてくるからな。
「いや、そうじゃなくてさ。あんた、その花嫁姿で来春のミス雛見沢コンテスト出なよ……私ら差し置いて絶対優勝するから」
「冗談言うな……」
「いや本気なんだけど」
「尚更止めてくれ……」
 来春は強制的に出場させられるのだろうか……。ありえるから怖い。
「ふふ、たしかにお兄様なら優勝出来そうですね」
 と罰ゲームのメンズスーツを身に纏ったナナリー。
「く、お前までそんなことを……」
 兄の威厳もあったものではない。
 俺はすべての元凶である魅音をキッと睨みつけた。
「魅音、そろそろ良いだろう。俺は罰ゲームとして十分な屈辱を受けた。もう着替えさせてもらう」
「へぇ、敗者が勝手に罰ゲームの期間を決めちゃうんだ?」
「貴様! これ以上何をさせるつもりだ?!」
 魅音が嫌らしい笑みを浮かべながら言った。
「帰宅するまでその格好でいてもらう」
「な、何だと?! この格好で家まで? 馬鹿を言うな!」
「ふーん、そっかぁ」
 魅音は俺がそういう反応を示すことが分かっていたようで、腹立たしいことに馬鹿にした表情で続けた。
「やっぱりブリタニアの坊ちゃんには難しかったね。はいはい、もう止めていいよ。でも残念だなあ、ルルはもっと骨のあるやつだと思ってたんだけどなあ?」
「ぐっ、貴様…………いいだろう! やってやる、やってやるぞ!」
「おーっ、さすがルル! おじさんの眼はやはり正しかったよ、くっくっく!」
 魅音が尚嫌らしい笑みを浮べたまま、俺に拍手で賛辞を送ってくる。
 馬鹿にされたままは癪だったのでつい売り言葉に買い言葉で乗ってしまったが、これで本当によかったんだろうか……。


64:名無しさん@お腹いっぱい。
09/02/19 00:27:31 ZYtDo5Kp
面白いけどwww話進まんwww

65:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/02/19 01:41:13 IaqfPSy2
>>64
すまんw俺も実は書いてて苦痛だったw
けど逆パートすっ飛ばして即惨劇だとひぐらしらしくないと思ってな。
もうすぐ非日常入るんで我慢してくれると嬉しい

66:名無しさん@お腹いっぱい。
09/02/19 17:00:13 ZYtDo5Kp
>>65
wktk

67:名無しさん@お腹いっぱい。
09/02/22 23:09:16 V+TEfC3w
gj!
おもしろかった

68:名無しさん@お腹いっぱい。
09/02/25 16:15:33 994P94yb
なんという良スレ・・・スレタイをみただけでワクワクしてしまった・・・

69:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/02/26 13:33:50 pRHv031H
 罰ゲーム衣装のままの下校。
 俺は学校を出るとナナリーをレナに任せて、村人に見られないようレナや魅音の影に隠れながら、夕暮れ刻の帰り道を歩いた。
 木陰が人に見え、びくついた所を魅音に笑われる。屈辱だ。
 たしかに自分でも格好が悪いと思うが、魅音は少し人の気持ちとかを考えたほうがいい。さもないと、いずれ些細な事象から惨劇へと発展しかねない。
 水車小屋で魅音と別れ、やっと冷やかす人間がいなくなりせいせいする。
 しばらくしてレナとの分かれ道に差し掛かる。ここまで来れば家まで後半分といった所だ。
 レナは去り際に『魅ぃちゃんのことを許してやってね』と申し訳なさそうに言っていた。レナがそんな顔をする必要はないのに……。
 レナという少女は本当に良いやつだ。俺はすっかり彼女に毒気を抜かれてしまったようだ。
 ……そうだな、魅音だって同じリスクを背負っていた。引き返すチャンスも与えてくれた。だから恨むのはお門違いだよな。
 ナナリーと一緒に軽く手を振って笑顔でレナを見送る。
 騒がしい仲間がいなくなり、ナナリーと二人きりとなった。
「お兄様、今日は楽しかったですね」
「そうだな。たまには良いかもしれない……が、もうこの衣装は勘弁願いたいな」
「ふふ、私の目が見えるようになったらまた着てくださいね」
「それは駄目だ。せっかく治ったナナリーの目が潰れてしまう」
「そんなことないですよ、ふふふ」
 ナナリーは口元に手を当てて、さもおかしそうに笑った。
「おいおい、笑いすぎだ」
「だって、お兄様が。くすくす」
 ころころと笑うナナリーに感化されて俺も笑ってしまう。
 こんなに日常がいつまでも続くと良いのに……俺は切にそう思った。
 笑いが一段落着いた頃、ようやく雛見沢の我が家に到着した。


70:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/02/26 13:35:43 pRHv031H

 誰にも見られずに家に到着できたことで気が緩み、咲世子の存在をすっかり失念していた。玄関に入った所で彼女と遭遇、痴態を見られてしまった。こんなケアレスミスをするとは今日の俺はどうかしている。
 だがもう階段を上がりきり、俺の部屋の前。これ以上の恥の上塗りはないはずだ。
 そういえば、なぜか咲世子がしつこく俺を一階に引き止めようとしていたな。鼻血を出していたが大丈夫だろうか。
「……いや。人の心配よりまずは自分だな」
 自室の引き戸を開ける。
 ふはは、これでこの衣装ともおさらばというものだ。
「おい、遅かったなルルーシュ」
「なっ……C.C.(シーツー)?!」
 誰もいないはずの扉の向こうにはC.C.の姿があった。想定外の事態に目が点になる。
「お、お前がどうしてここにいるっ?!」
「お前こそどうしたんだ? その格好は」
 C.C.はこれ見よがしにあざ笑う。
 やつは俺の布団を勝手に敷き、その上に寝転がりながらピザを食べていた。

71:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/02/26 13:36:52 pRHv031H
支援サンクス。
不定期だけど生きてます。

72:名無しさん@お腹いっぱい。
09/02/26 17:50:24 hMmF4LyX
C.C.の登場でワクワクしっぱなしですwww

73:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/04 19:13:18 tQekrBYZ
続き楽しみ

74:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/05 19:32:09 1pRKYEax
>>72>>73
支援サンクス。
お前らがいる限り書き続けるぜ


75:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/05 19:33:03 1pRKYEax



 C.C.の我が物顔でくつろいでいる様に腹が立って仕方がない。
「そんなことはどうでもいい、答えろ!」
 俺はウィッグと手袋を外し、怒りに任せてC.C.に向かって投げつけた。ところがやつはだらけきった姿勢にも関わらず華麗に避けた。
「お前からここの暮らしを耳にして少し興味がわいた、じゃ理由としては薄いか? ……んぐんぐ」
 とピザを一ピース飲み込みながらやつは答える。その態度にさらに怒りが増大した。
「そういうことではない!」
「おいおい、いいのか? 日本家屋は音を良く通すのだがな」
「……っ!」
 階下にナナリーたちがいることを思い出し、声量を抑えて言った。
「お前にはゼロの影武者を任せていたはずだ」
「分かってるさ、私も馬鹿じゃない。代理を立てておいたから安心しろ」
「そうか、ならいい。…………いや待て。一体誰に代役を頼んだ?」
「玉城だ」
「はぁっ?! 玉城だと?! よりにもよって?! 今すぐ東京租界へ帰れ、この馬鹿!」
 玉城とはレジスタンス時代のカレンの仲間だ。カレンと共に黒の騎士団に入団してきたが、リヴァルを100倍に濃縮したようなお調子者でよく作戦でへまをして騎士団全体に迷惑をかける。まったくもって厄介この上ない人間だ。
 あいつにゼロをやらせようものなら、最速三日で黒の騎士団は解散を余儀なくされるに違いない。
「なぜだ? 玉城なら面白がってやってくれているぞ」
 C.C.は不思議そうに首を傾げる。コイツ本当に分かってないぞ……。
「面白がってやっているからまずいんだよ!」
「ルルーシュ、落ち着け。また声が大きくなっているぞ」
「……っ! とにかくすぐに租界に戻ってくれ」
「嫌だと言ったら?」
「お前……!」
 C.C.は俺をからかい満足したのか、ケタケタと笑いながら布団から出た。
「しょうがないな。まったく、お前は私がいないと何も出来ないのだな」
「ぐっ……」
 俺は今にも堪忍袋の尾が切れそうだったがどうにか我慢した。


76:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/05 19:33:47 1pRKYEax

「さて、では従順な私は素直に租界に戻るとしよう。ここは居心地は良いのだがピザの調達が難しいんだ。じゃあな」
「ああ、早く行ってしまえ!」
 C.C.はわざと俺の神経を逆撫でするような言葉を残し、部屋を出て行く。なんて女だ。
「そうだ、ルルーシュ」
 そして罰ゲーム衣装を脱ぎ捨て私服に着替え終えた頃、C.C.が部屋に舞い戻ってきた。何事もなかったように戻って来れるコイツの無神経さが分からない。
「何か忘れ物か、C.C.?」
「ああ、お前に一つ伝えたいことがあってな」
「そうか。だが俺はもう大分腸が煮えくり返っているのだが?」
「まあそう言うな。お前にとって有益な情報だ」
「言ってみろ」
 これでまた冗談でも口にしようものなら、俺はコイツを殴ってしまうかもしれない。
 C.C.は急に真顔になって押し黙った。
「どうした?」
 俺が先を促すと、しばらくしてC.C.は重い口を開いた。
「……この村に私と同等の存在が居る」
「それはどういうことだ?」
「私と同じく他者にギアスを発現させる存在が居ると言ったほうがいいだろうか」
 そんな大事なことを今頃になってこいつは……。
「なぜ黙っていた?」
「そう睨むな。黙っていたわけじゃない。ただ、最近知り得た情報なだけだ」
 だろうな。コイツは俺の共犯者だ。俺に害のある隠し事などするはずがないし、する必要がない。
「そうか、それで?」
「そいつの名はO.O.(オーツー)。別段そいつ自体が危険というわけではないが、ギアス能力者のほうは分からない」
「つまり、ギアス能力者が敵として現れるかもしれないから気をつけろということか」
「そういうことだ。話が早くて助かる」
「分かった、十分気をつけよう」
「ああ、簡単に殺されてくれるなよ。お前に死んでもらっては私が困るからな」
 そう言うと今度こそ本当にC.C.は帰っていった。
「この村にギアス能力者か……」
 自分以外の能力者は今のところマオしか出会っていない。最悪のケースしかないというのはつらいな。
 出会い頭にギアス戦になるという可能性も十分考えておくべきだろう。


77:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/11 20:06:31 m80vU4Dy
O2って、オヤシロ様=羽入のことかな

78:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/11 23:51:47 qTS0RgHO
OOishiだろ

79:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/12 00:48:35 2aUP6XBR
黒幕だった鷹野の場合もありえる。
そして、支援age

80:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/13 18:49:49 Xmy/hGA+
>>77>>78>>79
レスありがとう。
だがギアスユーザーたちについてはノーコメントでw
大体予想がつくと思うけどな

ちょっと続きは待ってくれ。
書けてはいるんだが、後々の展開に齟齬が出ないように考え中なんだ。

81:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/13 19:21:50 x814MRKq
頑張れ!応援してる。
なんか結構いい感じだから期待。

82:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/16 21:39:50 wEFLM2pr
【5】

 朝、小鳥のさえずりを聞きながら目が覚めた。
 頭がずっしりと重く感じる。起き上がろうとすると身体もだるい。
 昨日やけにミスが多いと思っていたら、風邪をひいていたようだ。
 日本では夏風邪をひくのは馬鹿だと言われているらしい。次に学校に行った時を思うと気が重い。またそれをネタに魅音にからかわれるんだろうな。
 自分で言うのもなんだが俺は体があまり強くない。スザクまでとはいかぬまでも、少しは身体を鍛えたいとは思っているのだが……いつも長続きしないのは何故だ?
 無論俺がヘタレだからという回答は却下だ。俺はそんな軟弱ではない。
「医者に行くべきか……だが面倒だな……」
 しかしこのまま寝ていても、俺の治癒能力では完全回復までに時間がかかりそうだ。やはり素直に医者に行って薬をもらって来るとしよう。
 雛見沢には、租界から離れたゲットー地域にも関わらず高度な医療施設があったはずだ。確か入江診療所。場所は……大丈夫。雛見沢の地形はすでに頭に入っている。
 隣の部屋に行き、ナナリーに声をかけてから出かけることにした。
「ナナリー、すまない。どうやら風邪を引いてしまったようだ」
「お兄様。まあ、大丈夫なのですか?」
「ああ、風邪気味なだけだよ。少し休めば平気なはずだ」
 ナナリーに対して見栄を張る自分がおかしくて苦笑する。
「そういう訳だから今日俺は大事をとって学校を休むが、お前はどうする?」
「では私も休みます。私だけ学校に行って楽しんではお兄様に悪いですから」
「はは、そんな気遣いは不要だよ。行って来い、咲世子さんに送ってもらうよう頼んでおこう」
「そうですか。では安静にしていてくださいね」
「ああ、そうしよう」
 ナナリーの部屋を出て階下へ向かう。キッチンで朝食を作っている咲世子に声をかけて家を出た。 


83:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/16 21:42:18 wEFLM2pr

 入江診療所に到着する頃には、俺の病状は著しく悪化していた。
 だいぶ息が荒くなっている。こんなことなら無理せず咲世子に付き添ってもらえばよかったかもしれない。自分の軟な体が憎い。
 扉を倒れ込むようにして押し開け、診療所内に入る。
 内部は租界のと比べるとそんなに大きくはなかったが、ゲットーにある医療施設としては立派過ぎるくらい清潔そうだった。
 日本人相手にどこで利益を出しているのだろうか、とどうでもいいことを不思議に思ってしまう。風邪のせいだな。
 待合室で自分の番を待っていると、自分の名が呼ばれた。席を立ち、診察室に入る。室内で待っていた医者は入江だった。
「お久しぶりですね。今日はどうされました、ランペルージさん?」
 入江はうちの学校の保険医も兼任しているのでお互いに良く知っていたが、世間話などしたくはないし、今は無駄な動作を取れる健康状態ではないので質問に応えるのみに抑えることにする。
「はい。熱があって体がだるいのですが、風邪でしょうか」
「そうですねー。とりあえず脈を取りましょうか」
「はい」
 手を入江に差し出す。
「うーん、すべすべのお肌ですねー……ハアハア」
 こういう変なところがなければいかにも好青年なのに惜しい男だ。
「ちょっと、先生。ちゃんと診断してください」
「そんな、心外ですね。ちゃんとやっています。では次はこちらの検査着に着替えてください」
「もろメイド服じゃないですか」
「あれ、ばれちゃいました?」
「時間の無駄しました。失礼します」
 席を立とうとすると慌てて入江が制した。
「わ、待ってください、冗談ですよ! 診察は真面目にやってますから!」
「ならいいのですが、今度ふざけたら本当に帰らせてもらいますから」
「分かりました、分かりました。もう言いませんよ」
 入江が苦笑した。苦笑したいのはこっちのほうだ。
 触診をされた後、俺は入江から体温計を受け取り熱を測った。
「で、診察の結果はどうですか」
「んー、風邪ですね。薬出しておきますので食後30分に飲んで、それからがっつり寝てください」
「分かりました。では失礼します」
 無駄にとどまるとロクなことがなさそうなので、俺は素早く席を立って診察室を出た。


84:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/19 23:06:45 QOylmek2
ルルーシュだけじゃなくて生徒会メンバー全員を雛見沢に移住させたいな
シャーリーは魅音と詩音と恋バナで仲良くなって、
レナはなんかスザクとアーサーと仲良くなりそう。


85:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/23 13:01:26 5DZMrafj
なんか東京とキョウトがつながってそうですね

86:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/27 10:07:44 4f3IUrwo
期待
でもいつもの事ながら一度の投下量が少な過ぎるんだぜ・・・

87:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/27 18:44:10 xOA6A1Rh
投稿ペースは読み手にあわせているつもりだったんだが。
自分の都合ももちろんあるが、あまり一回の分量増やすと読む気なくすと思ってな。
まだ書き溜めてあるから一気に投稿することも出来るが、物語が破綻する可能性が若干増える。
それでも良いんだったら投稿量増やすよ。



88:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/27 19:55:58 4f3IUrwo
>>87
書き手の投下しやすいペースで良いとおもったんだけど。
流石に2レスはどうかな・・・
長くても良いと思うぜ。それだけの面白さが有るんだからさ。


89:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/31 10:55:40 62zYNVxF

 会計を終えて帰ろうとしていると、不意に看護婦から声をかけられた。
「あら、あなた。ルルーシュ・ランペルージ君?」
「はい? そうですが何か」
「やっぱり貴方が噂のブリタニアの学生さんなのね」
「ええ、まあ……。あなたは?」
「私は鷹野三四よ。ここで働いているの、よろしくね」
「僕に何か御用ですか?」
「いいえ、特に用はないのだけど。雛見沢にブリタニアの兄弟が住んでるって話を聞いてたからどんな酔狂な子かなと気になってただけよ、くすくす」
 三四はおかしそうに笑う。俺は少しむっとした。
 この、人を見下すような態度……見ていて腹が立つ。もっとも十中八九同属嫌悪だろうが。
 もちろん表情には出さないようにする。
 ふっ、揺さぶって詮索するつもりだろうがさせるものか。知らない人間からそういった疑問を投げかけられるのは想定済みだ。
「そうですか。でも別に酔狂ってわけじゃないですよ。日本の自然が好きなブリタニア人はたくさんいます。古手神社から見下ろす雛見沢の景色は本当に綺麗ですよね」
「ふーん、そうなの」
 三四がつまらなそうに相槌を打つ。あまり俺の話を信じていないようだ。
 三四は俺から真実を引き出すことが無理そうだと理解し、信じた素振りをした。
「あの、まだ何か?」
「いいえ、引き止めた悪かったわね」
 それでいい。気が済んだのなら黙って質問を終えろ。
「じゃあ失礼します」
「ちょっと待って。でもおかしくない?」
 三四に引き止められる。何がおかしいというのだ。
「なにが、ですか?」
「自然が好きなだけなら、他のブリタニア人のように観光で来れば良いのに、貴方たちはどうしてここに住む気になったのかしら?」
 こいつ……。俺たちに何か知られたくない素性があることに薄々感づいているのか……?
「僕には日本人の友達がいましてね。ゲットーに住むのはそんな抵抗はないんです。それに、ここは他のゲットーと違って住みやすいですしね」
 咄嗟に切り替えす。だがこれ以上はギアスを使う必要性が出てくる。無駄には使いたくはない、早く消えてくれ。
 三四が俺の言うことに同意した。
「そうね。ここは多分、君の言う通り租界の次に暮らしやすいんじゃないかしら。けれど、本当にここは"住みやすい所"なのかしらね、くすくす」
「……それはどういうことですか」
「くすくすくすくす!」
 三四の小馬鹿にするような笑い声。それは先ほどの同属嫌悪から来るものとはまた違った不快感があり、言いようもない禍々しさと邪悪さを合わせ持っていた。
「……一体、何だと言うんです?」
 俺が再び訊ねると三四はゆっくりと口を開いた。
「雛見沢連続怪死事件。聞いたことはなぁい?」

 例えようのない不安が俺をねっとりと包み込んだ。


90:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/31 10:57:36 62zYNVxF
 診療所から帰宅すると、家の電話からスザクにいの一番で電話をかけた。
「もしもし?」
 スザクの声がする。携帯にかけたのだから本人が出るのは当然だが。
「もしもし、俺だ」
「ルルーシュ? どうしたんだい?」
「どうしたじゃない、この馬鹿」 
 俺は鷹野から聞かされた話をスザクに聞かせる。

 雛見沢で毎年起こる凄惨な殺人事件―

 毎年綿流しの祭の日に起こり、一人が死に一人が消える謎―

 偶然だと噂されながら、けれど確実に起きた怪奇―

 雛見沢連続怪死事件。通称"オヤシロ様の祟り"のことを。

 スザクは俺が話すのを静かに聴いていた。俺はスザクが真剣に聞いているものと判断し、先を続ける。
「すでに四年連続で発生しているらしい。そして今年で五年目。後一週間で綿流しの祭。その日誰かが謎の死を遂げ、誰かが消失する可能性がある。お前はそれを知らなかったのか?」
 知らないだろう。知っていたら、スザクはナナリーをこんな危険な場所に近づけさせないはずだ。
 だがスザクの返答は俺が思っていたのとは違うものだった。
「知っていたよ、ルルーシュ」
「なんだと?! どういうつもりだスザク!」
 俺は思わず激昂する。一番信頼していた友に裏切られたんだ。腹も立つというものだ。
 スザクが慌てて弁明した。
「ルルーシュ、少し落ち着いて僕の話を聞いてくれ。確かに僕は連続怪死事件の噂を知っていながら、君たちをここに住むよう促した。けれど、それには理由があるんだ」
「どういうことだ。もったいぶらず話せ」
「君も気づいていると思うけど、連続怪死事件の被害者は少しずつ村の仇敵という関係から離れていき、動機が希薄になってきている。今年は余所者という理由だけで殺されてもおかしくないんだ」
「お前、ふざけているのか? だったら日本人でもない余所者の俺とナナリーが一番危ないということになるが、分かって言っているんだろうな?」
「ああ、分かっているよ。けどそれは言い返せば、雛見沢がブリタニア人の近づけない絶対の聖域となることを意味する。事実、ブリタニアの警察官は雛見沢にただ一人も巡回には来ない」
 そういえばそうだ。雛見沢では一度もブリタニア人やナイトポリスを見たことがない。
 こんな辺境に警察を巡回させる暇はないのだろうと思っていたのだが、そういう事情も隠されていたのか。
 確かにブリタニア人が恐れて近づかない場所ならば、俺たちの素性もばれにくい。
「連続怪死事件について話さなかったのは悪かったと思ってるよ。けれど、それは君たちに余計な心配をかけないためだったんだ」
「お前の言い分は分かった。だが、今年の祟りで俺たちが被害に遭う可能性は著しく高い。もしナナリーが危険な目にあったらどう責任を取るつもりだったんだ」
「その場合、今年の祟りは起こらない」
「どういうことだ?」
「僕は秘密裏に君たちを護衛するつもりでいたんだ」


91:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/31 10:58:52 62zYNVxF

 スザクとの電話を終えると汗を拭き取りながら自室に戻った。スザクの護衛がつくということが分かっても、どうしても不安だけは拭えなかった。 
 一人が謎の死を遂げ、一人が消えるオヤシロ様の祟り。被害者の数は常に偶数。最小の偶数は2。
 何度考えようと、今年の被害者は日本人ですらない他所者の―……俺とナナリーの可能性が高く思える。
「……馬鹿な、そんな理由で祟られてたまるか」
 どろりとまとわりつくような疑念を吹き飛ばそうと頭を思い切り振るが、それが引き金となって鈍重な痛みが頭を支配する。
 まずは体調を万全にしよう。それが最優先。
 洗面台に行って薬を飲んだ。飲んですぐ効くはずはないが、少し身体が楽になったような気がする。
 プラシーボ効果様々というやつか。人間の身体というものはつくづく便利に出来ているものだ。どうせならこの勢いで明日には完治したいものだ。鏡の前で一人苦笑した。
 スザクを信じないわけではないが、今日ぐっすりと寝て風邪が治ったなら、明日は怪死事件について調べてみよう。
 ギアス能力者、コーネリア、日本解放戦線……問題は山済みだが、今は後回しにするしかないだろう。
 俺は着替えると布団に入って目を瞑った。

 ―タイムリミット;オヤシロ様の祟り発生まで後7日。


92:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/31 11:00:59 62zYNVxF
コメありがとう。
要望があったんで今回から三レスに増やすよ。
でもこれ以上の増加は推敲の関係で無理だ。勘弁してくれ


93:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/03/31 11:04:17 62zYNVxF
>ブリタニアの兄弟
早々に誤字発見すまん。兄妹な

94:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/31 15:29:27 QCToJsU/
どうでも良いけど、ひぐらしの原作的には ○オヤシロさま ×オヤシロ様
まあ、原作でも一箇所誤字かなんかで漢字になってたけど、基本的に人名+さまの「さま」は平仮名になってる。

期待してるからこそちょっとだけ気になったこと言ってみた。
楽しみにしてるから投下頑張って。

95:名無しさん@お腹いっぱい。
09/03/31 22:16:06 Ah1WgAZW
wktkが止まらねえぜ・・・

96:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/02 15:42:32 5yOcjXTq
保守

97:富竹 ◆gqRrL0OhYE
09/04/02 17:59:42 bf6pJxjR
いい感じですね。保守しますよ!

細かいんですが質問です。

ブリタニアの警官が来ないのは、本当に祟りに遭いたくないだけなのですか?
もし、裏があるなら、すごいと思うのですが・・・・

98:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/02 18:12:26 Gp+534l0
>>97
そーゆー質問は場合によってはネタバレになるかもなんだぜ


99:富竹 ◆gqRrL0OhYE
09/04/03 00:58:49 TAKBmCa0
>>98
確かに・・・・・すんません
ついでに

私のスレで短編集的なもの作ったので・・スレのほうでコメントいただければ
URLリンク(changi.2ch.net)

100:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/03 23:07:02 V4PsRLWE
>>99
宣伝は荒れる元になると思うよ

誰かに広めたい!ってのは分かるんだが・・・

101:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/05 15:45:15 oKvAi9N4
米サンクス。まずは米返しから。

>オヤシロ様
あまり気にしてなかった。一応これ以降のは修正しておいた。
また同じようなことがあるかも。
>ブリタニアの警官
勘ぐらせて悪いが、別に裏とかは考えていない。
スザクがなぜ危険な雛見沢にルルーシュを行かせたのか説明するための、ただの舞台装置だよ。
>宣伝
よく分からんが、クリックしても見れんな

次レスにうpするが、ちょっと展開が足早になってきたかもしれん。
すまん。




102:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/05 15:46:46 oKvAi9N4
【6】
 次の日になると俺の熱は下がり、風邪はすっかり治っていた。ところが、その代わりに今度はナナリーが風邪をひいてしまったようだ。
「大丈夫か?」
 ベッドに伏しているナナリーに訊ねる。手を握るととても熱かった。
「ええ……平気です。魅音さんたちと遊ぶのが楽しくて、少しはしゃぎすぎたせいのかもしれませんね」
「……俺の風邪が感染ったんだな。すまない」
 ナナリーは強がっているが、昨日の俺よりも体調が悪そうだ。今日はナナリーを医者に連れていって、その後に看病をするためにも学校を休むしかないだろう。
 俺がその旨を伝えると、ナナリーは首を横に振った。
「私は寝ていれば大丈夫ですから、お兄様は学校に行かれてください」
「しかしナナリー」
「いいんです。私もいつまでも子供じゃないんですから……風邪くらいお兄様がいなくっても平気ですよ。……それに、お兄様は学校をよくおさぼりになるんですから、行く気がある日くらいはちゃんと学校に行ってくださいね☆」
「はは、お前も言うようになったな」
 これだけ減らず口が聞けるのなら俺がいなくても大丈夫そうだな。医者には咲世子に連れて行ってもらおう。
 怪死事件について調べるのにも、ナナリーがいないほうが都合がいいだろう。
「分かったよ、今日はしっかり休んでいるんだぞ。行って来る」
「はい。行ってらっしゃいませ、お兄様」
 ナナリーの部屋を出て階下に降りて朝食を取ると、咲世子にナナリーを任せて一人家を出た。


103:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/05 15:47:27 oKvAi9N4

 放課後になって、部活の準備をしようとしている皆に魅音が謝った。
「ごっめーん! おじさん、今日はバイトだから部活できないんだった!」
「そうなの? でも用事があるなら仕方ないよね、よね」
「昨日の夜、急に入れられちゃってさー! 本当ごめん、今日はおじさん抜きでやってくれて良いからさ!」
「そう言われましても、ナナリーさんも欠席ですし、盛り上がりに欠けますわよ」
「となれば、今日の部活はなしにするのがいいかもなのです」
「そうだな、俺も今日は調べたいことがあるしな」
「「調べたいこと?」」
 他の部活メンバー全員が一斉に聞き返す。俺を除く皆が顔を見合わせて苦笑いをした。
 そうだ、こいつらに話を聞いておくのも良いだろう。大した情報は期待していないが何か怪死事件の謎の糸口になるかもしれない。
「なぁお前ら。この雛見沢で殺人事件があったって話を聞いたことはないか?」
 俺は何気なく、世間話をするつもりで質問したつもりだった。
 それなのに皆は俺の目を射抜くような冷たい視線でこう一蹴した。
「「知らない」」
「え……。だが、そういう事件があったんじゃないのか……?」
「「なかった」」
 雛見沢では有名なはずなのに、実際に起こったはずなのに……ないと言い張る皆が不気味だった。
「そ、そうだな……。この平和な村に事件なんか起きないよな……」
 俺はもう反論する気力をなくし、ただ皆に合わせるように言葉を紡ぐ。
「「もう帰ろう」」
 皆は帰りの仕度を整えると、俺を置いて教室から出る。静寂が教室を支配した。
 外から聞こえるひぐらしの鳴く声が一際大きく聞こえていた。
「ルルーシュくん、帰らないの?」
「……え?」
「一緒に帰ろ! はぅ!」
 教室のドアからレナの顔が覗く。
 いつものレナだ。俺はほっと胸を撫で下ろした。
 先ほどのレナや皆の冷たい視線は気のせいだったんじゃないか? 今の彼女を見ていると、心底そう思わされる。
「ルルーシュくん、どうしたの?」
 レナが不思議そうに首を傾げた。
「あ、ああ。なんでもないよ」
「そう、じゃあレナと一緒に帰ろ?」
「そうだな」
 荷物を手に取り、レナに駆け寄る。
 やっぱり気のせいだろう。このレナが人にあんな冷たい視線を投げかけるわけがない。
 だが…………不愉快な疑念だけは、纏わりつくようにしつこく俺を放さなかった。

 事件なんてなかったと言う魅音たち、事件の存在を肯定する鷹野とスザク……俺はどちらを信じたら良いのだろう……?
 この時から、俺の危機感と好奇心はフルスロットルで加速し始めた。


104:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/05 15:48:22 oKvAi9N4
 
「ねえねえ、ルルーシュくん」
「なんだ、レナ?」
「ちょっと寄り道して良いかな、かな?」
「あ、ああ。別に構わないがどこに行くつもりなんだ?」
「あはは、レナの秘密の場所〜☆ ルルーシュくんを特別に連れてってあげるんだよ、だよ」
「秘密の場所?」
「いいから着いてきて、すぐ近くだから!」
「あ、おい!」
 レナに強引に手を引かれ連れて行かれた場所はサクラダイト発掘現場跡地だった。
 ここは……最初の惨劇が起きた場所ではないのか……?
 スコップやつるはしでのリンチ殺人。その後遺体をバラバラにするという凄惨な事件……被害者はサクラダイト発掘会社の現場監督。まだ遺体の一部、右腕で見つかっていないらしい。
「こんな場所に連れてきてどうするつもりだ?」
「はぅ? どうもしないんだよ」
「嘘をつくな。こんな人気のないところに来る理由など何もないはずだ」
「あははは。ルルーシュくんは何を怖がっているのかな、かな?」
 レナは感情の篭らない顔で、声だけで哂った。
 気のせいじゃ、なかった…………。
 教室でのあの冷たい視線は決して勘違いじゃなかったのだ…………。
「お前こそ、何を隠している!」
「あはははは、変なルルーシュくん。レナは何も隠してなんかないんだよ、だよ。そんなことより一緒に宝探ししようよ、楽しいよ? ね?」
「うるさい!」
「きゃっ!」
 気づけば、俺は近寄ってくるレナの頬を打っていた。辺りに乾いた音が響き、それからひぐらしの声が再び聞こえ出した。

105:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/05 15:49:05 oKvAi9N4

 レナは尻餅をついたまま、頬に手を添えてきょとんとしていた。
 俺は正気に戻り、自分の過ちを詫びた。
「すまないレナ! 大丈夫か?!」
「う、うん。平気だよ。びっくりしただけ」
「俺はなんてことを……本当にすまない」
「いいんだよ。それよりレナのほうこそごめんね。無理に誘ってちゃって。でもこれからは嫌ならそうだって断ってくれていいんだよ?」
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだ……。今のは、完全に俺が悪い……すまない、許して欲しい」
「うん、いいよぅ。そんなに深刻に思わなくても大丈夫。だってルルーシュくんはまだ病み上がりなんだもの、はぅ!」
 俺は忘れかけていたレナの優しさに心を打たれた。
 そうだな。俺はまだ完治しておらず、自分でも気づかぬうちに疲労していたのだろう。
 レナや皆が突然示し合わせるように異常を見せるなんてありえない。皆が連続怪死事件について知らないというなら本当にそうなのだろう。
 きっとそうだ。心を鎮めて客観的に見さえすれば、周りがおかしいと考えるより俺自身がおかしいというほうがよっぽどシンプルだと気づけるじゃないか。
「レナの言うとおりかもしれないな。どうかしてたよ、ありがとう。君の優しさに感謝する」
「うん、どういたしましてかな。今日はもう帰ろっか」
「あ、ああ……そうしてもらえるとありがたい」
「うん、帰ろ帰ろ! 宝探しはまた今度、はぅ〜☆」 
「悪いな、レナ。今度必ず埋め合わせをするよ」
「あはは、楽しみにしているね」
 どうやらレナとの友人関係を壊すことは免れたようだ。ほっと安堵のため息を漏らす。
 レナの横に付き、談笑を交えながら帰路に着いた。
 
 結局、連続怪死事件について今日の収穫はゼロ。改めてまた明日レナたちに話を聞くべきだろうか?
 いや、しばらく止めておこう……。今日の二の舞になるのが怖い。
 明日は租界の図書館を通じて情報を集めることにしよう。新聞など何か事件に関係のある情報媒体があるかもしれない。
 現在持っている情報は鷹野とスザクの話だけ。知略を巡らすにはあまりに少なすぎる。

 
 ―タイムリミット;オヤシロさまの祟りまで後6日。

106:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/05 17:01:16 eUfaYlrk
マジGJ 
PCつけると毎回きてます。
さすがルルーシュ、早々に疑心暗鬼から脱出。

107:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/05 20:12:15 Jfj5lcIF
GJです
ルルーシュの心理戦とか頭脳戦が見てみたいですね
どうでもいいですが、圭一と違ってバットの素振りでも始めたら筋肉痛になりそうw
次回も楽しみにしています


108:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/10 21:48:12 tSlhwH8U
ナナリーをイリーの診療所に連れていった帰りにはメイド服を着せられていることでしょう

109:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/11 10:43:02 VqZdkY94
つかルルーシュじゃ暴走して凶器振り回しても全然怖くないよなw

110:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/11 13:37:15 gxh+siKb
↑暴走したらギアス使いまくると思うぜ

111:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/12 10:11:57 vJpsZBnb
それは怖いな
つか、皇帝になった頃のギアス乱発を見るとさっさとギアスつかいまくってりゃもっと簡単にブリタニアをぶっ潰せてたんじゃねと思ふ

112:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/12 11:24:11 gomyBRcN
>>111
ルルーシュの最終目的はブリタニアを壊すことじゃないからじゃねーの?

113:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/12 14:01:08 QPqJYHDe
皇帝ルルーシュがギアスでブリタニア乗っ取れたのはギアスの存在知ってるシャルルが死んでたからだろう
てかアーニャにギアスかけたら中の人(マリアンヌ)にも効果あるんだろうか?

114:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/12 16:19:09 gI59z+rU
今度はプリズンブレイクの世界にルルーシュを閉じ込めてくれww

115:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/13 13:58:07 vvGccTXy
IDがVVとCCなので記念カキコ

116:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/13 20:33:48 f2ZjXBSx
米サンクス。
たくさんレスが付いて嬉しいんだが、忙しくて執筆がうまく行かないんだ。
来週にはなんとか提出するからちょっと待っていて欲しい。
最近は推敲してないから誤字とか多すぎ…OTL

117:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/13 22:43:06 q3P6r/M4
ガンガレー

118:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/18 18:32:12 kLqql3aB
【7】
 今日は学校を休むことにした。
 咲世子にナナリーの看病を任せて、俺は一人電車で租界に向かった。目指すはエリア11中央図書館だ。
 その建物の入ってすぐのところにあるPC端末を起動させた。
 カタカタカタ。キーボードをリズミカルに叩くものの、なかなか検索に引っかからない。
 雛見沢の事件は秘匿捜査対象になっているらしく、関係するページは数少ないようだ。
「――あった」
 ≪雛見沢連続怪死事件(※通称、オヤシロさまの祟り)捜査情報≫
 その項目をクリック。事件の詳細が表示される。
 サイトの造りから、どうやら公式的な情報サイトではなく個人の作ったもののようだ。
 今はとにかく情報が欲しい。多少誇張があっても構わない。
 トップから中に入ると、様々な情報が目に飛び込んできた。
 事件の日付。状況。犯人逮捕の有無。
 被害者の名前――。
「何、だと……?」
 そこには見覚えのある苗字が記されていた。
「北条……古手……。これは一体……?」
 たまたま知り合いの苗字と同じなだけなのか。いや、違う、そうじゃない。
 読み進めていくうちに被害者家族の話も出て来る。
 北条……沙都子。
 古手……梨花。
 被害者家族の名簿にクラスメートも名前を見つけた。
 二人が一緒に暮らしていると聞いたことはあったが、まさか共に両親を亡くしているとは思わなかった。
「そうか、なるほどな……」
 皆が怪死事件について知らないと言ったのは決して他人事じゃなかったから、そういうことか。
 仲間に対しての疑念が全て取り払われた気がした。思わず笑みがこぼれる。
 次に沙都子の叔母の撲殺事件のページに目が止まった。
 そうだ、この事件が一番不可解に感じる。
 警察は当初、沙都子の兄を容疑者としていたはずだ。そこに麻薬常習者の犯人が突然現れ、自白後犯人が死亡している……。まるでスケープゴートにされて口封じをされたかのように。
 そうなると北条悟史の失踪も不自然。電車に乗って家出をしたという説もあるが、沙都子を一人置いて逃げ出すだろうか?
 答えは否だ。兄が実の妹を置き去りにすることなど絶対にあるものか。
 それに俺はそんな噂レベルの説よりも全てを説明できる答えを知っている。
 スケープゴート。不自然な行動。そして突然の死。
 ギアス能力だ。
 仮に俺のように絶対遵守の力を使える能力者がいたなら? 人間の記憶を書き換える能力者がいたなら? 全ては可能だ。 
 つまり、連続怪死事件の犯人はギアス能力者……?
 クーラーがかかり涼しいはずの図書館内で嫌な汗が流れる。
 いや、そうと決まったわけではない。まだ情報が絶対的に足りていない。
 他のページに飛んでみる。だがあとは鷹野の話をなぞるようなオカルト的な内容しか記載されていなかった。
 ここで手に入る情報はこれぐらいか。
 俺はページを閉じて静かに席を立った。

119:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/18 18:34:57 kLqql3aB

 図書館を出ると日差しがさらに強くなっていた。じわりと汗が滲み出る。
 ……これはきついな。この暑さの中歩き回ったら熱中症で倒れそうだ。日陰を探しながら歩く。
 そうだ、租界なら携帯電話が使える。C.C.に電話してみよう。
 しばらくのコール音の後にC.C.が出た。
『なんだ、ルルーシュ』
「ギアス能力について聞きたい」
『なんだいきなり。ギアスユーザーに心当たりでもあるのか?』
「いや、違う。だがこちらで起きている事件にギアス能力者が関与している疑いがある。例えばだ、標的に幻覚を見せることが出来る能力やそれに類似するものに心当たりはないか?」
『……ないな。これは私が発現させた能力にはないという意味だが』
「そうか。だがそういった能力もありえるんだな?」
『ああ、発現する能力には著しい個人差がある。そんな能力が生まれることもあるのだろうな』
「そうか、わかった」
 それが聞けただけでも収穫だ。可能性は出来うる限り広く考えておくべきだ。
『用事はそれだけか?』
「いや、もう一つある。黒の騎士団員数名をしばらくの間、雛見沢に潜伏させて欲しい」
 綿流しの日から数日、スザクが守ってくれるというが一人では心もとない。二重の防壁を作っておくべきだろう。
『ルルーシュ、それは無理だ』
「……? なぜだ、理由を言え」
『言いにくいんだが今……団員の全てが某所に温泉旅行に出かけている』
「なんだと?! そんなことを誰が許可した!」
『いやな、それが玉城がゼロの姿でな』
「この馬鹿が! 何しに租界に戻った! 玉城にはゼロをやらせるなと言っただろ!」
『残念だが私が戻った時にはすでに発っていてな。文句はそれを止められなかった籐堂か扇に言ってくれ』
「ぐ、では黒の騎士団はいつ頃租界周辺に帰ってくる?!」
『電話で問い合わせたら、後一週間は帰って来ないそうだぞ』
「っ……それでは全てが遅い……もういいっ!」 
 返事も待たず携帯電話の電源を切り、それから俺は独りごちた。
「くそっ……黒の騎士団はあてにはならない……か」
 となると、スザク一人に頼るしかないと言うわけだ。
 スザクの力を認めないわけではないが危ういな……。
「痛っ!」
「あ、すみません」
 考え事をしながらを歩いていると路地裏に迷い込んでいた。そこで男と肩がぶつかった。
「ああん?! すみませんじゃねぇぞ?!」
 なんとも柄の悪いイレブンだ。どうやら俺はたちの悪い輩に絡まれてしまったらしい。
「申し訳なぁ思っとるんならちゃっちゃと慰謝料出さんかいゴラァ!」
「すみません、あまり持ち合わせがないもので……」
「おうおうっ! それで済むと本気で思っとるんかワレェッ?!」
 面倒だな。仕方がない、使うか……ギアスを。
 本当ならこんなゴロツキにギアス能力はもったいない。だがそれ以上に今の俺は時間を無駄にしたくなかった。男の眼を見てギアスを開放した。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。お前は黙って今すぐこの場から立ち去れ」
 ――。
 ――――。
 ………………。
「…………」
 絶対遵守の力に支配された男は先ほどまでうるさく怒鳴っていた口を閉じ、そのまま踵を返す。俺はそれを鼻で笑うと男を静かに見送った。
 今日はもうこれぐらいでいいだろう。また妙な連中に絡まれないうちに雛見沢へと帰るとしよう。
 ……。
 …………。
 ひたひたひた。
「……!」
 自分のすぐ後ろから微かに足音が聞こえた気がした。
 だが立ち止まって背後を振り返ってもそこには誰もいない。
「……気のせい、か」
 俺は一人ごちると、ため息を一つ吐く。
 そうだよな、誰もいないはずの背後から足音が一つ余計に聞こえるなんてありえない、よな……。

 ―タイムリミット;オヤシロさまの祟りまで後5日。


120:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/18 19:31:35 D63TbDpY
いいじゃないか
支援するよ

121:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/19 01:06:01 0J55t1k6
支援。


122:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/21 19:16:56 QFhXpgxN
支援

123:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/21 21:47:00 cEgEcXxM
支援

124:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/22 23:57:51 f0Hiz8Um
支援

125:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/24 08:35:47 TCfu0Bh+
支援

126:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/04/25 11:38:07 5ZFXv8WD
たくさんの支援ありがとうw
支援でちょっとだけモチベーションが上がったよ。このまま頑張るぜ。
で、すまんが書き溜め分がなくなってきたんで、次回の投稿はGW中になりそうだ。
ちなみに次以降からギアスのバーゲンセールになるかもしれん…

127:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/25 12:12:33 +iteeJ4a
どうでもいい所で使って後から「しまった!」となるルル山の流れですね分かります支援。

128:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/25 12:48:01 3K4NiE49
期待して待ってる!

129:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/25 23:02:30 1aCBiRZH
楽しみにしてます。支援。

130:名無しさん@お腹いっぱい。
09/04/27 13:16:49 UGbXnEVg
ひぐらしサムネホイホイ動画
URLリンク(www.nicovideo.jp)


131:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/05/01 10:34:18 QhbLTTd4
支援ありがとう。
期待に応えられているかどうかは分からないけど、約束どおり投下します。
その前にコメ返し。

>>127
>どうでもいい所で使って
まさにその通りと言わざるをえないw
でもまあ、結果オーライ的な話にはしてあるけどな



132:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/05/01 10:35:15 QhbLTTd4

【8】
 次の日もナナリーは風邪で学校を休むことになった。
 俺はナナリーに声をかけ、安静にしているように言うと家まで迎えに来たレナと学校へ向かう。
 昨日ギアス能力者が連続怪死事件の犯人である可能性が浮上した。怪しまれないためにも今日はちゃんと授業に出て放課後になってから調査を始めよう。
 水車小屋の前で魅音と合流。
 今日も魅音は先に待っていた。珍しい。
 いつもの通学路を歩いて行くと分校が遠目に見えてきた。
「よぉし、じゃ教室まで競争ね。ビリはトップの言うことを聞くこと! はい、ドン!」
「はぅ?! いきなりすぎなんだよ!」
 魅音とレナは分校へと走り出した。
「ちょ、おま! ずるいぞ!」
 二人の背中を慌てて追いかける俺。ところが魅音たちの姿は小さくなっていく一方で、ついには分校の内部へ消えていった。
「あいつら、足……速すぎだろ……。常識的に考えて…………」
 歩みを止めて、独り言を吐きながら息を整える。
 体力勝負は俺の得意分野じゃないとはいえ、レナにまで体力で負けるとは思わなかった。魅音ならともかくとして若干ショックだ。
 俺は無理をするのはやめて、ゆっくりと分校へと歩き出した。


133:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/05/01 10:36:34 QhbLTTd4

 教室へと入るといつもと違ってなにやら騒がしかった。皆一様に深刻な表情でぼそぼそと呟き合っている。
 何か事件でも起こったんだろうか?
 レナ・魅音と挨拶を交わし、それから騒がしい理由を訊ねた。
「騒がしいが、何かあったのか?」
「……沙都子の叔父が帰ってきた」
 魅音が重苦しい表情で答える。
 口ぶりからあまり好ましい人物ではないようだ。
「どんな酷いやつなんだ?」
「ルルーシュくん、よく叔父が酷いやつって分かったね?」
「そんなに暗い顔をしていれば誰だって分かるさ」
 それに、俺も王位継承争いで身内から不当な扱いをされたことがあるからな。
 魅音は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てるように言った。
「沙都子の叔父はいわゆるチンピラのようなやつさ。強い者にはヘコヘコするくせに弱い立場のものには威張り散らす、そんな最低野郎だよ」
「……そうか。ところで今日は沙都子が来ていないな。それと関係あるのか?」
「風邪で欠席……そういうことになってる。でも絶対そんなんじゃない」
「……虐待を受けているのか?」
「おそらくね……。いや、絶対されてるに決まっている!」
「ならば何故それが分かっていて児童相談所に相談しない? イレヴンにもそのための施設はいくらだってあるはずだ」
「それがね……」
 レナが魅音に代わって説明を始める。
 俺はレナの話を黙って聞いた。
「ふん……そういうことか」
 北条家はサクラダイト発掘の時以来、村の裏切り者とされているわけか。その名残が今でも根深く残っており、村人は沙都子に冷たく接しているようだ。彼らに助けを求めるのは無理かもしれないな。
 それに加えて沙都子は一度、児童相談所に嘘の通報をしているのか。これでは相談所側も慎重にならざるを得ない。
 しかし仮に相談所が動いてもこの件は解決されないだろうな。
 沙都子は兄である悟史失踪の真相を知らない。悟史がいなくなったのは自分が甘えすぎたから家出してしまったと勘違いしている節がある。
 だから頑なに誰にも助けを求めない。ここで誰かに縋ってしまえば兄はいつまでも帰ってくることがない、こう思い込んでいるから。
 なるほど、なかなかに複雑な事情があるようだ。
「そう……。だから残念だけど私たちが出来ることはないんだよ……」
 魅音はそう言い切ると表情に落胆の色を見せる。こんなに元気のない魅音を見るのは初めてだ。だが……
「それは間違っているぞ、園崎魅音」
「……え?」
「出来ないからやらない、それは逃げだ」
「でもどうしろって言うの! 沙都子の心が変わらない限り、」
「だから変えさせるんだ、俺たちで。なぜならこれは俺たち仲間の問題であって、沙都子だけの問題じゃないんだからな」
「ルルーシュくん、それって……」
「まず梨花に話を聞くのが先だ。梨花はいるな? 行くぞ二人とも」
「え、ちょ、ちょっとルルってば!」
 俺はレナと魅音を強引に引き連れて、自分の席で突っ伏している梨花の所へ向かった。


134:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/05/01 10:45:33 QhbLTTd4

 梨花に声をかけると、彼女は徐に顔を上げた。その表情にはいつもの快活さは蚊ほどもない。
「梨花、沙都子の件で話がある。知っていることを話せ」
「……話したところで無駄なのですよ。どうせ皆は同情するだけで何もしてくれないのです」
「たしかにその通りかもしれない。だがそうやってやる前から諦めるのは感心しないな」
 俺がそう言うと梨花が鼻で笑ったような気がした。
「…………『所詮は自己満足。どれだけ背伸びをしたって世界は何も変わらない』……。沙都子を見捨てた時の貴方の言葉なのですよ」
「見捨てた? お前は何を言っている?」
 梨花の態度に少しの違和感を覚えるが、それよりも俺は梨花の一言が気になった。すぐさま聞き返す。
 一方梨花はつまらなそうに再び口を開いた。
「……面倒なのです。話してあげるから聞いたら己の無力さを自覚して、さっさとどこか行くといいのです」
 その口ぶりはいつもの梨花と比べるとまさに別人のように冷たかった。
 梨花が事の成り行きを話し始める。要約するとこうだ。
 沙都子は昨日の正午頃―俺が東京租界で調べ物をしていた頃に一人で興宮まで買い物に出かけたそうだ。
 梨花は自宅でその帰りを待っていたがいつまで経っても沙都子は帰ってこない。
 心配になって雛見沢中を探し回ると、沙都子の両親が存命の時に住んでいた家が騒がしい。
 恐る恐る見に行ってみると、沙都子が叔父の鉄平に怒鳴られ暴行を受けながら、暗い表情で家の掃除をしていたとのことだった。


135:雛見沢住人 ◆xAulOWU2Ek
09/05/01 10:48:06 QhbLTTd4

 梨花から事情を聞いた後、俺は再び口を開いた。
「……そうか。それでお前は親友が暴行を受けても知らん振りなのか?」
「どうしようもないのですよ……。ルルーシュは状況が分かっていないからそんな態度が取れるのです」
「事情は知っているさ。魅音とレナから、沙都子と叔父の関係及び予想される児童相談所の対応を事細かく聞いたからな」
「では分かるでしょう? 僕たちが何をしようと、どうせ運命は変わらないのですよ……」
 そう言うと梨花はうな垂れ、視線を床に移す。その様子に俺はほっと安堵のため息をついた。
 梨花が何もしようとしないのは沙都子を単なる遊び友達としか考えていないのではないかと思ったからだ。
 だけど実際は違った。こいつは諦めたくないけれど、沙都子を助けてやりたいけれど、それが出来ない自分に絶望しているだけなのだ。
 俺は出来うる限りの不敵な笑みを浮かべ、梨花の頭を軽く撫でた。
「魅音にも言ったが……それは間違っているぞ、古手梨花」
「……え?」
 梨花は俺に微笑を投げかけられて目を丸くする。少しだけ彼女の瞳に生気が戻ったような気がした。
 俺は梨花の何かを期待するような視線を一身に受けながら言葉を続けた。
「自分には何も変えられないなんて理由は単なる逃げでしかない。
 たしかに現実は夢のように甘くはないさ。いつでも様々なしがらみのよって支配されている。それに押しつぶされてしまう人間も少なくはない。
 ……だがな、抗うことは必要なんだよ、俺にもお前にも。
 戦うことをやめてしまえば、人は生きながら死ぬこととなる。生きているって嘘をつき続け、まったく変わらない世界に飽き飽きして、でも嘘って絶望で諦めることもできなくなって……。
 だから梨花、抗え。今を精一杯足掻いてみせろ。そして共に力を合わせ、俺たちの大切な仲間である北条沙都子を助けてみせよう」
 俺は梨花に向けて手を差し出す。
「……ルルーシュは何か考えがあるというのですか」
「残念だが今はない。31通りの手を考えたが全て沙都子の悟史への罪悪感がネックとなっている」
「なら……やっぱり無理なのですよ……」
 梨花はポツリと呟くように言って再び表情を暗くした。こいつの諦め癖は予想以上に根強いようだ。
「だからこそ皆で知恵を出し合って解決策を練るべきだ。不貞腐れるのはそれを試してからでも遅くはないだろう?」
 そこでぱちぱちと突然の拍手音。振り返ると一歩下がった場所で魅音とレナが笑みを浮かべながら手を叩いていた。
「うん、ルルーシュくんの言うとおりだよね。誰かが世界を変えてくれるまで祈って待っていても、そんな日はいつまでも経っても来ないんだよ、だよ」
「くっくっく、おじさんちょっとブルーになってたよ。そうだったね、部活メンバーならどんな逆境にも立ち向かって行かなきゃ。それを部員になってまだ間もないルルに教えられるなんて部長として恥ずかしいよ」
「お前ら……」
 魅音とレナは表情を真顔に戻してから梨花に言った。
「私たちはもう自分を無力なんて思わない。力を合わせ、必ずや沙都子を助けると心に誓うよ」
「そう。だから後は梨花ちゃんだけだよ。皆で沙都子ちゃんを助けるために考えよう?」
「フッ――だそうだが、お前はどうする?」
 梨花は俺の問いかけに逡巡した後、重い口を開いた。
「……今回のルルーシュは何か違う気がするのです……。分かったのですよ、僕は貴方を信じますのです」
 梨花は俺の手を取って立ち上がった。俺について一部妙なことを口にしていたが、とりあえずはなんとかやる気になってくれたようだ。
 沙都子の問題は根深いが……皆で意見を出し合ってくれさえすれば、俺なら何かしら考え付くだろう。
 …………本当は一つだけ方法がある。
 それは絶対遵守のギアス。これならば今すぐにでも沙都子を救い出すことが可能だろう。
 だがギアスの使用は保険であり最後の手段。今のままでは沙都子は永遠に救われない。沙都子自身が変わらなければ、沙都子を取り巻く世界は何も変わらないのだ。
 


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3387日前に更新/282 KB
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